鹿児島に「からいも普通語」という言葉があります。からいもとはサツマイモ、普通語とは共通語のことで、方言まじりの共通語を話す人をからかってこういうそうです。井上史雄・東京外国語大名誉教授(社会言語学)は「社会方言学論考」(明治書院)で、愛媛などに伝わるこれに相当する言葉として「箱根越えずの東京弁」を紹介します。 地元に戻ってまで東京弁を話すことはさておき、筆者の大学時代の経験でいうと、東京に進学した人が東京言葉を使いこなすのは珍しくありません。過去もそうだったようで、「国語学史 日本人の言語研究の歴史 新装版」(馬渕和夫・出雲朝子著、笠間書院)は室町時代の書から「関東や九州の方言を話す人も、京都に詰めていると京都の言葉を話せるようになる」という記述を紹介します。