イギリスでは、伝統的には妻が夫の姓を名乗ることが多かったが、正式には姓名に関する法律の規定はなく、自由に変更できる。20年以上現地で暮らすジャーナリストの冨久岡ナヲさんは「そもそも英国は、姓名に関する制度も感覚も、日本とは大きく違う」と指摘する――。(第1回/全3回) 日本の「名前の常識」が通用しない 結婚後の夫婦の姓を自由に選べる英国。 同姓も別姓もありだし、二人の姓を連結することも新しい姓を作ることもできる。 決められた「選択肢」があってその中から選ぶことが許されている、のではない。 こうしなくてはいけない、という規定がそもそもないのだ。 「選択的夫婦別姓」を「許す」「許さない」について果てしない議論を続けている日本と比べると、ほかの惑星の話のように聞こえるかもしれない。筆者も20年あまり前にロンドンに来た当時は「夫婦別姓がOKな国」程度の知識しかなく、日本から持ってきた「名前の常識」