ミルトン・フリードマン(Milton Friedman)が登場するまでのアメリカの経済学界を振り返ると、貨幣(マネーサプライ)は(景気の変動に影響を及ぼす要因として)大して重要じゃないというのが第一線で活躍するマクロ経済学者の間でかなりの合意を得ていた見方だった。 フリードマンは、デビッド・メイゼルマン(David Meiselman)だとかアンナ・シュワルツ(Anna Schwartz)だとかとの共同研究を通じて、貨幣(マネーサプライ)はかなり重要だということを示すれっきとした証拠を大量に提示した。そして、大勢(おおぜい)がそのことに同意した。皆が皆、筋金入りのマネタリストに転向したわけではなかったにしても。 早くも1982年になると、マネタリストの勢いに陰りが見え始めた。マネーサプライの管理に重きを置く金融政策が言うほど功を奏していないことが判明し出したのだ。貨幣っててんで重要じゃない