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  • もし書くことがなくなったら、俺らは一体なんなんだ - シロクマの屑籠

    書くことがなくなった - phaの日記 リンク先の文章がアップロードされた時、半目でそっと、逃げるように全文を読んだ。読んではいけないものを読んだ気分になった。 それから丸一日が経ち、寝る前に再び「書くことがなくなった」というタイトルを思い出していたら、おなかが痛くなってきた。心に引っかかっていることがある時の、そういう腹痛だとすぐにわかった。やっぱり他人事ではなかったのだ。他人事ではないから逃げるように読み、ブックマークすることもツイッターで言及することもなかった。が、腹痛をとおしてこれが自分の問題だとハッキリ認識した。たぶん、私と同じぐらいの年齢の、だんだんオンライン上で文章を書かなくなっていった人たちも他人事ではないだろう。 phaさんが言う「書くことがなくなった」の内実はどういうものだろう? あくまでオンラインの、無料の、すべての人に公開された領域に書くことがなくなったのか。それと

      もし書くことがなくなったら、俺らは一体なんなんだ - シロクマの屑籠
    • 女体化キャラ・競争社会のロマン・令和男性の生きづらさ - シロクマの屑籠

      今さら『宇宙よりも遠い場所』を観ているのだけど、これはアクティブを自負する理系の人には心地よく自己投影できるたまらない作品だったろうなあ。大きな舞台へ飛躍せんとする人間の足を引っ張る小人物の存在にも目配せが行き届いていると感じるが、そこで器の大きさを見せつける主人公の善人感よ。— すずもと (@aruto250) 2021年4月27日 しかし、可愛さを求めて女子ばかりで固めておきながら「男のロマン」が捨てられないので女子の中身をおっさんにするような作品や、女子ばかりの作品を好みながら「男の性欲」を捨てられないので百合解釈をするような受容の仕方を見ていると、女性的な表象に依存しすぎなのではないかという気になるな。— すずもと (@aruto250) 2021年4月27日 こんにちは。『宇宙よりも遠い場所』を楽しんでらっしゃったとのことで、ファンの一人として嬉しく思いました。ご指摘のような問題

        女体化キャラ・競争社会のロマン・令和男性の生きづらさ - シロクマの屑籠
      • 『人間はどこまで家畜か:現代人の精神構造』が出版されます - シロクマの屑籠

        人間はどこまで家畜か: 現代人の精神構造 (ハヤカワ新書) 作者:熊代 亨早川書房Amazon 先日、大和書房さんから『「推し」で心はみたされる? 21世紀の心理的充足のトレンド』が発売されたばかりですが、今度は早川書房さんから『 人間はどこまで家畜か: 現代人の精神構造 (ハヤカワ新書)』という書籍を発売していただくことになりました。 私がつくる書籍には2つのタイプがあって、ひとつは、現代人が心理的にも社会的にもうまく適応していくためのメソッドに重心を置いたもので、1月に発売された『「推し」で心はみたされる?』はその典型です。もうひとつは、現代社会という巨大なシステムがどんな構造や歴史的経緯から成り立っていて、私たちにどんな課題が課せられ、どういった現代特有の生きづらさを生み出しているのかを考えるタイプの書籍で、2月21日発売予定の『人間はどこまで家畜か』は後者のタイプにあたります。 同

          『人間はどこまで家畜か:現代人の精神構造』が出版されます - シロクマの屑籠
        • 「いかがだったでしょうか」さん、今しか書けないこと、書いてますか。 - シロクマの屑籠

          インターネットを誰もが利用するようになって、ブログやSNSや動画でいろんな人が情報発信するようになった。文章を、フレーズを、コンテンツを配信するようになった。それはそれで結構なことだと思う。 さて、二十年ほどインターネットに文章を書き続けていると、気づかされることがある。 それは、「その年の自分には書けても、5年後の自分には決して書けない文章がある」ということだ。 たとえば、私は2006年にこんなことをブログ記事に書いている。 これから式場の下見に行ってきますが - シロクマの屑籠 とはいえ結婚などという難儀な選択肢を選ぶことも、結局は漏れ出る諸執着に由来するわけで、その限りにおいて落胆や絶望の萌芽から逃げきれません。一方、僕は自分が凡庸な人間である、少なくとも凡庸な人間とそう変わらない行動遺伝学的特徴を持った雄であると推定しているので、凡庸な人生の諸先輩が創りあげてきた世間智から大きく外

