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朝日新聞書評に関するエントリは36件あります。 歴史書評 などが関連タグです。 人気エントリには 『「現代アートを殺さないために」 美術評論が書かぬ生々しい実態 朝日新聞書評から|好書好日』などがあります。
  • 「現代アートを殺さないために」 美術評論が書かぬ生々しい実態 朝日新聞書評から|好書好日

    ISBN: 9784309256641 発売⽇: 2021/01/05 サイズ: 19cm/384,18p 現代アートを殺さないために ソフトな恐怖政治と表現の自由 [著]小崎哲哉 一昨年の芸術祭「あいちトリエンナーレ」では、「表現の不自由」を問う展示が大量の非難や脅迫で中止に追い込まれ、国の補助金が一方的に取り消された。日本の「自由」の実情を象徴する事件だ。 だが従軍慰安婦を題材とした作品ばかりが注目され、またあの話かと、大勢は無関心ではなかったか。問題の核心はどこにあるのか。アートの世界で何が起こっているのか。本書はそこに斬り込む。 2014年、「すべてはこの年に始まった」。内閣人事局の設置と同年、文化行政でも、展示作品へのクレームや国際交流事業での中国・韓国外しなど、政権による介入が進んだ。「最近は放射能、福島、慰安婦、朝鮮など」は「NGワード」というわけだ。 「忖度」(そんたく)は

      「現代アートを殺さないために」 美術評論が書かぬ生々しい実態 朝日新聞書評から|好書好日
    • 「近現代日本の民間精神療法」 国境越えねつ造された起源を暴く 朝日新聞書評から|好書好日

      ISBN: 9784336063809 発売⽇: 2019/09/13 サイズ: 22cm/399,15p 近現代日本の民間精神療法 不可視(オカルト)なエネルギーの諸相 [編]栗田英彦、塚田穂高、吉永進一 私は学生の頃から、催眠術、西式健康法、野口整体、手かざし、静坐法などをやってきた。医者に行ってもどうにもならない問題があったからだ。一定の効果が感じられる以上、それらの療法を斥ける理由はなかった。それらにどういう「科学的」根拠があるのかわからないが、そのうちわかるだろうと思っていた。まだ、そうなってはいない。ただ、「民間療法」と呼ばれる、これらの療法に関する研究は進んできている。私は以前に『癒しを生きた人々』(1999年)という本を読んだことがあるが、本書はそれを受け継ぐとともに、もっと本格的に考察を広げている。そのことは、巻末の「民間精神療法主要人物および著作ガイド」を見れば明白であ

        「近現代日本の民間精神療法」 国境越えねつ造された起源を暴く 朝日新聞書評から|好書好日
      • 「ヤバい神」 残された矛盾 文脈から解明 朝日新聞書評から|好書好日

        「ヤバい神」 [著]トーマス・レーマー 本書は、旧約聖書(ヘブライ語聖書)への読書案内であり、「ヤバい神」とは、そこにあらわれる神のことである。私は中学生の時、初めて冒頭の「創世記」を読んで驚いた。そこに描かれた神は、「政治的正しさ」からはほど遠かったからだ。本書の原題の直訳は「わかりにくい神」だが、「ヤバい」という訳語は的確だと思う。 ヤバさの有名な例に、アブラハム物語がある。神は、高齢のアブラハムに息子イサクを授けるが、アブラハムの信仰を試す「試練」として、幼いイサクを生贄(いけにえ)に献(ささ)げるよう命じる。アブラハムは命令に従おうとするが、その信仰を認めた神が止め、イサクは助かる。この不条理な物語に対し、哲学者カントは、アブラハムはそのような非道徳的な命令を下す者が神であるはずがないと答えるべきだったと述べた。一方キルケゴールは、アブラハムの信仰を讃(たた)えた。この物語は、数多

          「ヤバい神」 残された矛盾 文脈から解明 朝日新聞書評から|好書好日
        • 「それでもなぜ、トランプは支持されるのか」 二極社会への憤りが生んだ「革命」 朝日新聞書評から |好書好日

          それでもなぜ、トランプは支持されるのか: アメリカ地殻変動の思想史 著者:会田 弘継 出版社:東洋経済新報社 ジャンル:西洋思想 「それでもなぜ、トランプは支持されるのか」 [著]会田弘継 不倫口止め料の不正処理事件をめぐり、米国の大統領経験者で初の有罪評決を受けたドナルド・トランプ。大統領選の結果を覆そうとした容疑など、他にも刑事裁判を抱えるが、支持は衰えない。黒人やヒスパニック、若者の支持も着実に広げてきた。数々の差別発言や民主主義を軽視する言動にもかかわらず、である。この現実を説明しようと、トランプ支持者を権威主義に魅入られ、噓(うそ)と真実の見分けもつかない哀れな人たちとみなす論調も広がる。 トランプが常識破りの人間であることは間違いない。しかし裏を返せば、かくも危険な人間に権力を与え、いったん何もかもを破壊し、「リセット」したいと思うほどに、大衆に政治への絶望と怒りが巣くってきた

            「それでもなぜ、トランプは支持されるのか」 二極社会への憤りが生んだ「革命」 朝日新聞書評から |好書好日
          • 「旧植民地を記憶する」 侵略を公的に認めることの意味 朝日新聞書評から|好書好日

