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  • オリンピックが時代に取り残されたままならば「終焉の時」が迫っている | IOCは社会の変化についていこうとしなかった

    2年ほど前のある真夜中のことだ。観光名所として知られる浅草寺という都内最古の仏寺の近くに工事作業員が集まっていた。通りはがらんとしていて、辺りは蒸し暑く、作業員たちは雨が降らないことを願っていた。ガタガタと音を鳴らしながら機械が動きはじめた。 ほとんど誰も気づきもしない些事ではあった。だが、そこに示されていたのは世界最大のスポーツの祭典のために、ときとして不毛で茶番でしかないことが繰り広げられる実例に他ならなかった。 日本の7~8月の熱中症による死亡者数は2018年も2019年も1000人を超え、東京で開かれた五輪のテスト大会でも体調を崩すアスリートが続出し、競技のコース距離の変更が迫られる事態も生じていた。五輪本番を見据えた思い切った対策が必要だった。 その対策の一つが冒頭の工事だった。42.195キロのマラソンコースに太陽光を反射させる光沢のある塗装を施し、熱を跳ね返そうというわけだ。

      オリンピックが時代に取り残されたままならば「終焉の時」が迫っている | IOCは社会の変化についていこうとしなかった
    • “生みの親”であるサム・アルトマンが語る「ChatGPTがこの世界に誕生するまで」 | 仕事は「開発」と「ディストピア」の綱渡り

      仕事は「開発」と「ディストピア」の綱渡り “生みの親”であるサム・アルトマンが語る「ChatGPTがこの世界に誕生するまで」 ChatGPTの生みの親であるサム・アルトマンは、AI抜きでは人々が「少し自分に何か欠けている感じ」がする未来を想像する Photo: Clara Mokri for The Wall Street Journal サム・アルトマンが備える絶妙なバランス感覚 人工知能(AI)ブームの最前線に立つ米新興企業オープンAIのサム・アルトマン氏(37)は、コンピューターが人間のように会話し、学習する未来を長い間夢見てきた。 米ミズーリ州セントルイス郊外にある自宅の寝室で、8歳の誕生日に買ってもらったアップルのパソコン「マッキントッシュLC II」で夜遅くまで遊んでいたとき、ふと気づいた。「いつの日か、コンピューターが考えるようになる」と。 アルトマン氏が率いるオープンAIは

        “生みの親”であるサム・アルトマンが語る「ChatGPTがこの世界に誕生するまで」 | 仕事は「開発」と「ディストピア」の綱渡り
      • 韓国人ジャーナリストが米紙に寄稿「憎めと教えられた国、日本が私は大好きだ」 | 徴用工、慰安婦…「反日」の呪縛から解かれるとき

        1990年代初め、韓国で少年時代を過ごしていた私は、母から全60巻の伝記シリーズをもらった。その半分は、ブッダやリンカーン、キュリー夫人など世界の偉人で、残りの半分は韓国人だった。 そうした韓国人の大半にはある共通点があった。彼らは、日本に抵抗したことで知られる人たちだった。 私は母に、なぜもっと他の理由で記憶されるべき韓国人がいないのか聞いてみた。答えはこうだった。 「日本との戦いこそが韓国の歴史だからでしょう」 韓国人は何十年もの間、日本が朝鮮半島を植民地支配していた時代(1910~1945年)から前に進めずにいる。日本による強引な占領、労働者の強制徴用、「慰安婦」と呼ばれた性奴隷──これらの事柄がまるで国を挙げた洗脳のように繰り返し唱えられてきた。 だが、こうした不健全な感情はもう手放すべき時に来ている。韓国は日本と多くを共有している。両国とも近代民主主義国家であり、目覚ましい経済成

          韓国人ジャーナリストが米紙に寄稿「憎めと教えられた国、日本が私は大好きだ」 | 徴用工、慰安婦…「反日」の呪縛から解かれるとき
        • 英紙が指摘「日本は内部通報者の保護を強化するべきだ」 | 日本では告発をすると罰則が…