            「いかがだったでしょうか」さん、今しか書けないこと、書いてますか。 - シロクマの屑籠
          • 令和の絶対国防圏 - シロクマの屑籠

            令和の絶対国防圏。 もう、タイトルだけで言い切ってしまったような気がするが、令和時代の日本は、絶対国防圏の頃の日本になんだか似ていると思う。 絶対国防圏とは、アメリカの反攻作戦を受けて1943年9月の御前会議で決まった「絶対に守るべき」「ここが破れたら敗戦確定」とみなされた防衛ラインのことだ。 しかし上の地図をみていただいてもわかるように、この絶対国防圏、えらく範囲が広い。絶対国防圏が本土からみて南南東の方向に大きく張り出しているのは、ここにカロリン諸島などが含まれるためだが、こんなに広い範囲を絶対国防するのはかなり無理がある。 昭和の歴史〈7〉太平洋戦争 (小学館ライブラリー) 作者:木坂 順一郎出版社/メーカー: 小学館発売日: 1994/09メディア: 新書 小学館『昭和の歴史7 太平洋戦争』では、絶対国防圏を決定する御前会議について、以下のように記している。 けっきょく陸軍の「絶対

              令和の絶対国防圏 - シロクマの屑籠
            • 新型コロナ対策というトロッコ問題と民主国家の責任問題を考えていたらわけがわからなくなった - シロクマの屑籠

              新型コロナウイルス感染症が第七波を迎えているとのことで、医療機関を中心に危機感が高まってきている。他方、先日の祇園祭の写真が示すようにコロナ禍以前の日常を取り戻す活動も目立ってきた。ワクチン接種が進み、重症者の割合が下がっていることも含めて、さまざまな要因が重なって人々の行動選択や世間の雰囲気が変わってきて、それらを背景として医療や政治の偉い人の判断も変わってきているのだろう。 それにしても。 感染症対策や行動自粛のゴールポストが少しずつ変わっていくさまを見ていると、諸決定には命がかかっているにもかかわらず、人々の行動選択と世間の雰囲気、それらの空気を読むまつりごとによって決まっているのだとしたら、それって本当はなんだろう?と思ったりする。間接的にせよ、私たちのなんとなくの行動選択と世間の雰囲気によってゴールポストが動いているとしたら、そのゴールポストを動かしている私たちの意志決定とその責

                新型コロナ対策というトロッコ問題と民主国家の責任問題を考えていたらわけがわからなくなった - シロクマの屑籠
              • 裏日本出身者から見た東海道新幹線の車窓風景 - シロクマの屑籠

                裏日本出身者から見た東海道新幹線の車窓風景の感想を一言でまとめると、「どこも豊かですね」となる。 ビジネスで大阪と東京の間を行ったり来たりしている人にとって、東海道新幹線の車窓風景なんて一生懸命に眺めるものではあるまい。ありふれた風景がどこまでも続く、退屈きわまりないものだろう。 が、それは表日本の出身者にとってのこと。裏日本出身者から見た東海道新幹線の車窓は、いろいろ刺激的だ。率直に言って、うらやましい景色でもある。人口の集中、鉱工業の発展、肥沃な耕作地と温暖な気候、そして富士山をはじめとする風光明媚な景観。 同じ日本でも、裏日本と表日本には風景に違いがある。そういう違いを前提に、東海道新幹線の車窓風景についてちょっとだけ。 静岡、浜松、大津にのぞみは止まらない 東海道新幹線に乗る人には当たり前すぎることだけど、静岡、浜松、大津にはのぞみは止まらない。そもそも滋賀県には県庁所在地に新幹線

                  裏日本出身者から見た東海道新幹線の車窓風景 - シロクマの屑籠
                • 「ヒト、または日本人はASDに進化しないと思う」 - シロクマの屑籠

                  私のタイムラインでは、定期的に「人類はASD(自閉スペクトラム症)的な方向に進化していく」「未来の人類はもっとASD的だ」といった内容の文字列が流れていく。そうした文字列を書いている人の属性はさまざまで、そう思っている人が結構いるんだろうなと思っている。 しかし、人類(ここからはヒトと書く)はASD的な方向に進化できるのだろうか? 特にもし、日本の現在の環境下が続くと考えた時に、ASD的な特性が日本人の多数派になっていくとは考えづらい。そのことを文章にしておきたくなった。 でも、肝心なのは性選択で勝ち残れるかどうかじゃないの? 2023年の12月に「ヒトはASD的な方向に進化していく」的なお話が目に付きやすくなった引き金は、たぶん、東北大学の研究グループの発表だろう。yahooニュースでは以下のように報じられている。 news.yahoo.co.jp 年を取った男性の精子は、より若い男性の

                    「ヒト、または日本人はASDに進化しないと思う」 - シロクマの屑籠
                  • お盆に還ってきた元ブロガーさんへ - シロクマの屑籠

