<新聞紙の雪に水膨れ、移動続きの長い公演──華麗なクリスマスの定番作の舞台裏はかくも過酷> 巨大なクリスマスツリーや戦うネズミ、お菓子の国──クリスマスシーズンの定番バレエ『くるみ割り人形』は魔法の世界を描き出す。だが、なかでも素晴らしいのは雪だ。第1幕第2場、有名な「雪のワルツ」の場面。ちらほらと優しく降り始めた雪が魅惑的なブリザードに化し、ダンサーの姿をかき消していく。 この雪のことなら、よく知っている。『くるみ割り人形』の舞台を見る前に、筆者は何年もステージの上で本作を踊った。 だから、初めて観客の立場になったときは、本当に真っ白な雪そのものに見えると感心する一方、薬品で耐火処理が施された灰色の新聞紙の紙吹雪の味、踊っている間にどうしても口に入る紙切れをのみ込むときの感じがよみがえった。 「雪のワルツ」の前はいつでも緊張した。これから、ノンストップで跳んだり回転したりする恐怖の12分
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