では、ほかに「本が売れればそれでいいのか?」と問いたい相手といえば、無論、版元である「書肆侃侃房」である。 私はけっこう幅の広い「本読み」だから、「書肆侃侃房」が地方出版社ではあっても、かなり良い仕事をしているというのは、かねがね承知していた。 例えば、2022年刊行の、島田龍編『左川ちか全集』などもそれで、下の『左川ちか詩集』(岩波文庫)についてのレビューで、この『全集』刊行の果たした大きな意義に言及してもいる。 つまり、そういう、なかなか「いい仕事」をしている出版社だと思っていたので、北村紗衣のような「人気だけで中身のない文筆家」の本を、いくら同社から刊行の前著『お砂糖とスパイスと爆発的な何か 不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門』が売れたからといって、「柳の下の二匹目のドジョウ」としか思えない2冊目を刊行するというのは、出版社としての見識を疑わせ、信用を貶める自傷的な行為として