『奥ノ細道・オブ・ザ・デッド』(森晶麿/スマッシュ文庫) 奥の細道でゾンビ!・・・というただそれだけの一発ネタだけの作品というには、もう少し、この作品の志しは高い。ただ、奥の細道にゾンビを出してみました、というだけではなく、多種多様、手を変え品を代え、さまざまな、過剰なまでのネタをぶち込んだ、ごった煮的な作品なのである。松尾芭蕉が忍者!なんてのは今では別に珍しくもないが、川合曾良が男の娘!とか、とにかく過剰。ひたすら過剰である。だが、そこが良い。とにかく思いついたネタを残らずぶち込もうという気概を感じるのだ。 僕が一番感心したのは俳句の取り扱いである。奥の細道を題材にした以上、俳句の問題に触れないわけにはいかないのは当然であろう。果たして、この作品ではどのように対処したのか。まあネタとしては単純である。芭蕉の有名な俳句が、すべて屍山血河の地獄道から生まれた血塗られた俳句であったということに