周知のように、2022年2月24日、ロシアがウクライナへの侵攻を開始した。ここ数十年、欧州では久しく見ることのなかった大国による大規模な軍事侵攻に世界中が驚き、日本そして欧米諸国はその義憤を声と行動により慨然として表明している。ロシアから放たれた軍事力の爆音は世界中に波及、平和に安らぐ富裕国の安全・危機意識を次々に目覚めさせてきた。そんななか、隣国の国家主権と尊い人命とを軍事侵攻によって蹂躙するというロシアによるあり得べからざる行動に対し、戦禍のウクライナから国際的舞台に上がり、昂然と反対を表明している映画人が、最近になってようやく日本でもその諸作が公開され始めているセルゲイ・ロズニツァだ。 彼はここ10年のあいだ、今日のウクライナを代表する映画監督として国際的名声を博しており、ロシア-ウクライナ間の衝突を題材にした作品も複数制作している。2013年に端を発したユーロマイダン運動時に、抗議