            旧植民地を記憶する フランス政府による〈アルジェリアの記憶〉の承認をめぐる政治 著者:大嶋 えり子 出版社:吉田書店 ジャンル:政治・行政 「旧植民地を記憶する」[著]大嶋えり子 他国への侵略行為が目の前で起きた時、それを批判する足場の一つは、過去の侵略がもたらした被害の記憶である。だからこそ、旧宗主国の政府が植民地の記憶を公的に認めるか否かは、喫緊の課題なのだ。フランスの加害の記憶を扱った本書は、このことを痛感させる。 フランスは、19世紀からアルジェリアを支配し、1962年の独立まで収奪や搾取を続けた。独立戦争時には多くのアルジェリア人を殺害した。フランス軍に参加したアルジェリア人戦闘員を保護することもしなかった。 著者が試みたのは、こうした事実の解明ではない。フランス政府が旧植民地の記憶をどのように承認してきたかをつぶさに追うことだ。 政府は加害の記憶を公的に認めてこなかった。補償や

              「旧植民地を記憶する」 侵略を公的に認めることの意味 朝日新聞書評から|好書好日
            • 「犠牲者意識ナショナリズム」 各国の歪んだ自意識と向き合う 朝日新聞書評から|好書好日

              犠牲者意識ナショナリズム 国境を超える「記憶」の戦争 著者:イム・ジヒョン 出版社:東洋経済新報社 ジャンル:社会思想・政治思想 「犠牲者意識ナショナリズム」 [著]林志弦 「犠牲者意識ナショナリズム」とは著者の造語で、自分の国の一体性や正当性を主張するために、自分たちの英雄的な行動ではなく、他国から受けた被害を過剰に強調し、自分たちの加害を過剰に小さく見せようとする態度のことをいう。 慰安婦問題が欧州の女性に対する犯罪の記憶を呼び起こしたり、ホロコーストの記憶とイスラエルによるパレスチナでの暴力の記憶が重ねられたりする記憶のグローバル化を背景に、ポーランド、ドイツ、イスラエル、日本、韓国、旧ユーゴなどの犠牲者意識ナショナリズムを縦横無尽に論じる快著の翻訳を寿(ことほ)ぎたい。 私が初めて著者の報告で犠牲者意識ナショナリズムという言葉を聞いたとき、なんて恐ろしい概念だと驚愕(きょうがく)し

                「犠牲者意識ナショナリズム」 各国の歪んだ自意識と向き合う 朝日新聞書評から|好書好日
              • 「ジェンダー格差」/「フェミニスト経済学」 男女格差はもう正当化できない 朝日新聞書評から |好書好日

                ジェンダー格差 実証経済学は何を語るか (中公新書) 著者:牧野百恵 出版社:中央公論新社 ジャンル:新書・選書・ブックレット 「ジェンダー格差」 [著]牧野百恵/「フェミニスト経済学」 [著]長田華子、金井郁、古沢希代子 なぜ、男女の違いが格差につながるのか。経済学で男女格差の不透明さを理解しようとする書籍の出版が相次いでいる。 ここで「経済学」を強調するのには理由がある。いわゆる統計的差別を合理的と解釈したのは(労働)経済学。脳や身体の構造、性格の違いで男女格差を説明したのも(行動)経済学。現実に差別があるならば、差別したい人が損をしてまでも差別するからだと考えたのも経済学だ。結局、男女差別の合理的解釈を示してきたのは経済学なのであって、逆に言えば、経済学で男女差別を合理的に説明できなくなったとき、男女差別を正当化する論理の多くは根拠を失う。 『ジェンダー格差』は、開発経済学を専門とす

                  「ジェンダー格差」/「フェミニスト経済学」 男女格差はもう正当化できない 朝日新聞書評から |好書好日
                • 「誰の日本時代」 「ニホンゴデキン」大多数だった 朝日新聞書評から|好書好日

                  「誰の日本時代」 [著]洪郁如 七年ほど前、台南のとある村を散策していたら、八十代と思われる老婦人に笑いかけられたので、おばあさんお元気ですか、と挨拶(あいさつ)をした。それまでの経験から、日本からの観光客を歓迎するこの年代の台湾人には、中国語よりは日本語で話しかけるほうが喜ばれると思ったのだ。ところが老婦人は、ニホンゴデキンデキン、と笑う。あたしは台湾語しか喋(しゃべ)れないのよ、と言われてようやく私は、「日本統治期台湾」をめぐる自分の想像力の貧しさを悟った。 一八九五年から一九四五年のこの時期を、台湾では「日本時代(リッブンシーダイ)」と区分する。 この「時代」に生を受け、幼少期・青少年期を過ごした「台湾人」と「『日本語人』は常に等号で結ばれてきた」。とりわけここ日本では、九〇年代以降、日本のメディアにも頻繁に登場した李登輝に代表される、日本統治下の台湾で習得した日本語で流暢(りゅうち

                    「誰の日本時代」 「ニホンゴデキン」大多数だった 朝日新聞書評から|好書好日
                  • 「なぜ男女の賃金に格差があるのか」 仕事じたいの設計変更 判断を 朝日新聞書評から|好書好日

                    なぜ男女の賃金に格差があるのか 女性の生き方の経済学 著者:クラウディア・ゴールディン 出版社:慶應義塾大学出版会 ジャンル:経済 「なぜ男女の賃金に格差があるのか」 [著]クラウディア・ゴールディン 女性というだけで、やりたかった仕事や生活をあきらめたことがある読者、身の回りにそういう女性がいたことがある読者は多いだろう。こんな体験は社会正義に悖(もと)るという考え方が広がってきてはいるものの、日本の現状は厳しい。しかし、女性にとって厳しい現状は何も日本だけの専売特許ではなく、市場経済の権化、世界経済の牽引(けんいん)車たる米国でも同様だ。つまり市場競争や経済成長が解決するという素朴な話ではない。 米国労働経済学・経済史学の碩学(せきがく)たる著者の、2014年の米国経済学会会長講演はこの問題に正面から取り組み、業界では知らぬ人がいないといってよいくらい有名になった。本書は、この講演の材