                    ※この文章は、はてな村と呼ばれたブログコミュニティで活躍した元ブロガーへの手紙です。興味のない人は畳んでください※ インターネットで表舞台に立たなくなってから、もうずいぶんと長い年月が.. [B! 増田] 諸般の事情によりブログをやめざるを得なくなった。んで、なにも書かなく..(※元文章は差し替えられているため、ブックマーク貼付) お盆の季節に、はてな匿名ダイアリーに相次いで二つの投稿があった。00年代~10年代にかけて活躍した元ブロガーが書いた文章であることは明白で、当時を知っている人ならすぐに判っただろう*1。 この元ブロガーさんはアニメやゲームに対しても、世間や人間に対しても独特の感性を持っていて、我流の文体とあわさって唯一無二の面白さをみせていた。単に面白いブロガーなのでなく、一度覚えたら忘れられないブロガーだったと思う。 二つ目のリンク先でご本人が吐露しているように*2、この元ブ

                      お盆に還ってきた元ブロガーさんへ - シロクマの屑籠
                    • シロクマ先生、もう少しASDへの配慮をしてほしかった

                      ASD当事者です。「ヒト、または日本人はASDに進化しないと思う」を読みました。 https://b.hatena.ne.jp/entry/s/p-shirokuma.hatenadiary.com/entry/20231214/1702535078 先生の意見は事実事実としては、おおむねシロクマ先生の言う通りだと思います。(※文末脚注の注1を除く。)引用しつつ述べると ASD当事者は「性選択で勝ち残れる」可能性は低い。 「ASD的な特性を持った人が、仕事を見つけることが難しくなり、配偶も困難になっていく」という現実があります。 ASD当事者としてのお気持ち表明肌の色やジェンダーや国籍と違って、ASD相手には慎重さや配慮は不要なの?例えば以下のような事実は、仮に存在したとしても非常に慎重に言及されていませんか。 日本人は肌の色が〇〇な人より肌の色がXXな人を配偶者としたい傾向がある性別・ジ

                        シロクマ先生、もう少しASDへの配慮をしてほしかった
                      • お金に困っている人のほうが、お金がかかってしまう

                        精神保健福祉の分野では、精神科医が主役ではない場面がとても多い。 保健師・ソーシャルワーカー・市役所福祉課職員・警察官や弁護士といった他職種によるサポートこそが肝心なことがしばしばある。 クライアントの生活を支えるためには、多職種による連携が必要だ。 そうやって色々な職業の方とクライアントのお金の問題をディスカッションしている時に、ふと、右のようなことが頭をよぎることがある。 ――「今の世の中って、お金に困っている人のほうが、お金がかかってしまうんじゃないか」――と。 どういうことかというと、生活費が入ると右から左へ全部使ってしまう人や、いわゆる“やりくり”が出来ない、というより“やりくり”が完全に欠落していて、そのせいで経済的にますます困ってしまう人があちこちで見受けられるからだ。 しかも、そういう人は精神保健福祉のリーチする内側だけに存在するのでなく、外側にもかなりの確率で混じっている

                          お金に困っている人のほうが、お金がかかってしまう
                        • 「何者かになりたい」という望みはまだ死に絶えてはいなかった

                          先日、ある二十代の男性から「シロクマ先生、『何者かになりたい』と思っている人はいったいどうしたらいいんでしょうか」という質問をもらって、びっくりすることがあった。 「えっ? その……『何者かになりたい』って気持ちって、今の若い世代にも通じるんですか?」 私がそう問い直すと、彼は 「そういう気持ちを持っている人はまだいますし、私にも『何者かになりたい』気持ちはあります。」 とはっきり答えてらっしゃった。 「何者かになりたい」という欲求は、まだ死に絶えてはいなかったのか。 「何者かになりたい」の全盛期と、その行方 20世紀に思春期を過ごした私には、この「何者かになりたい」という欲求は懐かしさをおぼえるものだ。 1980年代にはフリーターという新しいワークスタイルが持てはやされ、「ただのサラリーマンになりたくない」若者たちが自らフリーターになった。 1990年代にはバブル経済の崩壊や阪神淡路大震

                            「何者かになりたい」という望みはまだ死に絶えてはいなかった
                          • 社会に溶け込んでいる、発達障害の人の話

                            21世紀に入ってから、「発達障害」という言葉はすっかり知られるようになり、「自分が発達障害かどうか調べて欲しい」という相談を外来で受けることが増えました。 そのように精神医療のドアを叩き、発達障害と診断される人の大多数は、日ごろ、社会で生きていくことに困難を感じていたり、周囲とのあつれきを感じていらっしゃるものです。 そりゃそうでしょう、何か困った問題が生じていない限り、病院を訪れることはないでしょうから。 社会に溶け込んでいる「発達障害と診断され得る」人々 発達障害という名前が広く知られるにつれて、精神科医が発達障害と診断する頻度はかなり増えました。 過去、違った病名をつけられていた人のなかにもASD (自閉スペクトラム症)やADHD (注意欠如多動症) に相当する人が混じっていることも判明するようになり、新しい対策や治療法が立てられるようになりました。発達障害を巡る状況は、全体的に進歩

