結婚退職する社員の送別会に出て、けれども部署もちがうしそんなに多くの接点があったのでもないから、一次会で手を振って別れて、親しくしている同僚ふたりと、別の場所に移動した。夜で、金曜日で、洞窟めいた細長い店の、いちばん奥のテーブルのぐるりに座って、女ばかりで、私はなんだか、嵐の終わりを待っている原始人になったみたいな気持ちする、と思う。 後輩がフルートグラスを軽く掲げ、いやあ正直ほっとしました、と言った。先輩が自分のグラスを手に取ろうとしてやめ、手の置き場に困ったように動かしたあげく、膝の上に置いた。磯西さんとなんか、あったの、と訊くと、後輩は大きい声でいかにも愉快そうに笑い、マキノさんはのんきでいいなあと、そんなことを言う。後輩は入社四年目で、そのあいだ三度ばかり、辞める社員とふたりで話す必要が生じたのだけれども、いちばん小さい会議室でおこなわれた話の半分以上が業務内容から離れていて、では
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