                      「なぜ男女の賃金に格差があるのか」 仕事じたいの設計変更 判断を 朝日新聞書評から|好書好日
                    • 「ファシズムへの偏流」 カリスマの転向 うねる時代映す 朝日新聞書評から|好書好日

                      ファシズムへの偏流 ジャック・ドリオとフランス人民党(上・下) [著]竹岡敬温 舞台は一九三〇~四〇年代のフランス。共産党の市長から一転、ファシストに転向を遂げたカリスマ政治家の驚愕(きょうがく)の伝記である。 一八九八年、ジャック・ドリオはパリの北にある一二〇〇人の村で、貧しい鍛冶(かじ)職人の父と内職でお針子の仕事をする母の間に生まれた。パリ近郊のサン・ドニに出て冶金(やきん)工として働く中で社会主義と出会い社会党に入党。第一次世界大戦では激戦地に配属されたが生き残る。サン・ドニに戻ると、コミンテルン陣営に鞍(くら)替えし、職業的革命家の道を歩む。 ドリオは共産党員としてモスクワに行き二〇カ月滞在し、ロシア語、マルクス主義、演説の手法、文書の作成方法を学んだ。レーニンの死には「嗚咽(おえつ)をこらえることができなかった」という筋金入りの共産主義者となってサン・ドニに戻った。一八〇センチ

                        「ファシズムへの偏流」 カリスマの転向 うねる時代映す 朝日新聞書評から|好書好日
                      • 「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」 ガン闘病 最終行まで音楽語る 朝日新聞書評から |好書好日

                        「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」 [著]坂本龍一 ニューヨークの日本食レストランで食事中、いきなり背後から抱きつく者がいた。坂本龍一だ。一度会っただけなのに、なんて人懐こい人なんだと驚くと同時に不思議な友情も抱いた。翌日、僕の個展を開催中のギャラリーに来てくれた。オーナーに、Yellow Magic Orchestraのサカモトだと紹介した。彼はニューヨークで有名人だった。 その後、電報のような短い用件のみのメールやCDが届いた。長い空白があって、ついこの間のことのように思うが、東宝スタジオの社員食堂で彼と食卓を囲んだ。そしてその数日後、アトリエにやってきた。 いつか彼に聞こうと思っていたことがあった。それはヘルマン・ヘッセの「芸術家が政治に関与すると短命に終わる」という発言への見解であったが、政治的行動をしていた彼はその頃ガンを宣告されたので、ヘッセの言葉は僕の中で封印することにした

                          「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」 ガン闘病 最終行まで音楽語る 朝日新聞書評から |好書好日
                        • 「弱者に仕掛けた戦争」 断種生んだ「淘汰の欲望」の暴走 朝日新聞書評から|好書好日

                          「弱者に仕掛けた戦争」 [著]エドウィン・ブラック 「戦前に、優生学に基づいて、断種を行っていた国」といえば、「ドイツ」を挙げる人が多いだろう。それだけ、ナチのユダヤ人迫害はよく知られている。だが本書を通読したあとは、真っ先に「アメリカ」を思い浮かべるようになるはずだ。 優生学は、科学の名のもとに、特定の集団に優劣をつけ、劣ると見なした集団の子孫を絶つことで、人種を改良しようとした。本書が追究したのはただ一つ。その優生学の温床が、アメリカだったことだ。 社会進化論や遺伝学をベースに、優生学の理論はイギリスで作られた。だが、それを隔離・結婚禁止・強制断種といった政策・行政にまで発展させたのは、20世紀前半のアメリカだった。根底には、白人至上主義と移民排斥の欲望があった。 優生学記録局が設立され、障害者・貧困者など社会的弱者を「不適者」と見なし、その家系を調査した。各州は優生学の見地から断種・

                            「弱者に仕掛けた戦争」 断種生んだ「淘汰の欲望」の暴走 朝日新聞書評から|好書好日
                          • 『徳川秀忠』『「関ケ原」の決算書』 研究・マスコミ両立 最期まで現役 朝日新聞書評から|好書好日

                            徳川秀忠/「関ケ原」の決算書 [著]山本博文 この2冊は、今年3月に急逝した著者の遺著である。『「関ケ原」の決算書』の校正終了直後に没したという。 学者はマスコミへの露出が増えて名前が売れると、本業が疎(おろそ)かになり本を粗製乱造しがちである。著者の活動には批判もあったが、メディア活動と研究活動を両立させた希有な歴史学者だった。 『徳川秀忠』は初代徳川家康と三代家光の間に挟まれて影の薄い江戸幕府二代将軍の評伝である。秀忠は関ケ原合戦に間に合わなかった凡庸な武将と見られてきた。 だが家康は当初長期戦を想定しており、秀忠に与えた任務も信州上田城の真田昌幸を降参させることだった。戦局の急変により家康は秀忠に急ぎ西進するよう命じるが、その使者は川の増水で秀忠のもとに着くのが遅れた。著者は、家康が秀忠の遅参を叱責(しっせき)した話は後世の創作であると指摘する。 とはいえ、天下分け目の戦いに参加でき

                              『徳川秀忠』『「関ケ原」の決算書』 研究・マスコミ両立 最期まで現役 朝日新聞書評から|好書好日
                            • 「神経症的な美しさ」 急速な近代化がもたらす後遺症 朝日新聞書評から|好書好日