          不完全なホットライン 日本の芸能界最大の性暴力スキャンダルが明るみに出た1ヵ月後の2023年4月、問題の芸能事務所は遅ればせながら、被害者が訴え出るための内部告発ホットラインを設置した。 だが、このホットラインには大きな欠陥があった。その利用対象者は旧ジャニーズ事務所(現スマイルアップ)の従業員だけ、つまり、創業者の故ジャニー喜多川から虐待を受けていた可能性のある何百人もの旧ジャニーズ事務所に所属した男性芸能人には、その新たな仕組みを利用して被害を申し出る資格がなかったのだ。 スマイルアップが委任した外部専門家から成る調査委員会によれば、このホットラインの運用上の瑕疵は、同事務所の内部統制における数多くの重大な欠陥の一つに過ぎない。同事務所の内部統制の不備は、2019年に亡くなった喜多川が、1950年代に初めて疑惑が浮上して以来、性的虐待を重ねる事態を招いた。

            英紙が指摘「日本は内部通報者の保護を強化するべきだ」 | 日本では告発をすると罰則が…
          • 悲しむ人を慰める最善の方法とは? 最新の心理学研究から見えてきたこと | 動揺する家族や友人を助けたい人のための指針

            友人やパートナーや家族、あるいは同僚が動揺しているとき、相手の気持ちを楽にしてあげるにはどうするのがベストかと、考えたことがあるだろう。 愚痴ってもらう? チョコレートをあげる? 思いきり泣けるよう、そっとしておく? 理想的なやり方は、相手と文脈によると専門家らは言う。だが、人の気持ちを落ち着かせる最強の方法のひとつが、限られた数ながらも近年増えている研究から示されている。それは、話しかけることだ。 言葉は、人の気持ちを方向づけるうえで強力な役割を果たす。人間はそれだけ社会的な動物種なのだ。 人の脳は他者から得る情報に鋭敏に同調し、「その情報を絶えず意見として用いて、行動と反応を変えています」と言うのは、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校の心理学博士課程に在籍するラジア・サヒだ。彼女は、社会的な交流が人の感情にどう影響するのかを研究している。

              悲しむ人を慰める最善の方法とは? 最新の心理学研究から見えてきたこと | 動揺する家族や友人を助けたい人のための指針
            • 核戦争に備えるキーウ市民の「核リュックサック」の中には何が入っているのか? | ラジオ、保温下着、おもちゃ、栓抜き…

              5歳の子供まで核リュックを背負って外出 ウクライナの首都キーウ(キエフ)に核爆弾が落とされた場合、セルヒー・ドミトラックが最も恐れているのは、爆風を逃れても飢えや渇き、寒さで死んでしまうことだ。そこで彼は、1週間分の食料とサバイバル用品を詰め込んだ、本人曰く「核リュックサック」を準備している。 パブロ・フクも同じような持ち出し袋を用意している。自宅と職場の地下室には装備を施し、郊外に発電機や食料、燃料を備蓄するための家を借りた。彼の心配は、この脅威を甘く見ている友人や親戚が、同様の予防策をとらなかったために命を落としてしまうことだ。 ナタリア・スリマは、5歳の息子ミーシャと離れ離れになることだけが心配で、サイレンが鳴ったら大人について避難所に行くことが大事だと教え込んでいる。息子専用の核リュックには、トランスフォーマーのおもちゃ、おやつ、お気に入りの本『竜と暮らした少年』が詰め込んであり、

                核戦争に備えるキーウ市民の「核リュックサック」の中には何が入っているのか? | ラジオ、保温下着、おもちゃ、栓抜き…
              • 「どれだけ軽い症状でも、新型コロナだと考えて行動を」医療崩壊の迫るNY救急医が警告 | 「どれだけ軽い症状でも、新型コロナだと考えて行動を」

                アメリカでは新型コロナウイルスの感染者が40万人を超えた。そのうちの約15万人を占めるニューヨーク州では4月8日、24時間の死者数が過去最多の779人に上った。医療崩壊寸前の現場で働く医師たちは、最善を尽くしても次々と失われていく命を前に、心身ともに疲弊しきっている。 そんななか最前線に立つひとりの医師が、米誌「アトランティック」に手記を公開している(3月27日付け)。彼がどうしても市民に理解してほしいと訴えたことは──。 他国の警告を聞かず、NYは地獄と化した 救急科の待合室では、発熱して不安を抱えている150人の患者が待っている。 そのなかにはただ検査を受けたいだけの者もいれば、治療を求めている重症患者もいる。よほど危険な状態でない限り、彼らは6時間から10時間待たなければ診察を受けられない。入院するためのベッドを確保するには1日以上かかるのが現状だ。 私は救急医だ。普段はマンハッタン

