律令制の時代から昭和初期にかけて、市場経済が形成され、洗練されていくプロセスが書かれた1冊だ。要所を辿りながら、1200年以上の時間を一気に駆け抜ける。まんべんなく触れるのは難しいので、時代を絞って紹介していきたい。 著者によれば、戦国時代は日本経済史のなかでも特殊な局面であるという。全国レベルで資源配分を管理する存在もいなければ、全国一律の基準で市場経済を見守ることのできる存在もいない。この環境は、領国支配における様々な問題が生まれる要因となった。 支配が及ぶのは領国内に限られるため、領国外の商工業者を誘致しなくては必要な物資を賄えない。だが、彼らはもともと同業者組合である座に属し、戦国大名の意向ではなく座のルール(座中法度)に則ってそれぞれビジネスを行う存在であった。そうした問題に対する解決策として、楽市楽座などの優遇策が実施される。本文中で引用されているグラフには、1550~1580