世の慣習に挑戦するようにさすらい続ける若者たちを描いたロードムービーは、広大なる北米大陸を駆け巡る映像で、見る者の旅への欲求を刺激する。 そして、こんな内容のベストセラーなら、どうして今まで映画化されなかったのか、と疑問がわいてくるかもしれない。 しかし、ジャック・ケルアックの原作小説は、追いかけるべきストーリー性に乏しく、そのまま商業映画としてドラマ化するのには向いていなかった。 そのため、『ゴッドファーザー』(1972)の監督として知られるフランシス・フォード・コッポラが1970年代にはすでに映画化権を獲得していたにもかかわらず、企画は何度も流れ、チェ・ゲバラの若き日を描くロードムービー『モーターサイクル・ダイアリーズ』(2004)で成功を収めたウォルター・サレス監督の手によって、今回、ようやく映画化が実現したのである。