七月十七日夜、記者会見場にて今までに見たことのない数のカメラを前にした際、不思議なことに心がスッと軽くなった。 もっと緊張しろよサクラギ、テレビカメラは何でも映すぞ、お前の虚栄心も自己顕示欲も嘘(うそ)も。今まで蓋をしてきた何もかもをさらす時が来たんだ。自覚はあるのか。 体の内側では最高音で警笛が鳴っているのに、だ。会場に向かって頭を下げた瞬間、手足の震えは止まり、田舎のおばちゃんは「桜木紫乃」になった。 「何もかもを映すのなら、映してくれ。どう隠しても文章に人間が出てしまうように、カメラだってどう撮っても人を映してしまう。ならば我々は同志だ。仲良くしようじゃないか」 さぁ腹をくくれ。北海道人は総じて面倒くさがりが多いのだ。結婚式は会費制だし、香典にも領収書が出る土地。そんなところで生まれ育った人間が、内地に根を張る日本の文化に上手(うま)く絡んで行けるわけもないのだから。 初代開拓民だっ