                              社会に溶け込んでいる、発達障害の人の話
                            • ノイズを避けるコミュニケーション──言葉も、においも、ウイルスも - シロクマの屑籠

                              人間どうしのコミュニケーションは不潔でなるべく避けるべきという規範が定着してほしい— 正しさ (@verygoodreality) 2020年4月14日 少し前、たぶん新型コロナウイルス感染症でソーシャルディスタンスが求められている状況を踏まえた、皮肉めいたツイートを発見した。いや、本当は皮肉ではないのかもしれないが私には判断がつかない。 というのも、私には、現在の日本人のコミュニケーションの規範がこれに近いものに思われてならないからだ。 望ましいコミュニケーションと呼ばれるものの正体 現代人はしばしば、コミュニケーションを良いものとみなし、ディスコミュニケーションを悪いものとみなしている。そのうえで「コミュニケーションは良いこと」「コミュニケーションで繋がるのは望ましいこと」などと言ったりしているが、現代人がいうコミュニケーションとは、どういうものか。 たとえばコンビニのレジでの会話。

                                ノイズを避けるコミュニケーション──言葉も、においも、ウイルスも - シロクマの屑籠
                              • いい年した大人の『何者かになりたい』という感覚は、けっこう厄介。

                                シロクマ先生から、先日出版された本を送っていただいた。 タイトルは「何者かになりたい」。 ちょうど一年ほど前に、先生から寄稿された記事の続編と考えたらよいのかもしれない。 「何者かになりたい」という望みはまだ死に絶えてはいなかった 「えっ? その……『何者かになりたい』って気持ちって、今の若い世代にも通じるんですか?」 私がそう問い直すと、彼は 「そういう気持ちを持っている人はまだいますし、私にも『何者かになりたい』気持ちはあります。」 とはっきり答えてらっしゃった。 「何者かになりたい」という欲求は、まだ死に絶えてはいなかったのか。 (Books&Apps) 上の記事では、先生は「大人にばれないように「何者かになりたい」と熱望する若者には共感しかない。」と締めくくっていた。 * さて、私が「何者かになる」というフレーズに出会ったのは、2012年に出た、朝井リョウ氏の著作が初だった。 直木

                                  いい年した大人の『何者かになりたい』という感覚は、けっこう厄介。
                                • 「まともな人間の条件」と、そこからはみ出す自分自身について - シロクマの屑籠

                                  健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会に潜伏しています。 - 犬だって言いたいことがあるのだ。 はてなブログで付き合いの長かったいぬじんさんから、『健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会』についてお便りをいただきました。ありがとうございます。せっかくなので、前半章(1.)と後半章(2.)に分かれたreplyをお届けしています。 1.いぬじんさんは、拙著の前半章をご覧になって、こんな風に評しておられました。 シロクマ先生は本書の中で、この国の「健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会」のあり方について疑問を投げかけるだけでなく、精神科医としてのご自身の立場に対してさえも疑いのまなざしを向けている。 たとえば、こんな感じだ。 資本主義・個人主義・社会契約が徹底していく社会、どこまでも清潔で健康で道徳的になりゆく社会、秩序と社会適応の同心円へあらゆる人を包み込む社会から逃れることは困難になった。家庭でも

                                    「まともな人間の条件」と、そこからはみ出す自分自身について - シロクマの屑籠
                                  • その支援はインクルージョンか、分離や排除や透明化か? - シロクマの屑籠

                                    president.jp リンク先の文章は、前半はほぼ拙著『人間はどこまで家畜か』からの抜き出しで、とにかくも社会や環境が進歩した結果として精神医療のニーズは高まっていて、たとえばSSRIのようなセロトニンを補う薬が必要とさいれたり、ASDやADHDといった神経発達症の人に治療なり支援なりが必要な時代になっているよね、と書いた。 いっぽう後半パートは拙著からの抜き出しではまとめきれず、記事におさまるよう書き直した。ここは本当はもっと長い文章にしたかったところで、拙著では編集者さんにお願いして7頁を割いて論じている。それでもまだ、もっと調べてみたい気持ちは残っているし、医療現場と世間のギャップを思い浮かべると、いろんなことを考えずにはいられなくなる。 「それって本当にインクルーシブなんですか」という疑問 この文章では、「その支援って本当にインクルーシブなんですか?」という問題意識をとりあげて

                                      その支援はインクルージョンか、分離や排除や透明化か? - シロクマの屑籠
                                    • 伝わりすぎる、伝えすぎる、このネットという場所について - シロクマの屑籠

