秋晴れのある日、近くの小学校から聞こえる音楽に誘われて、運動会を見に行った。 小高い築山の上にゴザを広げる。校庭全体が見渡せる絶好の場所だ。日頃は仕事に忙しい壮年の父親たちも今日は家庭サービス。一家だんらんの和やかな風景が展開している。 会もたけなわで、いよいよ出し物の親子リレーとなった。多少、下腹は出かけてはいるものの、かつてはスポーツで鳴らしたと思われる父親たちが鉢巻き姿もりりしく、勢ぞろいした。 大変な声援である。その声援の最中、父親たちは転びに転ぶ。その転倒のパターンはなべて一様であって、体が前に泳ぎ、脚がもつれて、腹ばう。 なかには、再度のラッシュでまた転ぶケースすらある。思うに、頭の方はかつての栄光を強く記憶しているから、それいけ、やれいけ、もっと速く、と指示を連発する。ところが脚の方は長年の不摂生がたたって、衰えが甚だしい。結果として頭や上体が先行し、つんのめるのであ