『高校生のための文章読本』の中で、芥川賞作家・開高健さんの文章が掲載されていた。アウシュヴィッツ強制収容所を訪れた際に、となり町で見た光景──膨大な数の囚人たちの骨の破片が池や土の下に堆積している様子を目の当たりにして、次のように書いています。 (案内の)おばさんがひくい声で話しているのを耳にしながら、私は骨の原にたたずんだまま、言葉を失ってしまった。一度微塵に砕かれてみたいと思っていた予感は冬空のしたで完全にみたされた。すべての言葉は枯れ葉一枚の意味も持たないかのようであった。 数々の文学賞を受賞した文章のプロをして、 “すべての言葉は枯れ葉一枚の意味も持たないかのよう” であると言わしめる情景と現実。「言葉」が示す表現の範疇はあまりに狭く、しかしそれゆえに確固たる伝達力を持って伝わる「言葉」もあるのだと、考えさせられました。 情報伝達・コミュニケーション手段としての「言葉」 世にあまた