バスルームが廃墟っぽいです。彼女はまっすぐに私を見て言う。たしかにバスタオルホルダが壊れたままだし、ペーパーホルダも片側が割れているし、罅の入った排水口のふたも交換していない。 ごめんね、なんだか、面倒で、ふだん誰も出入りしないから取り繕う動機もなくて、とこたえると、彼女は首を横に振り、終電なくなって泊まる人に取り繕う必要はないです、先輩が先輩自身のために取り繕うべきです、と言った。なんか監獄みたいです、この部屋。 私は自室を見渡して、そうかな、と思う。ものがないことはたしかだけど、不衛生ではないよ、と言う。彼女はメイクを落とした幼げな顔で、多くの監獄は清潔です、と言った。ここは殺風景です、だってなんにもないです。 この何年かで減ったんだよと私は説明する。テレビが壊れて、オーディオが壊れて、そしたら、なくても問題なくって、置いてた台もいらなくなって、本は読んだら処分するし、PCはノートだし
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