加藤尚武『現代倫理学入門』(25) 今回は、自由主義の原則の第3番目、「③他人に危害を及ぼさない限り」についてである。 この条件は、「他者危害の原則」とも呼ばれる。自由主義の原理の中心部分であり、アトミズム[個人主義]と功利主義の性格の強い規定である。 加藤は、次のように述べている。これは考えてみる価値がある。 私がタバコを吸えば、周りの人間すべてが無関係ではいられない。私がダイヤモンドを掘り出せば他者に残されるのは残りのダイヤモンドであって、私が他者に何も働きかけなかったとしても、私の行為は他者と関わっている。これは私の行為が図柄で、外部の世界はその地柄となる関係である。私の行為や私の存在とそれを切り抜きだした残りの空間とは、ゼロサム関係と同じで、一方が決まれば他方も決まる。完全に相互規定的な関係にある。そして私にとっての他者は、私と相互規定的な地柄の中にいる。 私がタバコを吸えば、周り