◆最高裁平成28年12月19日大法廷決定(以下、最高裁決定)は、相続財産中の預貯金債権が遺産分割の対象となるか争われたケースについて、共同相続された普通預金、通常貯金及び定期貯金債権は、相続開始と同時に当然に分割されず、遺産分割の対象になると判示した。これは、従来の判例を変更するものであり、旧判例下で構築されてきた実務に与える影響は少なくない。 ◆実務への影響を検討すべき論点としては、①遺産分割の内容(特に特別受益者がいる場合)、②遺産分割前の一部の相続人による預貯金の払戻しの可否、③相続開始後に預貯金口座に入金された金銭の取扱い、④相続開始後の口座解約等の取扱い、⑤銀行など債権者による相殺・差押えの可否、⑥普通預金、通常貯金及び定期貯金以外の預貯金(定期預金、定額貯金)や可分債権(貸金債権など)の取扱いなどを挙げることができるだろう。 ◆本レポートでは、最高裁決定の概要を解説した上で、上