「稼げる大学」を体現する仕組みとして政府が始めた「国際卓越研究大学」の制度。認定校の運営を巡り、外部の関与を強める方針が示された。重要事項を決める際、学外者の賛同を必須とするという。外部の関与が強まり、自治が損なわれると、権力の意をくむ「御用機関化」が加速しかねず、他の大学に広まる危惧も。そんな話を進めていいものか。(山田雄之、曽田晋太郎)
すでに指摘した通り、やはり知財、特許を巡る問題がめくれてきた格好です。報道の内容を確認してみます。 まず読売新聞。 国立研究開発法人「産業技術総合研究所」(茨城県つくば市)の技術情報漏えい事件で、(中略)権恒道容疑者(59)(不正競争防止法違反容疑で逮捕)から研究データの提供を受けた中国企業が、約1週間後に中国で特許を申請していたことが捜査関係者への取材でわかった。内容が類似しており、警視庁公安部は研究データを転用したとみている。 さらに毎日新聞 容疑者の妻が漏えい先代理店社長 中国で特許申請か (中略)権恒道容疑者(59)=不正競争防止法違反容疑で逮捕=の妻が、漏えい先とされる中国企業の日本代理店の社長だったことが、捜査関係者への取材で判明した(中略) 漏えい先とされるのは中国の化学製品製造会社で、つくば市内にある日本代理店の社長を権容疑者の妻が務めている。同社は2018年4月、権容疑者
過日、岩波書店さんより『アカデミアを離れてみたら 博士、道なき道をゆく』と題する本が出版されました。この本は2020年春に始まったWEB上のリレー連載をまとめたもので、21名の博士の体験が綴られています。連載の初回を担当した私は、ポスドクを11年続けた末に研究の道を諦め、なんとか民間企業に転職したエピソードを寄稿しました。同じように就職に悩める博士の、何かしらの参考になることを願って書いた文章は、聞くところによるとずいぶん多くの方に読んでいただけたそうです。また、記事をきっかけに新聞に取り上げてもらう機会にも恵まれ、私なりにポスドク問題の認知向上に貢献できたのかなと思っています。(なお、出版にあたり連載の公開は終了しましたが、私の記事は試し読みとして全文ご覧いただけます。) そんな記事の公開から1年半ほどの間、他の博士の体験談やネットに流れる感想、そして新聞雑誌の書評などを拝読してきました
図書館界や出版界の度肝を抜いた「長尾構想」を提案した京大名誉教授の長尾真氏。情報工学の第一線で活躍、京都大学総長や民間から初となる国立国会図書館長を歴任。大学を退官した後も学会や講演に引っ張りだこで、今も京都を拠点に各地を飛び回る日が続いている。 「本当は、未来から来た人なのではないか」。そう言われるほど、長尾氏の研究には先見性がある。1960年代からコンピューターによる言語翻訳を手がけ、文字や画像の認識について先駆的な研究を行なった。その一部は郵便番号読取機にも応用されている。今では当たり前になりつつある人工知能や顔認識技術の向上にも、この頃尽力している。 1990年代からは研究の集大成として「電子図書館」を提唱。インターネット上に情報があふれることを予測し、世界でもまだ珍しかったデジタル情報の記憶装置として、知のインフラを描いた。 日本の情報科学や認知科学を語る上で避けては通れない巨人
「呉座勇一事件」の衝撃 2021年2月、ベストセラー『応仁の乱』(中公新書、2016年)の著者・呉座勇一が、シェイクスピアを中心とする文学の研究者で、『お砂糖とスパイスと爆発的な何か』(書肆侃侃房、2019年)などのフェミニズム批評でも知られる北村紗衣をはじめ、多数の女性や「フェミニスト」「リベラル派」と目される学者や知識人への誹謗中傷を、4000人以上のフォロワーを抱えているツイッターの非公開アカウントで大量に行っていたことが、フォロワーから北村への「告発」で発覚しました。 元々は北村が、『観応の擾乱』(中公新書、2017年)の著者である亀田俊和が、高名な歴史学者である網野善彦に対して「日本が嫌いそう」「レフティ」などといった評価を行ったことに対して北村が「冷笑的」と批判したことで一悶着あったことに端を発する議論から、様々な経緯があって発覚したものですが、呉座のツイートには、女性研究者や
オンラインシンポジウムの視聴メモと感想です。 「サブジェクト・ライブラリアンの将来像 -- 日本の大学図書館への導入拡大に向けて --」(〈むすび、ひらくアジア4〉 アジア研究図書館開館記念シンポジウム) 2021年3月15日 http://u-parl.lib.u-tokyo.ac.jp/archives/japanese/mh4 参考文献です。 ・田中あずさ『サブジェクト・ライブラリアン 海の向こうアメリカの学術図書館の仕事』(笠間書院) https://kasamashoin.jp/2017/12/post_4082.html ・オダメモリー: 「サブジェクトライブラリアンの将来像」に参加して http://oda-senin.blogspot.com/2021/03/blog-post_15.html 視聴して、および、その後諸々のところから聞こえてくる言説を聞いての、極私的感想・
