桜は散りかけている。4月の声を聞いたというのに寒い。そのせいなのか、靖国神社に集う花見客の姿は予想以上に少ない。僕は屋台でビールを飲みながらおでんを食べる。幼い子供をつれた若い夫婦が、それぞれ子供の右手と左手を繋ぎながら、参道をゆっくりと歩いてゆく。3人ともにこにこと幸せそうだ。 桜の代名詞でもあるソメイヨシノ。多くの人は日本の国花と思い込んでいるようだが、実はこれを定める法制は存在しない。あくまでも慣例だ。だから天皇家の紋章である菊が国花だと主張する人もいる。 慣例という意味では、かつての国旗や国歌も同様だった。この2つは1999年に法制化された。法制化されると同時に「唄え」とか「一同起立」とか「敬礼」とか言う人が増え始めた。だから国花まで無理に決めなくてもいい。この国にはいろんな花がある。きれいな花。地味な花。白い花。赤い花。それで充分。ひとつだけ決める必要はない。でも、ソメイヨシ