意外なことかもしれないが、ダイヤモンドは近代になるまで唯一の産出国、インドでわずかに採れるだけだった。それが1720年代にブラジルで、1860年代には南アフリカで大鉱脈が見つかり、ダイヤモンドジュエリーが世界にあまねく広がっていった。宝飾史におけるこの大転換期に活躍したのが、アムステルダムに本社を構えるロイヤル・アッシャー社なのだ。 世界最大のダイヤモンド原石を叩き割った男 1905年、南アフリカのプレミア鉱山で、3,106カラットものダイヤモンド原石が発見される。原石が鉱山の監督官たちのもとへ届けられると、あまりの大きさに監督官たちはそれがダイヤモンドであると信じず、あざ笑って窓の外へ放り投げたという。後に鉱山オーナーの名を取って「カリナン」と名づけられたこの原石は、史上最大のカラット数を誇り、記録は今なお破られていない。 3,106カラット(621.2g)のカリナンの原石を横と上から撮