                              「神経症的な美しさ」 [著]モリス・バーマン 本書が読了に差し掛かったとき、葬儀会社の折り込みチラシに目が行った。そこにあるのは通夜と葬儀告別式が1日で済むプラン。たとえ1日でもお手頃価格で故人をしっかり見送れること、7万円の公的給付があることも強調されている。 本書前半の一節が甦(よみがえ)った。 「(あらゆる先進国が)中世から近代への移行によって受けた傷は精神的・心理的なもので、現実の始原的な層(レイヤー)を押しつぶし、そこに代償満足を補塡(ほてん)した――実に惨めな失敗に終わったプロセスである(略)そこには、実存ないしは身体に根ざす意味の欠如がつきまとっている」 弔いが開拓しがいのある市場となり、速さ・安さ・手軽さが魅力の商品として売り出される。弔うことの煩わしさは解消されるが、生きるとは何か、死ぬとは何かといった実存的問題は置き去りのままだ。見事なまでの「代償満足」。癒やされぬ「傷

                                「神経症的な美しさ」 急速な近代化がもたらす後遺症 朝日新聞書評から|好書好日
                              • 「トラジャ」 うごめく欲吸い上げた執念の取材 朝日新聞書評から|好書好日

                                トラジャ JR「革マル」30年の呪縛、労組の終焉 著者:西岡研介 出版社:東洋経済新報社 ジャンル:産業 トラジャ JR「革マル」30年の呪縛、労組の終焉 [著]西岡研介 「積極攻撃型組織防衛論」。国際紛争の話ではない。JR東日本労組の執行委員長に就き、革マル派の「ナンバー2」といわれた松崎明が編み出した、「組織内部の『敵』を見い出し、その『内部の敵』を徹底的に叩くことによって組織を強化し、外部の攻撃から組織を守る」ための理論である。 公安当局が「影響力を行使し得る立場に革マル派活動家が相当浸透している」とするほどにJR東日本の内部で長らく続いてきた「JR革マル」対「党革マル」の内ゲバ。松崎の死を転機に組合の弱体化を画策した会社は、二〇一八年初頭からわずか一年ほどの間に三万五〇〇〇人もの大量脱退という〝成果〟を得る。 その判断には「官邸の意向」も働いたと記されているが、大量離脱が始まってか

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                                • 「反穀物の人類史」 「定住」は「農耕」に直結しなかった 朝日新聞書評から|好書好日

                                  ISBN: 9784622088653 発売⽇: 2019/12/21 サイズ: 20cm/232,42p 反穀物の人類史 国家誕生のディープヒストリー [著]ジェームズ・C・スコット 通常、人類の定住と穀物栽培の開始が、国家の誕生を促したと考えられている。「国家誕生のディープ・ヒストリー」を論じた本書は、第一に、そのような定説を否定する。たとえば、最初に発見された作物栽培と定住コミュニティの遺跡はおよそ一万二〇〇〇年前のものであったが、メソポタミアのティグリス川とユーフラテス川の流域に見いだされた最古の国家の遺跡は、紀元前三三〇〇年ごろのものだ。つまり、作物栽培が始まってから、国家ができるまでに四〇〇〇年以上もかかっている。なぜか。 そもそも、人類は定住しても本格的な農耕には向かわなかった。それが重労働であったからだけではない。さまざまな疫病、寄生虫など多くの障害をもたらしたからだ。実際

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                                  • 「憑依と抵抗」 社会主義後に「活性化」した呪術 朝日新聞書評から|好書好日

                                    「憑依と抵抗」 [著]島村一平 表題の「憑依(ひょうい)と抵抗」は、著者による、“宗教とナショナリズム”のモンゴル的表現である。本書は、それらを切り口に、現代モンゴルを多角的に描いている。そこに、大草原の素朴な遊牧民というイメージは見出(みいだ)されない。今日モンゴルは熾烈(しれつ)な競争社会で、遊牧民は人口の1割以下、人口の半数近くが首都に住む。 私は7年前にこの書評欄で、共同研究『現代アジアの宗教 社会主義を経た地域を読む』を取り上げ、モンゴルにおけるシャーマニズムの流行について論じた章が印象的だったと書いた。そこでは、今世紀、鉱山開発などによりモンゴル経済が急成長を遂げ、格差や環境汚染が拡(ひろ)がったが、それと同時にそれまで辺境のマイノリティーのものだったシャーマンが都市部にあらわれ、爆発的に増加したことが書かれていた。本書を読み始めて、それが同じ著者のものだったと気づいた。しかし

                                      「憑依と抵抗」 社会主義後に「活性化」した呪術 朝日新聞書評から|好書好日
                                    • 『中国の「よい戦争」』 「道徳的に公正な国」という物語 朝日新聞書評から|好書好日

                                      中国の「よい戦争」 甦る抗日戦争の記憶と新たなナショナリズム 著者:ラナ・ミッター 出版社:みすず書房 ジャンル:社会思想・政治思想 『中国の「よい戦争」』 [著]ラナ・ミッター 戦争を肯定的になど捉えられるはずがない。しかし、アメリカでは第2次世界大戦がヨーロッパとアジアを解放した「よい戦争」として記憶され、中国の習近平国家主席は抗日戦争を、「日本軍国主義が中国を植民し奴隷化しようとした企(たくら)み」を粉砕した「偉大な勝利」であり、「民族の恥辱を洗い流し、わが国の世界における大国の地位をあらためて確立した」と誇らしく宣伝する。 冷戦期、中国の公的な歴史は共産主義的、革命的、反帝国主義的なナラティブ(物語)が中心だったのに対して、経済的に成功した中国共産党政権は、中国を第2次世界大戦で「勝利を収めた強国」かつ「道徳的に公正な国」と位置付けようとしていると、著者のラナ・ミッターは指摘する。

                                        『中国の「よい戦争」』 「道徳的に公正な国」という物語 朝日新聞書評から|好書好日
                                      • R・ドーキンス「さらば神よ」他1冊 反進化論を問いただす信念と勇気 朝日新聞書評から|好書好日