近畿大学辞めました SNS上をブラブラとしていたら、あるブログが目に飛び込んできた。これは!と思わず声を出しそうになった。 近畿大学を退職しました 2019年3月で7年勤めた近畿大学を退職し、フリーランスの研究者をしている経済学者の方のブログだ。 思わずハッとなってしまったのには理由がある。私も2019年3月で、7年半勤めた近畿大学を退職したからだ。学部も立場も退職の理由も違うし、フリーランスになったわけではなく、地方の病院に勤務しているわけだが、シンクロニシティを感じざるを得ない。 上記ブログでは、研究をするために大学を辞めたことが綴られている。給料も3倍にアップしたという。 大学教員の業務が多すぎ・給料が安すぎなのにも関わらず現状で耐えている人が多いのは「大学以外では研究できない」と思い込んでいるからだと思います。そうではないことを証明したいと思ってはいますが、社会の利益を考えられる性
2019年3月で近畿大学を退職しました。 先日の行動経済学会で「今どういう状態なのか?」という問い合わせを山ほど受けたのと(ありがとうございます)、友人や共著者に「山根はいま何をしているのか」という問い合わせが殺到している現状を鑑み、自分できちんと発信しておこうと思ってこれを書いています。 問い合わせを受けまくった友人・共著者たち、お手数をおかけしました…。今後はこのURLをそっと差し出してください。 読むのがだるい人向けQ&A Q. 今どういう状態なの? A. フリーランスの研究者をしています。複数の民間企業と業務委託契約を結び、コンサルやデータ分析などをして面白いデータと日々触れ合っています。近々法人化の予定です。 Q. 研究者をやめたの? A. やめてません。むしろ研究者に戻るために大学をやめました。 Q. なぜ近大をやめたの? A. いやになったから Q. 日々どう? A. 最高
カバンを持って入れない JR代々木駅の改札を出て右側に進むこと約20歩。周囲の発展からそこだけ取り残されたかのような、古ぼけた8階建てのビルが目の前に飛び込んできます。 いまにも朽ちかけてしまいそうな外観から、ネットではかつて香港にあったスラム街、「九龍城砦」に見たてて「代々木の九龍城」などと呼ぶ人もいます。 この建物の正式名称は「代々木会館」。8月に取り壊しが決まっています。このビルの3階に、最後まで残ったお店として「東豊書店」はありました。 階段を上っていくと、2階から3階に上がる踊り場のあたりからだんだんと本の山が近づいていきます。段ボールに入ったままの本やビニールひもにくくられた本の束……。一見しただけではそれらがどのような種類か分かりません。 店に近づくと、なんとなくピンと張り詰める空気が伝わってきます。 店の入り口には、パイプいすや小さないすがいくつか無造作に置いてありました。
去年9月7日の早朝。福岡市の九州大学で火災が発生した。現場は、大学院生が使う研究棟。所狭しと研究室が並ぶ「院生長屋」と呼ばれる場所だった。キャンパスの移転で、取り壊しが始まるやさきに事件は起きた。焼け跡から遺体で見つかったのが、K、46歳。九州大学の博士課程まで進み、9年前に退学した男で、誰もいなくなった研究室に放火し、自殺したと見られている。九州大学は、Kが利用資格を失った後も、無断で研究室を使っていたと説明した。 ともすれば、この事件は注目を浴びることもなく、忘れ去られていたかもしれない。しかし事件後、その死をめぐり思わぬ波紋が広がった。ネット上に、「あすはわが身」など、Kにみずからの境遇を重ね合わせる研究者たちの悲痛な叫びがあふれたのだ。Kの死が投げかけたものはなんだったのか。私たちはその人生をたどることにした。(報道局社会番組部ディレクター 森田徹/福岡放送局ディレクター 水嶋大悟
出版社Wileyの日本法人が、医学・看護・獣医学分野の出版物について、役立つ新鮮な情報をお届けします。 日本で8月に最もよく売れたWileyの医学・看護・獣医学書トップ5をご紹介します。タイトルまたは表紙画像をクリックすると、目次やサンプル章(Read an Excerpt)など、詳しい内容をご覧いただけます。 1位 Shimizu’s Dermatology, 2nd Edition Hiroshi Shimizu ISBN: 978-1-118-78117-3 Paperback / 664 pages / December 2016 世界的な皮膚科医として知られる北海道大学・清水 宏教授の『あたらしい皮膚科学』は、皮膚科学の総合的な教科書として初版・第2版とも大成功を収めました。その初版を基にして、英語版 Shimizu’s Textbook of Dermatology が2007
博論を公刊することを研究室後輩に勧めることがあるのだが、挑戦する人がいなくて少しさびしく思っている。 ワークショップデザインにおける熟達と実践者の育成 作者: 森玲奈 出版社/メーカー: ひつじ書房 発売日: 2015/03/06 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 博論公刊に対する意識や意義というのはバックグラウンドが異なるとかなり違う。大学への就職活動を考えるとすると、単著が1本あることはとても大きい(大きかった)。私が勤務する大学では、様々な業績が点数換算される仕組みになっているのだが、そこでの学術書単著のウェイトの高さには少々驚いた。 ただ、私が博論を公刊したかったのは、何も業績のためではない。「博論をください」と他人に言われたとき、印刷・簡易製本して渡すというのはなかなかな手間である。世話になった人に、きちんとした本として研究成果を渡したいという気持ちがあった。 それ
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