刑事裁判で有罪が確定するまでは、罪を犯していない人として扱わなければならない――。いわゆる「無罪推定の原則」だが、十分に守られているとは言い難い。たとえば、犯罪報道では「逮捕=犯人」のように捉えられているのが現実だ。それゆえに実名報道は、冤罪時のダメージや更生阻害などを招いてしまう。 かつてメディアは逮捕された人を呼び捨てにしていた。「容疑者」をつけるようになったのは1980年代からだ。当初は新鮮味があったかもしれない。しかし、犯人視報道が変わらなかったために、「容疑者」はただの形式になっている面がある。 実名を報じながら、無罪推定の原則を守ることは可能なのか。鹿児島の地方紙・南日本新聞の元記者で、鹿児島大学でメディア論を教えている宮下正昭さんに寄稿してもらった。 【関連】「メディアは実名報道へのこだわりに腰が座っていない」元記者の大学教員が苦言 ●「男」「女」の呼び捨てやめて 容疑者が逮