                                        さらば、神よ 科学こそが道を作る 著者:リチャード・ドーキンス 出版社:早川書房 ジャンル:自然科学・科学史 さらば神よ 科学こそが道を作る [著]リチャード・ドーキンス/ダーウィン『種の起源』を漫画で読む [文]チャールズ・ダーウィン、[編・文]マイケル・ケラー、[絵]ニコル・レージャー・フラー リチャード・ドーキンスは『利己的な遺伝子』『神は妄想である』などの世界的ベストセラーで知られる進化生物学者だ。特に、自然界は人智を超えた「何者か」によって創造されたとするインテリジェント・デザイン説を痛切に批判し続けている。本書は、高校生から大学生程度の若者を念頭に、時にユーモアを交えながら、宗教の非科学性を一刀両断にする。 第1部「さらば、神よ」では、聖書にちりばめられた非論理性記述に厳しくツッコムことで、それらを無批判に受け入れる危険性を指摘する。聖書を原理主義的に信じる人がほとんどいない日

                                          R・ドーキンス「さらば神よ」他1冊 反進化論を問いただす信念と勇気 朝日新聞書評から|好書好日
                                        • 「五・一五事件」 不気味なテロを俯瞰 新たな分析 朝日新聞書評から|好書好日

                                          五・一五事件 海軍青年将校たちの「昭和維新」 (中公新書) 著者:小山俊樹 出版社:中央公論新社 ジャンル:新書・選書・ブックレット 五・一五事件 [著]小山俊樹 二・二六事件(1936年)に比べて、五・一五事件(32年)に関する評論や研究書は極端に少ない。なぜだろう。昭和史研究の先達、例えば『現代史資料』を編んだ高橋正衛は、この事件を直前に起こった血盟団事件の延長ととらえた上で、「感性主体の〝捨て石〟というテロの不気味さを抱えているから」(私への直話)との見方を示している。 昭和のファシズム体制は、昭和8(1933)年に始まったと私は考えている。五・一五事件の被告をめぐる減刑嘆願運動や政党政治の崩壊、国際連盟脱退、さらに共産党幹部の転向趣意書といった史実をつなぎ合わせると、まさに超国家主義を生む「伝統的『国体』思想の急進化」(山口定『ファシズム』)の芽がうかがえるのだ。民主主義の成熟が薄

                                            「五・一五事件」 不気味なテロを俯瞰 新たな分析 朝日新聞書評から|好書好日
                                          • 「不戦条約」 憲法9条と1条のつながり示唆 朝日新聞書評から|好書好日

                                            ISBN: 9784130301688 発売⽇: 2020/03/03 サイズ: 20cm/270,11p 不戦条約 戦後日本の原点 [著]牧野雅彦 「不戦条約」とは、1929年日本で「戰爭抛棄(せんそうほうき)ニ關(かん)スル條約(じょうやく)」として批准された国際条約である。それは、締約国は、国際紛争解決のため戦争に訴えない、また、その相互関係において、国家の政策の手段としての戦争を放棄する、という協定である。しかし、これは当初から実行されないまま第二次大戦にいたった。戦後においても同様であったが、実は、不戦条約はある所で蘇生した。戦後日本の憲法九条がそれである。九条は、たんに〝占領軍による押しつけ〟なのではない。それは、かつて日本もアメリカも批准していた「不戦条約」の復活であった。 そもそも米国は、大統領ウィルソンが第一次大戦後、国際連盟を提唱し組織しながら、「モンロー主義」の伝統ゆ

                                              「不戦条約」 憲法9条と1条のつながり示唆 朝日新聞書評から|好書好日
                                            • 「評伝クリスチャン・ラッセン」/「とるにたらない美術」 美術に見下された者たちの逆襲 朝日新聞書評から |好書好日

                                              とるにたらない美術 ラッセン、心霊写真、レンダリング・ポルノ 著者:原田 裕規 出版社:ケンエレブックス ジャンル:芸術・アート 「評伝クリスチャン・ラッセン」 [著]原田裕規/「とるにたらない美術」 [著]原田裕規 ラッセン、と切り出して今どれだけの読者が具体的なイメージを持つのだろう。イルカたちが楽園のような海で自由に泳ぐ様を描いた画家、と書いても知らない人にはわからないかもしれない。けれども、ひと頃の日本でラッセンの絵が一世を風靡(ふうび)したのは紛れもない事実だ。 だからこそ意外に思う人がいるかもしれないけれども、日本の美術界でラッセンは長く不評を買ってきた。しかも専門的な美術関係者ほどそうだった。一時、問題視された強引とも受け取られかねないセールス手法に限らない。絵の内容そのものがはなから評価に値しないというのだ。 なぜ?と感じる人もいるだろう。多くの人が見てハッピーになる絵のど

                                                「評伝クリスチャン・ラッセン」/「とるにたらない美術」 美術に見下された者たちの逆襲 朝日新聞書評から |好書好日
                                              • 「ウクライナ動乱」 いつかくる戦後を考えるために 朝日新聞書評から|好書好日

                                                ウクライナ動乱 ソ連解体から露ウ戦争まで (ちくま新書) 著者:松里 公孝 出版社:筑摩書房 ジャンル:新書・選書・ブックレット 「ウクライナ動乱」 [著]松里公考 これまで、ロシアによるウクライナ侵略の原因については、多くの分析が行われてきた。だが、仮にウクライナが自国の防衛に成功したとして、その後はどうなるのだろうか。この問いに答えるには、ウクライナ国内の状況を知る必要がある。本書は、ウクライナ政治研究の第一人者が、この戦争の歴史的な背景を解説した作品だ。その特徴は、ソ連解体以後、ロシアとNATOの対立とは異なる論理で、ウクライナ国内でも分離紛争が生じた経緯を描く点にある。 この紛争の起源の分析は実に興味深い。今日では、ロシア語話者の多い東部・南部とウクライナ語話者の多い西部の民族的な対立が強調されがちだが、それは後から生じた対立にすぎないと著者は言う。むしろ、根本的な問題は経済だ。元

