5月4 馬部隆弘『椿井文書』(中公新書) 7点 カテゴリ:歴史・宗教7点 副題に「日本最大級の偽文書」とあるように、江戸時代につくられた偽文書をめぐる本になります。 偽文書というと古代の津軽にヤマト政権から逃れた文明があったとする「東日流外三郡誌」のような荒唐無稽なものを想像しますが、この椿井文書は、中世の寺の絵図や大寺院の末寺を示す文書、家系図など、なんとなくありそうなもので、しかも、それらが互いに関連性をもっています。そのため、一部では貴重な史料として使われ、史跡の認定や自治体史などにもこの椿井文書が使われているのです。 本書は、その椿井文書について、著者がそれに気づいた経緯、実際の内容、なぜつくられ、なぜ受容されたのか、そして現在への影響まで幅広く論じたものになります。扱っている文書が派手なものではないため、最初は頭に入りにくい部分もあるかもしれませんが、非常に重要な問題を提起してい