                                      これから書くことは個人的なエッセイだが、そのエッセイがネット上に置かれるため、タイトルにあるように、伝わり過ぎてしまうかもしれない。文章が指し示した内容どおり伝わるかは定かではないし、私が書いている際に考えていたとおりに伝わるのかも定かではない。たぶん、両方ともかなわないかたちで伝わったりもするだろう。どうあれ、ネット上に置かれた文章はどこかに伝わる。正確性の高低にかかわらず伝わる。 私がインターネットを本格的に使い始めた2000年前後だが、そのとき、ネットに書いた文章はボトルメールみたいなもので、自分が書いた文章が伝わる宛先はひとりふたり、多くて十数人の感覚だった。大きなウェブサイトや有名テキストサイトで活躍していた人は、ネットに書いた文章をボトルメールとは思わなかったかもしれない。とはいえ、大きなウェブサイトや有名テキストサイトですら、それらを愛顧している人に文章を伝えるのが専らだった

                                        伝わりすぎる、伝えすぎる、このネットという場所について - シロクマの屑籠
                                      • それは「成功」か、それとも「事故寸前」か、認識できていますか。

                                        これから書く話は、医療の世界でもブログの世界でも感じることだ。 ゲームでハイスコアを狙っている時にも通じている。 だから割と普遍的で、それ以外の分野にもしばしばあてはまると思って読んでみてほしい。 1.「シロクマ先生、”きわどいところ”を渡ったね」 私が研修医を終えるか終えないかの頃、ある若い患者さんを担当していた時のことだった。 その若い患者さんはご両親に強い反発をおぼえていて、「一人でアパート暮らしをしたい」と前々から主張していた。 彼は薬物療法を中断してしまうとすぐに症状が再発してしまう患者さんで、逆に言うと、薬物療法が続いてさえいればほとんど問題なくやっていける患者さんだった。 ひとり暮らしになれば薬を飲むのをさぼってしまい、再び具合が悪くなるのではないかと両親は心配していた。 入院してからの首尾は良く、薬物療法によって彼の精神症状は改善し、やがてなくなった。 そうなったうえで、患

                                          それは「成功」か、それとも「事故寸前」か、認識できていますか。
                                        • ブログを18年書き続けて思うこと (前編・自分のこと) - シロクマの屑籠

                                          2023年も残り一か月になろうとしている。 今年、私はとにかく働いて、創作して、2024年を迎えるための諸準備に追われて、気が付けばブログ18周年だった10月も通り過ぎてしまった。赤ん坊が高校を卒業するぐらいの年月にわたってブログを書き続けるぐらいにはブログが好きなんだから、なにか自分の記憶に残る文章をまとめたいと前々から思っていた。が、中年の多忙と疲弊はそれすら許さないのですね。 この、はてなブログ(旧はてなダイアリー)のブログである『シロクマの屑籠』は、私を当初予測よりずっと遠いところにいざなってくれた。20代の終わりにブログを書き始めた時、私はブログが自分の人生をこんなに変えてしまうとは想像していなかった。しばらくして「ブログだけじゃ足りない、本も書いてみたい」と思うようになってからも、じゃあ、ブログも本も書くようになったら何が起こるのか・逆に何が起こらないのかを想像できていなかった

                                            ブログを18年書き続けて思うこと (前編・自分のこと) - シロクマの屑籠
                                          • ブログ15年選手の、ネットで生き残る技術。

                                            私はブログを書くのが好きで、好きが嵩じて本も書くようになったのですが、つい先日、私のブログ『シロクマの屑籠』が15周年を迎えました。 15年前の2005年にはYouTubeもニコニコ動画もなく、ツイッターやインスタグラムもありませんでした。 はてなダイアリー(現はてなブログ)とはてなブックマーク、2ちゃんねる周辺で生存競争を繰り広げていたのが私のルーツです。 時代は変わって2020年。 ブログを書いている人は昔ほど多くありません。 かわりに動画配信やインスタグラム、ツイッターで頑張る人が増えました。 飲食店や企業もアカウントを作ってセルフブランディングするようになりましたね。 ネット上にアウトプットできる情報メディアが増え、アウトプットする人も増えましたが、うまいこと・長くアカウントを運営できる人はそう多くありません。 企業アカウントですら、ときには継続不能に陥ってしまうことがあります。

                                              ブログ15年選手の、ネットで生き残る技術。
                                            • アイデンティティのあり方、昭和→平成→令和を追う - シロクマの屑籠