                                                  「ウクライナ動乱」 いつかくる戦後を考えるために 朝日新聞書評から|好書好日
                                                • 「なぜ鏡は左右だけ反転させるのか」 身近で古典的な謎に挑む楽しさ 朝日新聞書評から |好書好日

                                                  「なぜ鏡は左右だけ反転させるのか」 [著]加地大介 加地さん、ごぶさたしています。2003年に『なぜ私たちは過去へ行けないのか』という著書をいただいたのですが、そのとき私は、だって過去なんだもの行けるわけないじゃんと、読まないままにしていました。すいません。愚かでした。今回、かつて後半にあった鏡の謎を前半にもってきて、過去の謎を後半へと入れ替え、増補・改訂版として出されたので、ようやく読ませてもらいました。 まず、なぜ鏡は左右だけ反転させるのかという問題に、マーティン・ガードナーの説明が紹介され、私は加地さんとともになるほどーと思い、でも、と加地さんが考え直してまだこれじゃだめでしょと論じるところでそうだよなーと思い、続いてネッド・ブロックの議論が紹介され、私は加地さんとともになるほどーと思い、でも、と加地さんが考え直してまだだめでしょと論じるところでそうだよなーと思い直すという、いわば脳

                                                    「なぜ鏡は左右だけ反転させるのか」 身近で古典的な謎に挑む楽しさ 朝日新聞書評から |好書好日
                                                  • 「アニメ大国建国記 1963-1973」「東映動画史論」 トリビアも実証も 文化の深みへ 朝日新聞書評から|好書好日

                                                    アニメ大国建国紀1963−1973 テレビアニメを築いた先駆者たち 著者:中川右介 出版社:イースト・プレス ジャンル:ゲーム・アニメ・サブカルチャー アニメ大国建国記 1963-1973 テレビアニメを築いた先駆者たち [著]中川右介/東映動画史論 経営と創造の底流 [著]木村智哉 子どものころ「アトムシール」を集めるのに夢中になった世代もいまや高齢者に仲間入りしつつある。かくいう評者もそのひとりだが、『アニメ大国建国紀』はそんな読者をあたかもタイムマシンのように過去へ連れ戻してくれる。 なにしろページを繰るたび、どのテレビアニメにも覚えがある。「鉄腕アトム」「鉄人28号」「エイトマン」「スーパージェッター」「狼(おおかみ)少年ケン」「少年忍者 風のフジ丸」……いずれも主題歌を口ずさむことさえできそうだ。 しかしこれらの番組がどんな条件下で制作され、いかに競いながらなにを残したかについて

                                                      「アニメ大国建国記 1963-1973」「東映動画史論」 トリビアも実証も 文化の深みへ 朝日新聞書評から|好書好日
                                                    • 「万物の黎明」 西洋の中心で文明観の反省迫る 朝日新聞書評から|好書好日

                                                      ISBN: 9784334100599 発売⽇: 2023/09/21 サイズ: 21cm/643,55p … 「万物の黎明」 [著]デヴィッド・グレーバー、デヴィッド・ウェングロウ 数年に一度、人類史の全体像を提示する本が現れ、国際的なベストセラーとなることがある。原書が2年前に英語で刊行された本書も、その一冊だ。副題を見て『サピエンス全史』のような本を思い浮かべるかもしれないが、その印象は裏切られるだろう。人類学者と考古学者の手で書かれた本書は、このジャンルの前提に正面から挑戦する。 その前提とは、人間社会が一定のパターンに沿って進化するということだ。典型的には、小規模で平等な狩猟採集社会が、定住農耕による生産力の向上を経て、階級格差を伴う大規模な国家へと発展する。 本書によれば、こうした思考は西洋人の偏見にすぎない。近年の考古学は、農耕が始まる前に巨大な都市が築かれたことを示す遺跡な

                                                        「万物の黎明」 西洋の中心で文明観の反省迫る 朝日新聞書評から|好書好日
                                                      • 「アメリカ社会の人種関係と記憶」/「ホワイト・フラジリティ」 制度化された差別 内側から抉る 朝日新聞書評から|好書好日

                                                        ISBN: 9784779127564 発売⽇: 2021/05/19 サイズ: 22cm/350,49p 「アメリカ社会の人種関係と記憶」 [著]樋口映美/「ホワイト・フラジリティ」 [著]ロビン・ディアンジェロ 去る1月6日の米連邦議会襲撃事件の衝撃的な光景を前に、歴史家の脳裏には既視感がよぎった、というと奇異に過ぎるだろうか。 実は米国史上、白人集団による人種暴力の例は珍しくない。南部で頻発した黒人リンチはむろん、中部のオクラホマ州でも百年前、「黒人のウォール・ストリート」と呼ばれたタルサ市中の豊かな商業区が数千の白人暴徒に焼き打ちされ、街は消滅して人々は離散。事件は闇に葬られたが、先ごろバイデン大統領が現地で追悼し、やっと一般にも知られたのである。 そんな「忘れられた」歴史の一面に、より深い光を当てるのが『アメリカ社会の人種関係と記憶』である。 19世紀末の米国は地方政治を舞台に「

                                                          「アメリカ社会の人種関係と記憶」/「ホワイト・フラジリティ」 制度化された差別 内側から抉る 朝日新聞書評から|好書好日
                                                        • 「すべての月、すべての年」 細部にまで満ちる著者の気配 朝日新聞書評から|好書好日