                  「どれだけ軽い症状でも、新型コロナだと考えて行動を」医療崩壊の迫るNY救急医が警告 | 「どれだけ軽い症状でも、新型コロナだと考えて行動を」
                • 親のSNSで晒されまくってきた子供たちが直面している「プライバシー問題」 | 若者はすべてを「共有しすぎる」ことを気にしている

                  可愛いから。バズるから。いいねがつくから──そんな理由で親がSNSに投稿した自分の子供時代の様子を、何千、何万もの人たちが見ている。本当なら見られたくない恥ずかしい思い出も、プライベートな情報も、親によって同意なく晒されている。こうした環境で育ってきたSNS世代の子供たちは、どんな思いをしているのだろうか。 私が赤ちゃんだったころの写真や動画は、例によって恥ずかしさ満載だ。オムツ一丁でよちよち歩きをしている写真や、食べ物を口に入れずに顔中に塗りたくっている動画が残っている。でも私の世代の場合、こうした黒歴史的な写真や動画は、両親の屋根裏部屋に置いてある紙のアルバムやビデオテープのなかに眠っている。 成長するなかで私はネットを使うようになり、MySpace(2004年に米国で始動したSNSサービス)にポエムつきの写真や、自作のミュージックビデオを投稿したりした。だがそれらは、2000年代初頭

                    親のSNSで晒されまくってきた子供たちが直面している「プライバシー問題」 | 若者はすべてを「共有しすぎる」ことを気にしている
                  • 英誌が選ぶ「性差別的な経済大国ニッポン」を理解するための6冊 | 性風俗ノンフィクションからイシグロ作品まで

                    先進国でありながらジェンダー平等に対する取り組みが遅れている日本は、欧米人の目には不思議に映るようだ。英経済誌が勧める「日本女性の本音に光を当てた6作品」は、当事者である私たちにも新たな気づきを与えてくれる。 「死ぬほど退屈」な日本の主婦 本誌「エコノミスト」は毎年、各国の労働における女性の役割と影響力を数値化した「ガラスの天井指数」を発表している。2022年の同指数によれば、調査の対象となった29ヵ国中、日本は28位だった。 世界経済フォーラムの2022年版「ジェンダーギャップ報告書」でも、日本は146ヵ国中116位だ。もっとも、この国の厳格な家父長制社会に慣れている日本人女性は、この結果にたいして驚かないかもしれない。 日本政府はかつて、「すべての女性が輝く社会」というスローガンを掲げた。だが、男性の影に隠れて生きる日本女性の姿を見ると、何とも皮肉な目標に聞こえる。 11世紀に『源氏物

                      英誌が選ぶ「性差別的な経済大国ニッポン」を理解するための6冊 | 性風俗ノンフィクションからイシグロ作品まで
                    • ピーター・ターチン「近い将来、米国が2つか3つの国に分裂する可能性は充分ある」 | 「米国のエリートは現状を理解していない」

                      ──どこかで読んだことがあるのですが、ビル・ゲイツと平均的な米国民の富を比較すると、西暦400年に最も金持ちだったローマ貴族と平民の富の差にだいたい等しいそうです。もしかしたらちょっと間違えて覚えているかもしれませんが、ともかく私が言いたいのは、これはとても許しがたい数字だということです。 その方法は私も使いますよ。ある年のトップの資産を平均年収と比較するのです。これもパターンを見出す方法のひとつですね。 ──そこで2020年前半の米国を見たとき、こうした指標が赤信号を示しているのがなぜなのか、教えていただけますか? エリートは過剰生産されています。あなたがおっしゃるところの「ウェルス・ポンプ」もあります。移民問題もあるし、政治の機能不全も問題です。

                        ピーター・ターチン「近い将来、米国が2つか3つの国に分裂する可能性は充分ある」 | 「米国のエリートは現状を理解していない」
                      • 「デート」が危機に瀕している─出会い系アプリに見切りをつけはじめた人々の“行き先” | 絶望して、削除して、またダウンロード

