主人公は、東京から松山(小説中はそれと明示されていないが)の中学に赴任してきた、「これでも元は旗本だ」という佐幕派。彼と共に学校の管理体制と戦う数学の先生「山嵐」は、戊辰戦争で最後まで戦い、そして敗れた会津藩の出。「うらなり」も佐幕派、松山の士族の出。 つまり漱石の『坊っちゃん』は、まぎれもなく「佐幕派小説」である。坊っちゃんを可愛がる、かの清(きよ)も、出身は佐幕派と教えられると、なるほどと納得せざるを得ない。 さらに明治文学の主要作家である北村透谷、山路愛山、尾崎紅葉、幸田露伴、樋口一葉、国木田独歩の出自をよく見ると、すべて佐幕派(旧幕派)であるという。 この事実には改めて驚く。まさに明治文学は佐幕派の文学だった。文学というものが、本来、敗れてゆく者の拠であるから当然といえば当然のことだが、ここまで近代日本文学史を敗者の側に寄り添って語った研究書は珍しいのではないか。 明治初期の政治小
外出して時間が空くと、よく書店をのぞく。そのたび、以前取材したカリスマ店員が「書棚を一瞬見れば、工夫のある書店か分かる」と言っていたことを思い出す。 「書店には発見が必要」が持論だった。建築の棚に谷崎潤一郎を、労働の棚に村上龍の本を置くと、びっくりするほど売れたという。もちろん本の内容を知っていたからできた芸当なのだが、本の並べ方一つで売れ行きが大きく変わるという実例だ。その店員は寝る前も頭の中で書棚の本を並べ替えていた。 先日、文部科学省が発表した調査結果では、10年度に国民1人が図書館から借りた本は5・4冊と過去最多を記録したという。だが手放しでは喜べない。収入が増えないため「本は借りる」と決めて出費を抑えている影響も大きいはずだ。読書の総量は減っている可能性もある。 通販や電子書籍の普及などで、残念ながら「リアル書店」は減っている。だが、わくわくしながら書棚の間を歩き、意外な本と出合
◇古事記と日本書紀、完成から1300年 ◇来月13日、橿原でフォーラム 県は、2012年に古事記編さん、20年に日本書紀の完成から1300年となるのを記念して文献や伝承、復元物を活用した事業を展開する「記紀・万葉プロジェクト」の基本構想を発表した。平城遷都1300年祭後の観光振興策の柱とし、さらなる観光客誘致を狙う。3月13日に橿原市内で開く古事記完成1300年記念プレ・イヤーフォーラム「今、記紀万葉が語ること」を皮切りに、10年間にわたる長期プロジェクトが動き出す。【阿部亮介】 プロジェクトは、平城遷都1300年から時代をさかのぼり、「本物の古代と出会い、本物を楽しめる奈良」がテーマ。11年度は、有識者・研究者からの聞き取りにより情報を収集し、事業の方向性と考え方を確立する。庁内に担当部署を設け、12年度以降の具体的な事業計画作りに取り組む。市町村なども加わり、荒井正吾知事をトップとする
文芸春秋、講談社、小学館など大手を含む50の出版社が協力し、雑誌の記事をインターネットで有料配信する共同サイトの実証実験が27日から始まる。携帯電話などから雑誌を検索、目次を見て気になる記事だけを読むことができ、11年の実用化を目指す。「記事のばら売り」とも言え、雑誌本体の売り上げを減らす恐れもあるが、雑誌の総売り上げはピーク時の7割近くまで落ち込み、業界にとっては、のるかそるかの挑戦だ。【合田月美】 「週刊文春」「週刊現代」「サンデー毎日」などの一般週刊誌から、「CanCam」などの女性誌や専門誌まで50社最大100誌が参加する。 「日本雑誌協会」(東京都千代田区)を中心に1年前から検討を重ねてきた。業界全体の売り上げが落ち込む中で「デジタル化に対応しないと未来はない」と一致した。昨年8月には協議会を設立。課金・決済方法やデータ形式の統一、著作権処理などシステムづくりを進めている。 実証
メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の原因となる内臓脂肪の炎症が起きる仕組みを、永井良三・東京大大学院医学系研究科教授らが、マウス実験で突き止めた。免疫細胞の一つ、Tリンパ球が炎症の引き金になっていた。メタボリックシンドロームの治療薬開発につながる成果という。26日付の米専門誌「ネイチャーメディスン」(電子版)に掲載される。 内臓脂肪が蓄積し、脂肪細胞が大きくなると、白血球の仲間のマクロファージなど免疫細胞が集まって慢性的な炎症が起きる。炎症によりインスリンの効きが悪くなることなどがマウス実験で分かっており、動脈硬化や糖尿病などにつながる。しかし、炎症の起きる仕組みはなぞだった。 永井教授らは、高脂肪食を与えた肥満マウスと通常の食事を与えたマウスを比較。その結果、肥満マウスは病原菌を撃退する「CD8陽性Tリンパ球」が、マクロファージより先に増えていた。 そこで、このリンパ球を減らした
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く