                                                          「すべての月、すべての年」 [著]ルシア・ベルリン 二〇一五年にアメリカで再編刊行された「A Manual for Cleaning Women」に収められた四十三篇(ぺん)の内、二十四篇が前作の『掃除婦のための手引き書』に、残りの十九篇が本書に収録されている。完結編と言っても良いだろう。 前作に引き続き、オートフィクション(自伝的小説)とも呼べるような、著者の気配が濃厚に漂う短編集だ。それぞれの短編は完結しているが、ベラ・リン、サリー、コンチ、ベンなどたびたび登場する人物もおり、連作短編のように読めなくもない。一人称のものもあれば三人称のものもあり、著者を彷彿(ほうふつ)とさせる主人公のものもあれば、別の人の視点から著者を彷彿とさせる脇役を描いているもの、一人称多視点のものもある。 などと分類しようとするのが馬鹿馬鹿しくなるくらい、本書は「どこからどこまででも好きに読みな」と言わんばかり

                                                            「すべての月、すべての年」 細部にまで満ちる著者の気配 朝日新聞書評から|好書好日
                                                          • 「ルー・リード伝」 米で酷評の曲も東欧で革命の力 朝日新聞書評から|好書好日

                                                            「ルー・リード伝」 [著]アンソニー・デカーティス ニューヨークを象徴するロック・ミュージシャン、ルー・リードは2013年10月27日に亡くなった。まもなく没後10年を迎える。リードはジャーナリストを嫌い、まともに対応しないことも多かった。本書は生前にリードからの信頼を得たジャーナリストによる本格的な評伝だが「この本をルーが生きているうちに書いていたら、まちがいなく彼は二度とわたしに口をきいてくれなかっただろう」と語っている。だが、本書のおかげで初めてリードの生涯にまつわる詳細が明らかになった。 リードは最初、ポップアートの旗手、アンディ・ウォーホルがプロデュースしたロック・バンドのアルバム「ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ」の歌手として1960年代に世に出た。バンドは耳を擘(つんざ)くようなサウンドもさることながら、リードの書いた歌詞によって悪評を得た。当時のポップ・

                                                              「ルー・リード伝」 米で酷評の曲も東欧で革命の力 朝日新聞書評から|好書好日
                                                            • 「国家の命運は金融にあり」(上・下) 相場師転じて真人間 流転の人生 朝日新聞書評から |好書好日

                                                              「国家の命運は金融にあり」(上・下) [著]板谷敏彦 「コレキヨ」さん、やはり面白かった。読み進めるうち、やがて楽しく、そして哀(かな)しい気分になった。経済人が書いた伝記小説で読みやすい。色々なことに携わったコレキヨの多面性を、エコノミスト連載の形で一つ一つわかりやすく取り上げる。どこからでも気軽に読めるのだ。 実はコレキヨの理解を難しくしているのは、『高橋是清自伝』という口述本(これが抱腹絶倒の面白本)があるからだ。著者も注意深く指摘しているように、コレキヨ自らの語りの中に、我々は手もなくうっちゃられてしまうからだ。生まれてこの方、コレキヨは英語に取りつかれ、若いころにアメリカにやられる。これ自体まっとうではない。 「帰国して教師、落ちぶれて芸者のヒモ、相場師」と著者が述べるように、若くしてロクなものじゃない人生を送る。やがて後の特許庁の役人となり、日本の特許制度を作り上げる。何と相場

                                                                「国家の命運は金融にあり」(上・下) 相場師転じて真人間 流転の人生 朝日新聞書評から |好書好日
                                                              • 「賃労働の系譜学」/「賃金破壊」 壊れた社会で働く者を守るには 朝日新聞書評から|好書好日

                                                                ISBN: 9784791773947 発売⽇: 2021/11/26 サイズ: 19cm/323,10p 「賃労働の系譜学」[著]今野晴貴/「賃金破壊」[著]竹信三恵子 コロナ禍も、はや3年目。日々の労働はテレワークの増加などで不可逆的に変わりつつある。この事態にどう向き合うべきか。『賃労働の系譜学』は、働く者の立場で真正面から答える。かつて「ブラック企業」の問題を広く認知させた著者が、労働問題の対策から一歩進み、日本資本主義の現状分析と変革への展望を語る。 生産と雇用を拡大させ、成果の分配で社会を統合する「フォーディズム」の体制には、コロナ禍以前から根本的な変化が兆していた。デジタル化やAIの技術革新によって、労働が富の源泉にならず、経済規模は容易に拡大しない。富裕層による富の収奪が、経済活動の中心となる社会の到来。それが「デジタル封建制」たる所以(ゆえん)だ。 ならば日本でデジタル化

                                                                  「賃労働の系譜学」/「賃金破壊」 壊れた社会で働く者を守るには 朝日新聞書評から|好書好日
                                                                • 「大学という理念」 教師・学生の共同体と「場」の未来 朝日新聞書評から|好書好日

                                                                  ISBN: 9784130530927 発売⽇: 2020/09/29 サイズ: 19cm/266,4p 大学という理念 絶望のその先へ [著]吉見俊哉 本書は、著者が長年取り組んできた、日本における大学の諸問題に関する論考を集めたものである。その題が「大学の理念」ではなく、「大学という理念」であることに注意すべきだろう。つまり、大学がそれ自体、理念なのだ。たとえば、西欧では、大学は、封建社会の「間」にあった自由都市において、封建諸勢力に対抗する教師と学生の協同組合として生まれた。つまり、大学(ウニベルシタス)は「組合」という意味である。 一方日本では、古来大学は、外国の先進的な学問や技術を教え、国家を運営するエリートを育成する性格のものだった。日本の大学体制は、当初は唐の学問(儒学)を規範にしていたが、薩長新政府のもとでは国学に傾き、明治維新以降は欧州各国を、第二次世界大戦後には米国を規

