記憶の中に残る「読まなかった本」の豊かさ この連載の第1回「ちょっと長いまえがき」で、私の同級生である、リタイアした若いお爺さんに、スウィフトの『ガリバー旅行記』を勧めたことを書きました。 最近、また彼と話をしたのですが、彼はいわゆる児童文学というものに、深く魅せられていることが分かりました。『ガリバー旅行記』はもちろん、最近読んだ児童文学の名作の題名を、次々と挙げていくのです。 その誇らしげな顔を見ていると、私のお勧めは間違っていなかったなと、ちょっとホッとしました。彼は最近では、孫に絵本を買ってあげるようにもなり、絵本そのものに興味を抱くようになっているようです。 こういうお勧めができたのも、実は私にはネタ本があったからなのです。『子どもの本の森へ』という本がそれです。 古書でしか手に入らないのが残念なのですが、大変優れた内容を持った本です。ユング派の心理学者として有名な河合隼雄さんと