脱進機は時計製造史において大変興味深く、重要な発明だ。その働きは複雑に見えるかもしれないが、簡単な実験を通じてよく理解することができる。手にコイル状のバネを持っていると想像して欲しい。もう片方の手でゼンマイを圧縮し、素早く離す。ゼンマイのエネルギーはすべて、そのままただちに放出されてしまう。もう1度実験を繰り返そう。今度は指を使ってバネのスプリングを1回にひと巻きずつ解放する。エネルギーは制御されながら放出され、このとき指は脱進機の役割を果たしている。 脱進機の進化を考察することで、時計製造の歴史をより深く理解することができる。腕時計においては、脱進機を介して主ゼンマイから微量のエネルギーが分配される。主ゼンマイとは大きなバネのことで、時計のリューズを手で巻いたときや、自動巻き機構によって巻き上げられることで動力を得る。主ゼンマイとヒゲゼンマイは別物であり、ヒゲゼンマイはテンプの振動を制御