                                              何者かになりたい 作者:熊代亨イースト・プレスAmazon 本を書いてしばらくすると、本で書き足りなかったこと・もっと強調すれば良かったことなど思いつきがちだ。6月に発売された何者かになりたいにしてもそうで、「自分はこういう人間である」を規定してくれるアイデンティティの構成要素のうち、集団やコミュニティをとおして獲得・確立する部分についてもっと語っておきたかった気持ちになっている。 その一部をここに書いておきたい。 それは、「平成時代の『何者かになりたい』と令和時代の『何者かになりたい』の違い」についてだ。あらましを述べると、平成時代の「何者かになりたい」や「自分探し」はとても個人的で、スタンドアロンな側面が強かった。いっぽう令和時代の「何者かになりたい」はそこまで個人的ではなく、集団やコミュニティを介して獲得・確立する側面が強まっている──このあたりについて、もう少しページを割いてみても

                                                アイデンティティのあり方、昭和→平成→令和を追う - シロクマの屑籠
                                              • 丸善京都の熊代亨選書フェア@はてなブログ編 - シロクマの屑籠

                                                ・丸善京都本店、『人間はどこまで家畜か』刊行記念・熊代亨選書フェア ご好評いただいている『人間はどこまで家畜か』にまつわる本や問題意識が近い本を集めたフェアを、丸善京都本店さんで開催していただいています(ありがとうございます!)。そちらで紹介されている本については、京都丸善本店さんで実際に手に取ってみていただければと思います。 このブログでは、ぎりぎり選外になった本や、値段が高すぎたり難易度が高かったりして紹介をためらった本、諸事情から選外に漏れた本などをまとめて紹介したいと思います。 1.ちょっと重たいかもと思って紹介しなかった本 ヘンリック『文化がヒトを進化させた』 文化がヒトを進化させた―人類の繁栄と〈文化-遺伝子革命〉 作者:ジョセフ・ヘンリック白揚社Amazonハーバード大学の進化生物学教授が書いた刺激的な本。ヒトの進化が文化を創りだしたのは昔から言われていることですが、この本で

                                                  丸善京都の熊代亨選書フェア@はてなブログ編 - シロクマの屑籠
                                                • 新しい社会のロールモデルとしての「推し」を使った処世術 - orangestar2

                                                  こちら、1月の末に発売された(id:p_shirokuma)先生の新刊『「推し」で心はみたされる? 21世紀の心理的充足のトレンド』読ませて頂きました。 これはその本を読んで自分の感じたことを書いたエントリになります。なので、本の内容からは一部(かなり)離れた内容になっていると思います。 「推し」で心はみたされる?~21世紀の心理的充足のトレンド 作者:熊代亨大和書房Amazon こちらの本を読む前に、自分の中の推しの概念について整理した記事がこちらにあります。推し、オタ、萌え、にたいしての自分なりの捉え方や概念の境界について、こちらの本を読んで影響される前に出力しておきたかったので、このような記事を書きました。 orangestar2.hatenadiary.com 本を読んでの感想ですが、こちらの本は推しや萌えの社会分析の本ではなく『”推し”という感情を使って、如何に社会適応をしていく

                                                    新しい社会のロールモデルとしての「推し」を使った処世術 - orangestar2
                                                  • A.口ずさむようにブログが書けない B.ブログになら書けることがある - シロクマの屑籠

                                                    【A面】 「ブログは何を書いたって構わない、自分だけのスペースだ」みたいな言葉を信じていたのに、きっと今の私はそうなっていないし、そういう自由なブログを信念にしていたブロガーたちは去ってしまった。口ずさむようにブログを書くことなんて、もうできない。 何者かになると口ずさむようにブログが書けなくなる 口ずさむようにブログが書けなくなったのは、年を取ったせい、人生の残り時間が意識されるせいもある。ブログを口ずさむ時間があったら、人生の残り時間を費やすに値すること・タイパ的に有意味とわかっているものに時間を費やしたほうがいい、などと考えている自分がいる。ほんとうは、それほど単純ではない。たとえば商業企画の原稿やそのための文献読みなどに時間を振り分け過ぎると、それ自体、作業効率を低下させる。ときには口ずさむように文章を書く時間をもうけたほうが作業効率は上がるし、案外、そういう隙間の時間から面白いア

                                                      A.口ずさむようにブログが書けない B.ブログになら書けることがある - シロクマの屑籠
                                                    • エヴァンゲリオンの初夢と夢判断 - シロクマの屑籠

                                                      2020年代が始まった。この、区切りの年に見た初夢が『新世紀エヴァンゲリオン』だったことに因縁めいたものを感じたので、ブログの書初めをやってみる。 1月1日の状況 前日夜にエヴァンゲリオンについてしゃべったり見たりした記憶はまったくない。 ただ、寝る前にたまたまテレビをつけた際、水晶玉子という占い師が「2020年は大きな見地からものを見るような、そんな年になる」的なことをしゃべっていた。夢が醒めてそのことを思い出したので、ここから影響を与えていたかもしれない。 実際に見たエヴァンゲリオンの初夢 エヴァンゲリオンの夢は、碇シンジと惣流アスカラングレーが並んで登場するシーンから始まった。二人とも学生服姿で、そのデザインは90年代の新世紀エヴァンゲリオンというより、新劇場版のソレに近かった。そういう意味ではアスカは式波アスカラングレーだったのかもしれない。このシーンで、「アスカのほうがデザインが

