はじめに言っておくと、「ぽーにょぽにょぽにょ」の歌だけでこの作品は(興行的に)勝ったも同然である。既にどなたかが指摘していたが、こんなにも流行し普及する歌は久々なんじゃないかな。あと、以下はネタバレを含んでいる。別にばれたってこの映画は楽しめると思うけれど、気になるのであれば読まないでね。 ポニョは「男の子の教育に失敗したら、世界は滅ぶ」という映画だ。 宮崎駿は「突破口としての、自然と共生する少女」をこれまで繰り返し描いてきた。機械・文明・男性原理と対置されるのは女性原理・自然・魔法であり、閉塞した近代(前者)を打破するのは後者であるというモチーフを、彼はずっと変奏してきたのである。ラナ、ナウシカ、サンなどはこの系譜上に位置し、特に『もののけ姫』のサンは文明と自然の境界に立つ者というよりは野獣(すなわち自然そのもの)に近いと斉藤美奈子は指摘している。 本作ではその傾向がさらに進んでおり、近