乗数があるなら公債残高の対GDP比は上昇しない 日本の財政赤字はとんでもない状況にある。高齢化で社会保障支出が増大してきたにも関わらず必要なだけの増税ができなかったこと、不況の度に景気刺激策が行われてきたからである。しかし、政府支出を増大するとGDPがその乗数倍だけ増えるというケインズ経済学の教えが正しいとすると、いくら財政支出を拡大しても債務残高の対名目GDP比率は高くならないはずである。 ここで乗数を1としてみよう。不況対策として1兆円の財政支出を増加させると、GDPが1兆円増えると考える。2010年度末で公債残高は637兆円、10年度の名目GDPは474兆円である。ここで、10兆円の公債を発行して10兆円の景気刺激策を行うと、公債残高は10兆円増えて647兆円になるが、GDPは484兆円になる。景気対策を行う前の、公債残高対GDP比率は637÷474で134.4%だったが、景気対策を
東京財団上席研究員 森信茂樹 1、赤字補填か社会保障改革か6月2日、社会保障改革案が公表され、15年度までに段階的に消費税率を10%まで引き上げることが示された。今後この案をベースに、6月下旬ともいわれている社会保障・税の一体改革の成案作りに向けての検討が行われる予定である。 これまでの政権が、なかなか具体案を出せなかった中で、曲がりなりにも議論のたたき台となる案を公表したことについては、率直に評価したい。 そもそも社会保障・税の一体改革を考えるには、2つのアプローチがある。 一つは、「赤字補填アプローチ」である。現在国の消費税収は、すべて医療・介護・年金の高齢者3経費に充てられることになっている。3経費と国の消費税収の間には、10兆円のギャップ(平成23年度予算ベース)がある。毎年自然増が見込まれるので、2015年時点でそのギャップは13兆円弱に膨れ上がる。これは、消費税率でいえば5%分
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く