東日本大震災から3年。2011年は、日本人にとって誰もが、生と死について強く考えさせられた1年だったに違いありません。FC東京に所属する石川直宏選手もその一人でした。震災、娘の誕生、親友・松田直樹選手の死――を経験した石川選手のお話を今回は、お届けします。 文●いとうやまね 写真●フットボールチャンネル編集部 ※『プロフットボーラーの家族の肖像』より転載 ◆父親として 「パパパパ、パパ」 と自分を呼び、瞳が追いかける。 その天使は、ぱたぱたとよく走りまわる。 じっとしていなくて目が離せない。 「僕に似たのかな?」 そう言うと、父の目がいちだんと細くなった。 石川直宏32歳。 娘の名前はカノン(樺音)。 音楽好きの夫婦が考え出した名前である。 マリンバ奏者だった妻の希望もあり、木琴にちなんだ木へんの漢字を当てた。 木琴の奏でる、優しく、そして華やかな感じを出したかったという。 美しい名前だ。