こんな話がございます。 陸奥国は三戸の御古城近くに。 大層な分限者がおりまして。 サトと申す美しい娘がおりましたが。 この娘の実の母はもうこの世におりません。 後妻に来た継母はト申しますト。 それはたちの悪い女でして。 いつもサトをいじめておりました。 ある時、父は殿様の御用に従って江戸へ向かう。 以前から継子が憎くてたまらない後妻でございましたが。 この機を逃してはなるまいト。 悪事を一つ企てました。 近所をうろついていた野良猫を一匹捕らえますト。 棒で滅多打ちに殴りつけまして。 かわいそうに、殺してしまった。 後妻はすかさず猫の遺骸を庭に埋める。 そうして、ひとりで澄ましておりましたが。 やがて、出立から幾月が経ちまして。 父親がようやく江戸から戻ってくる。 するト、後妻がいかにも嘆かわしそうな表情で。 夫に近づき、告白する。 「あなた、実はサトが――」 「どうした、そんな青い顔をして
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