春風に 少女石段 かけのぼる (吉岡 実) この可憐な句、作者があの前衛的な現代詩の書き手だった吉岡実さんだと知って、驚くかたも多いのでは。これは、吉岡さんの十三回忌に奥様の陽子さんが一冊にされて限定72部(吉岡さんの亡くなった年齢の数でしょう)作られた『赤鴉』に収められています。俳句は後半の「奴草」のパートですが、前半の「歔欷」では、短い行の詩と短歌を読むことが出来ます。こんな短歌もありますよ。「ゆきずりの女(ひと)を慕ふて去りかねし白き舗道に春はきにけり」。 拙著『全身詩人 吉増剛造』の出版を記念した公開トーク&パフォーマンスの第二回目が、ゲストに写真評論家で詩人、明治大学教授でもある倉石信乃さんを迎えて神田にある美学校で開かれました。3月8日(金)の夜です。会場になった美学校、僕が訪ねるのは初めてでしたが、1969年の開校当時は、いわば前衛派の文学者や美術家、舞踏家らが講師を