                        何がきっかけで彼と話しはじめたのかは覚えていない。記憶にあるのは、友人宅の屋上のソファーに2人で座っていたことと、そのソファーのフェイクレザーが私の太ももにへばりついていたことだけだ。 彼は私のタイプではなかった。ヴィンテージのフットボール・シャツにマレットヘア(サイドは刈り上げ、後ろ毛は長い)。まるでアートスクールの学生のようにも見えた。でも、それを補って余りあるほど面白い人だった。 私たちは上流階級の人と付き合うことの利点について話した。「彼らは常にいいレストランを知っているからね」と彼は言ってから、元カノに紹介されたという「いいピザ屋」に今度行こうと誘ってくれた。私が「ピザならどんなに高級でも、とてつもなく高くつくことはないからね」とおどけて言うと、彼は「その通り!」と言った。

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                        • 女性指揮者クレール・ジボー「『TAR/ター』の主人公が男性だったら、これほど衝撃的ではなかったはずだ」 | 現実のクラシック音楽界には、ジェンダーの壁が根強く残っている

                          クレール・ジボーは、男性優位のクラシック音楽界で、半生をかけて性差別と闘ってきた。彼女の次のターゲットは、男女間の賃金格差と年齢差別だ。 映画『TAR/ター』(日本公開は2023年5月12日〜)で注目が集まった「女性指揮者」。その先駆けとして活動してきたジボーが、インタビューで自らのキャリア、『TAR/ター』の感想、クラシック音楽界における性差別について語る。 ケイト・ブランシェットがタクトを振る強気な女性指揮者を演じ、アカデミー賞の複数部門にノミネートされ、世界的に大注目を集めている映画『TAR/ター』。この注目度の高さはおそらく、主人公の姿が斬新だからだろう──最近まで、指揮者という職業はほぼ男性が占めていたのだから。 一方、現実世界のフランス人指揮者クレール・ジボーは、業界にひそむジェンダーの壁と闘い続けてきた。2019年、ジボーはパリで女性指揮者の大会「ラ・マエストラ(La Mae

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                          • #132 中国政府も絶賛の日本人映画監督に漂う危うさ─外国人を利用してきた中国共産党の「宣伝工作」とは? | 中国・日本ニュース拾い読み

                            中国南京市在住の日本人ドキュメンタリー映画監督・竹内亮(42)の発言が、日中双方で物議を呼んでいる。中国の市井の人々の素顔を撮った作品が人気の竹内監督だが、中国共産党におもねり、中国を美化しているという批判が起こっているのだ。中国共産党にはこれまでも宣伝工作に外国人を多用してきた歴史があり、竹内監督の立場には危うさが漂っている。 日中双方で発言が物議 竹内監督は2020年6月、新型コロナウイルス感染症によるロックダウン(都市封鎖)解除直後で疲弊しきっていた湖北省武漢市に乗り込み、市井の人民の姿を活写した作品『好久不見、武漢(お久しぶりです、武漢)』を製作。同作はネットで大好評を博し、中国外交部(外務省)も「人民に近い視点で、気取らず、真実、善良さ、美しさに満ちている」と絶讃した。 だが彼は中国政府系メディア「鳳凰新媒体(フェニックス)」の5月17日公開インタビューで「日本人は中国を誤解して

                              #132 中国政府も絶賛の日本人映画監督に漂う危うさ─外国人を利用してきた中国共産党の「宣伝工作」とは? | 中国・日本ニュース拾い読み
                            • フランスの大企業の経営者が、大金を払って哲学者の講義を受ける理由 | アンドレ・コント=スポンヴィルが哲学で紐解くマネジメント

                              哲学者というのは誤解を恐れずに言うと「役に立たない人たち」だ。哲学者は社会のシステムを疑うのが仕事だが、現状の社会システムがうまく機能しているときにはお呼びがかからない。 しかし、いまはシステムそのものに問題が起きている。そんな現代にこそ哲学者が必要なのだ。これまでのモノサシが機能しない、そんなときに経営者は哲学者にヒントを求める。 「哲学」と「マネジメント」──。アンドレ・コント=スポンヴィルは、一見、相反する2つの分野を結び付ける。 この一年ほどは、感染症蔓延防止措置によって払われた犠牲の大きさを憂慮する発言をし、フランスの論壇で大きな存在感を発揮してきた。今回のインタビューでは、社会における仕事の役割や、これからの企業組織について話を聞いた。 若者を犠牲にした感染症対策が正しいとは思えない ──新型コロナウイルス感染症が引き起こした危機的状況をどう見ていますか。 慎重であろうと努めて