                                                                    「大学という理念」 教師・学生の共同体と「場」の未来 朝日新聞書評から|好書好日
                                                                  • 「数学に魅せられて、科学を見失う」 真理求め悩む研究者が重ねた対話 朝日新聞書評から|好書好日

                                                                    数学に魅せられて、科学を見失う 物理学と「美しさ」の罠 著者:ザビーネ・ホッセンフェルダー 出版社:みすず書房 ジャンル:物理学 「数学に魅せられて、科学を見失う」 [著]ザビーネ・ホッセンフェルダー 物理学は自然科学のなかでも、もっとも高度に進んだ分野だ。その最大の理由は、数学による記述が驚くほど有効だからである。のみならず、不思議なことに根源的物理法則はただ難解で複雑なだけでなく、ある種の「美しさ」を備えた数学で書かれているらしい。 それがなぜかはわからない。この世界の振る舞いが、完全に数学で書き尽くせる保証はないし、ましてやそれが人間の美的感覚と一致しているのは奇妙だ。 これまでの素粒子物理学は、数学的美しさを指導原理として、目覚ましい発展を遂げてきた。現在の素粒子標準模型は、それ以上分割できない素粒子25種類がこの世界のすべてだと考える。 最後まで未発見だったヒッグス粒子は2012

                                                                      「数学に魅せられて、科学を見失う」 真理求め悩む研究者が重ねた対話 朝日新聞書評から|好書好日
                                                                    • 「場所からたどるアメリカと奴隷制の歴史」/「性的人身取引」 覆される解放神話、暴かれる闇 朝日新聞書評から|好書好日

                                                                      「場所からたどるアメリカと奴隷制の歴史」 [著]クリント・スミス/「性的人身取引」 [著]シドハース・カーラ どちらも読後に世界の景色が一変する。奴隷制は終わってなどいないのだ。とりわけ現代も2840万人の奴隷が世界中で迫害にさらされていることに、読者は放心するだろう。 奴隷の末裔(まつえい)である詩人C・スミスは、アメリカやセネガルの奴隷制に関わる場所を訪れ、話を聞き、彫琢(ちょうたく)された文章で奴隷解放の神話を覆していく。「すべての人間は生まれながらにして平等」と独立宣言に執筆した第3代アメリカ大統領のジェファーソンは、奴隷制に一定の嫌悪感を持っていたとはいえ奴隷を607人所有するプランターだった。しかも、奴隷を家族にプレゼントし、奴隷の親子を切り離し、奴隷女性を妾(めかけ)として囲い、奴隷に鞭(むち)を振るった。なお、奴隷解放令を宣言したリンカーンも、黒人と白人の政治的平等への実現

                                                                        「場所からたどるアメリカと奴隷制の歴史」/「性的人身取引」 覆される解放神話、暴かれる闇 朝日新聞書評から|好書好日
                                                                      • 「量子力学の奥深くに隠されているもの」 異なる宇宙ですべてが実現する 朝日新聞書評から|好書好日

                                                                        量子力学の奥深くに隠されているもの コペンハーゲン解釈から多世界理論へ 著者:ショーン・キャロル 出版社:青土社 ジャンル:物理学 量子力学の奥深くに隠されているもの コペンハーゲン解釈から多世界理論へ [著]ショーン・キャロル 自然界の物質はすべて素粒子からなっている。これは現代物理学が導き出した重要な結論だ。 一方で、物理学の基礎たる量子力学によれば、微視的世界は波動関数と呼ばれる一種の波の重ね合わせで記述される。そしてこの波動関数は物質の空間分布そのものではなく粒子の存在確率分布を表すもので、観測をした瞬間に確率の波が収縮して粒子的に振る舞うのだという。直感とは相いれないこの意味不明の説明が、標準的教科書にある量子力学のコペンハーゲン解釈だ。そもそも「解釈」という単語からして何やら怪しい。しかし、あえてそこに深入りしない限り、量子力学はあらゆる実験と無矛盾な優れた理論なのだ。 著名な

                                                                          「量子力学の奥深くに隠されているもの」 異なる宇宙ですべてが実現する 朝日新聞書評から|好書好日
                                                                        • 「世界一やさしい依存症入門」 苦しむ10代へ共感のメッセージ 朝日新聞書評から|好書好日

                                                                          世界一やさしい依存症入門 やめられないのは誰かのせい? (14歳の世渡り術) 著者:松本 俊彦 出版社:河出書房新社 ジャンル:生活 「世界一やさしい依存症入門」 [著]松本俊彦 「ダメ。ゼッタイ。」。30年以上前から使われているこの薬物乱用防止の標語に異を唱え、精力的に社会発信を続ける精神科医が「14歳の世渡り術」シリーズとして書き下ろした。自身、周囲に劣等感を抱き、苦しんだ10代には二度と戻りたくないといい、こうした経験が若い世代へのメッセージとして生きている。依存症が起きる仕組みや背景を理解する格好の入門書でもある。 薬物、酒、ゲーム、万引きに至るまで、依存症の形態は多種多様だ。リストカットのような自傷行為や摂食障害もまた似た側面を持っている。むろん犯罪は明確に区別して考える必要があるが、病気という視点でみれば変わりない。 脳の働きを活性化させるアッパー系と、逆に抑えるダウナー系の薬

                                                                            「世界一やさしい依存症入門」 苦しむ10代へ共感のメッセージ 朝日新聞書評から|好書好日
                                                                          1

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