                                                        エヴァンゲリオンの初夢と夢判断 - シロクマの屑籠
                                                      • 熊代亨『何者かになりたい』感想〜アイデンティティ獲得の攻略本と主体的な選択の余地に悩める幸運への感謝 - 太陽がまぶしかったから

                                                        「何者かになりたい」 と思ったことがなかった 「自分」に満足できないのは、なぜ? 〈承認欲求〉〈所属欲求〉〈SNS〉〈学校・会社〉〈恋愛・結婚〉〈地方・東京〉〈親子関係〉〈老い〉 アイデンティティに悩める私たちの人生、その傾向と対策。 「何者かになりたい」 多くの人々がこの欲望を抱え、それになれたり、なれなかったりしている。 そして、モラトリアムの長期化に伴い、この問題は高齢化し、社会の様々な面に根を張るようになった。 私たちにつきまとう「何者問題」と、どうすればうまく付き合えるのか。 人と社会を見つめ続ける精神科医が読み解く。 何者かになりたい 作者:熊代亨イースト・プレスAmazon 「何者かになりたい」という感情について、実のところあまり抱いたことがなかった。もちろん人並みのロールモデルを思い描いてはいたが、それは健康で、家族や友人がいて、お金に困らず、趣味が楽しめればといった類のも

                                                          熊代亨『何者かになりたい』感想〜アイデンティティ獲得の攻略本と主体的な選択の余地に悩める幸運への感謝 - 太陽がまぶしかったから
                                                        • #はてな村 のソムリエ、シロクマ先生に公開質問状を送る! - 玖足手帖-アニメブログ-

                                                          脳内妹と結婚する! ドン! 脳内妹の頭令そらが30歳になる9月20日にだ! (アホなので記念日はまとめたいし婚約記念日も全部誕生日と同じです) (ちなみに脳内妹の誕生日がなぜその日かと言うと「空の日」だからです雑です。あとおとめ座にしたかった) (「妹の日」は9月6日ですよ、祥子様!) 。。。 Gのレコンギスタ第3部のことを考えてたら、あと1ヶ月! ダイエットとかしてるけど、固有結界内の結婚式場や脳内妹用のゴティックメードやら花嫁衣装やら世界を革命する剣の設計作業が遅れているぞ! (実は脳内なので物理身体が太っていても別に構わんのだが、こういうきっかけがないと運動しないので) (ていうか18年前から書いている脳内妹との馴れ初めを描くはずだった小説がまだ1年分しか書けていない……) 結婚式にふさわしい酒を用意せよ!熊代亨先生! 前置きが長くなったな、許せ。本題に入る。 なんやかんやと奇策を用

                                                            #はてな村 のソムリエ、シロクマ先生に公開質問状を送る! - 玖足手帖-アニメブログ-
                                                          • シロクマ「ピース」2日に20歳 育児放棄、病も乗り越え 飼育員寄り添う | 毎日新聞

                                                            見つめ合うピースと高市敦広さん=愛媛県砥部町上原町の県立とべ動物園で2019年11月30日午後3時3分、遠藤龍撮影 国内で初めて人工哺育に成功し、生存記録を更新し続ける愛媛県立とべ動物園(砥部町)のホッキョクグマ(シロクマ)の雌、ピースが2日、20歳の誕生日を迎える。一般的な飼育下では寿命が25~30年とされるシロクマ。「生きてくれてありがとう」。1日、同園で誕生会が開かれ、「育ての親」の飼育員、高市敦広さん(49)は感慨深い思いでピースを祝福した。

                                                              シロクマ「ピース」2日に20歳 育児放棄、病も乗り越え 飼育員寄り添う | 毎日新聞
                                                            • 「情報の遮断」や「現実逃避」で、不安や苛立ちから距離を置くのは処世のスキル。

                                                              最近は、どこもかしこもパンデミックの話題ばかりで、オンラインでもオフラインでも人々の慌てふためくさま、不安や苛立ちに衝き動かされるさまが目に飛び込んでくる。 不安で仕方がない時や苛立っている時、そういった気持ちを抱えたままマトモな判断ができるものだろうか? いや。たいていの人はマトモな判断などおぼつかない。 不安や苛立ちは私たちの判断を曇らせて、言動を歪ませてしまう。 そういった難しいエモーションをモチベーション源として行動すると、激しく失敗したり、人間関係をこじらせたり、なにかと後悔の源になりやすい。 「馬鹿の考え休むに似たり」という言い回しがある。 「下手の考え休むに似たり」という言葉を元にして生まれた、愚かな者がいくら考え込んでも妙案など浮かばないということを意味する語。 (Weblio辞書より) 東日本大震災の時もそうだったが、今回のパンデミックでも、SNSを通して「馬鹿の考え」を