                                フランスの大企業の経営者が、大金を払って哲学者の講義を受ける理由 | アンドレ・コント=スポンヴィルが哲学で紐解くマネジメント
                              • 言語学習アプリ「デュオリンゴ」はいかにして“勝ち組”になったのか | ユニークな創業者の経歴と事業のアプローチ

                                創業者ルイス・フォン・アンの素顔 グアテマラで幼少期を過ごしたルイス・フォン・アンは、祖父母の経営するキャンディ工場によく顔を出していた。成長するにつれ、キャンディができあがるまでのプロセスに魅入られるようになっていった。「週末になれば工場に忍び込み、機械で遊んでいる、そんな少年でした」とフォン・アンは振り返る。「そして、今度は機械を分解し始めたのです」 ところがフォン・アン少年は機械を元に戻せなくなってしまい、とうとう工場を出入り禁止になってしまった。とはいえ彼はすでに、大切なことをいくつも学んでいた。そう、グミのクマの作り方だけでなく、安くて人気のある製品を作っている工場が赤字になってしまう理由も。「家族経営の機能不全について多くを学びました。どんなことをすれば企業がダメになってしまうのか、そのすべてを見たのです」とフォン・アンは語る。 フォン・アンは起業家になるつもりは決してなかった

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                                • 「ユダヤ教」はいつ生まれたのか? 新説を提示したイスラエルの考古学者に聞く | 「聖書に書かれていることだって、必ずしもそうとは限らない」?

                                  ユダヤ教はいつ生まれたのか? 伝承によれば、3000年以上も前にシナイ山で生まれた。聖書の最初の五書である律法(トーラー)に収められている十戒とその他もろもろの法を、神がモーセに授けたときだ。 大方の研究者はずいぶん前から、「出エジプト」とシナイ山での啓示を創設神話として片づけてきた。そのため、この最初の主要な一神教がいつ、どのように生じたのかという問いが残されている。さていま、その問いにまつわる新説が学界に衝撃を与えている。 紀元前2世紀になるまで、古代ユダヤ人が律法を守っていた、あるいはそもそも知っていたという歴史的・考古学的な証拠はないことが大規模な再調査からわかったと言うのは、イスラエルのアリエル大学で考古学を研究するヨナタン・アドラー教授だ。米イェール大学出版局から出版されたばかりの『ユダヤ教の起源』(未邦訳)の著者でもある。 そこから示唆されるのは、われわれがいま知るユダヤ教が

                                    「ユダヤ教」はいつ生まれたのか? 新説を提示したイスラエルの考古学者に聞く | 「聖書に書かれていることだって、必ずしもそうとは限らない」?
                                  • 米紙が見た、EV市場で苦闘する「トヨタの焦り」と「日本政府の楽観」 | 「車輪のついたiPhone」のような中国車の衝撃

                                    米アリゾナ州在住のレイチェル・キューリンは、トヨタの熱烈なファンだった。 信頼性が高く燃費のいい同社のハイブリッド車は、米国で何百万人もの人々に高く評価されており、キュリーンもそのひとりだった。 だが彼女は最近、愛車だったトヨタのプリウスを米ゼネラル・モーターズ(GM)の電気自動車(EV)シボレーボルトに買い替えた。トヨタのEVの販売があまりにも遅れているからだ。 「トヨタファンはどの車を選べばいいのでしょう? 本当に残念です」とキューリンは言う。 米中で失速するトヨタ トヨタはかつて、環境問題に関心を寄せるドライバーに最も人気の高いブランドだった。しかしながらいまは、消費者の嗜好の変化や、化石燃料の使用を大幅に削減しようとする各国政府の要求に応えられずにいる。 トヨタと日本の自動車業界は、80年代にグローバルな市場を席巻して以来、最大の経営課題に直面している。彼らがこれからも自動車業界の

                                      米紙が見た、EV市場で苦闘する「トヨタの焦り」と「日本政府の楽観」 | 「車輪のついたiPhone」のような中国車の衝撃
                                    • いま日本で消滅の危機に瀕している言語「ドゥナンムヌイ」を知っていますか | 歴史に翻弄され、抑圧されたり推奨されたりした結果…