                                                                「情報の遮断」や「現実逃避」で、不安や苛立ちから距離を置くのは処世のスキル。
                                                              • https://www.unohitomi.xyz/entry/2020/01/20/163608

                                                                  https://www.unohitomi.xyz/entry/2020/01/20/163608
                                                                • 記念日のワインを誰かに薦めるとしたらこんなワイン - シロクマの屑籠

                                                                  #はてな村 のソムリエ、シロクマ先生 @twit_shirokuma に公開質問状を送る! - 玖足手帖-アニメブログ- こんにちは。公開質問状などと書かれ、ぎょっとしてしまいました。また、そのような文言で送られた文章にリアクションを行うべきか迷いました。nuryougudaさんとは長くインターネットを共にしているわけですが、最近、インターネットにおいて誰とどのように・どこまで言葉を交わすのが良いのかわからなくなっておりまして。 さておき、(自分の、ではなく他の人にお勧めする)記念になる酒とはどういうものでしょう。この場合、ワインをご指名なので記念になるワインとなると何が良いのか。 これは、どういう人が・どういう状況で・どう飲むのかによってベストが変わってくる問題です。いや、この場合、ワインはおまけで記念日のほうが重要なので、本当はなんでもいいのです。記念になる出来事があって、慌ててワイン

                                                                    記念日のワインを誰かに薦めるとしたらこんなワイン - シロクマの屑籠
                                                                  • ブログを18年書き続けて思うこと (後編・社会のこと) - シロクマの屑籠

                                                                    こちらの続き、後編になります。 前編ではブログを18年書き続けてきた自分自身について書いた。ここからはブログをとりまく18年ぶんの社会とか環境とかについて。 この『シロクマの屑籠』が開闢した2005年はブログブームな時期でアーリーアダプターからアーリーマジョリティにブログの書き手が広がっていく、そんな頃合いだった。ウェブサイトよりも書く敷居が低い、誰でも情報発信できるメディアとしてのブログ。それは確かに便利で、ウェブサイトからブログに本拠地を移したばかりの私は息を吸うほど簡単にありとあらゆることをブログに書き殴りまくっていた。アメブロやFC2ブログやライブドアブログに書き殴っていた人たちも多かれ少なかれそうだっただろう。 けれども「誰でも情報発信できるメディアとしてのブログ」の寿命は短かった。SNSが生まれ、インスタグラムが生まれ、tiktokが生まれた。ブログ以上に簡単にオンラインにアッ

                                                                      ブログを18年書き続けて思うこと (後編・社会のこと) - シロクマの屑籠
                                                                    • 他人に何者かであることを期待するな、死ぬぞ - 玖足手帖-アニメブログ-

                                                                      グダちんって死人芸が持ち芸のカスやんけ。溺れる者は何とやら。 ※死人芸:祖母の死をダシにして作品批判する。純と愛でやってた。— 倉印 (@ExOChji676Caqb8) 2023年7月6日 こんばんわ!カスだよ! ンンンンンソンソンンン~~~~??? 拙僧が純と愛というテレビ番組が視聴者の自殺に影響を及ぼしたと書いたのは、肉体の遺伝上の母親の自殺の時ですぞ~~~~??? nuryouguda.hatenablog.com 自死遺族の僕について祖母と母親のちがいもわからない程度の「読み」でカスと断定するとは、それはブログで晒されてもしかたないんですぞ~~~~~???? ちなみに祖母が死んだときのルポはnoteの有料記事に書きました。買ってね! note.com それはそれとして、りゅうちぇるさんも自殺しましたね! それに便乗した記事が載っているんですが。 tocana.jp 亜留間次郎の記

                                                                        他人に何者かであることを期待するな、死ぬぞ - 玖足手帖-アニメブログ-
                                                                      • 「熊代 亨」の記事一覧

                                                                        1975年生まれ、信州大学医学部卒業。ブログ「シロクマの屑籠」にて現代人の社会適応やサブカルチャーについて発信し続けている。著書に『ロスジェネ心理学』『融解するオタク・サブカル・ヤンキー』『「若作りうつ」社会』『認められたい』『「若者」をやめて、「大人」を始める』『健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて』『何者かになりたい』『「推し」で心はみたされる?』など多数。

                                                                          「熊代 亨」の記事一覧

                                                                        新着記事