                                      沖縄県与那国島で話されている「ドゥナンムヌイ」こと与那国語は、英語とドイツ語が違う言語であるように、日本語とは明確に異なる言語だと言われている。しかし、与那国語を話す人は現在、わずか数百人しか残っていない。英誌「エコノミスト」が、この言語の厳しい現状を取材した。 サンゴ礁に囲まれた日本の最西端、与那国島。池間龍一は、自身の母がこの地に建てた博物館、与那国民族資料館に立っていた。 大きな土器、手の込んだ籠、花柄の豪華な織物が陳列棚を埋め尽くしている。ある棚には、ボロボロになった本が飾られている。「ドゥナン(渡難)」として知られる地元の言語を保存するため、池間の母親が作った辞書だ。 池間本人も、この言語をいまなお話すことができる人間の一人だ。しかし、その数は減りつつある。 激動の歴史を生き延びてきた言語 与那国語は、琉球諸語と呼ばれる、琉球諸島で話される6つの言語のうちのひとつだ。沖縄を含む琉

                                        いま日本で消滅の危機に瀕している言語「ドゥナンムヌイ」を知っていますか | 歴史に翻弄され、抑圧されたり推奨されたりした結果…
                                      • グーグルやアマゾンの巨大テックから「暗号通貨スタートアップ」への転職が止まらない! | 「数十年に一度」のチャンスで頭脳の大流出!

                                        巨大テックの上級エンジニアたちが暗号通貨事業へ大移動 グーグルやアマゾン、メタ、マイクロソフトなどの“ビックテック”から、技術系幹部やエンジニアたちの流出が相次いでいると、「ニューヨーク・タイムズ」が報じている。 彼らの次の行き先は、暗号通貨関連の事業だ。 シリコンバレーにおいて、暗号通貨は「2017年頃から“投資先”として注目を集めていた。だが、今では新たな“参入先”として熱い視線が注がれている」。 今の暗号通貨関連の事業は「1990年代のインターネットのそれと似ている。スピーディーで、混沌としていて、それでいてチャンスに満ちている」と、検索エンジン企業「ニーヴァ」のCEOスリダール・ラマスワミーは、同紙に語っている。

                                          グーグルやアマゾンの巨大テックから「暗号通貨スタートアップ」への転職が止まらない! | 「数十年に一度」のチャンスで頭脳の大流出!
                                        • 黒人の精子が一瞬で完売する理由──なぜ黒人ドナーの争奪戦が起きているのか | アメリカの黒人女性が強いられる苦渋の選択

                                          アメリカでは妊娠を望む黒人女性が急増しているが、黒人の精子ドナーが圧倒的に不足している。精子バンクに登録する黒人男性は少ない理由、そして精子提供者を必要とする黒人女性が強いられる苦渋の選択とリスクに、米紙「ワシントン・ポスト」が迫った。 精子バンク登録の黒人ドナーは2%未満 リース・ブルックスは毎晩午前1時過ぎ、女性刑務所の看守としての勤務を終えた後、ノートパソコン2台と携帯電話、タブレット端末を開く。そして精子バンクのウェブサイトにアクセスしてくまなく目を通し、タブを何十枚も開けていく。 サイトには何百人もの精子ドナー候補者が表示され、映画スター級の容姿や身長、趣味などを選択できる。しかし、「黒人」や「アフリカ系アメリカ人」でフィルターをかけると、選択肢はあっという間に狭まった。 精子バンクはブルックスに母になるチャンスを与えてくれたが、彼女が望んだものは提供してくれなかった。それは、自

                                            黒人の精子が一瞬で完売する理由──なぜ黒人ドナーの争奪戦が起きているのか | アメリカの黒人女性が強いられる苦渋の選択
                                          • 日本で地熱発電が普及しない「本当の理由」 世界3位の地熱資源大国だが… | なぜ純国産エネルギーを利用しないのか?

                                            日本には膨大な地熱エネルギーが眠っているが、不可解なことに、その豊富な資源はまったく生かされていない。なぜ安価でクリーンな純国産エネルギーを開発しないのか。米紙「ニューヨーク・タイムズ」が答えを探ってみると、日本ならではの葛藤が見えてきた。 総発電量のわずか0.3% 日本を旅する人々に愛される保養地といえば、山あいや風光明媚な沿岸部に位置する温泉リゾートだ。国内に何千ヵ所もある温泉地のなかには、何世紀にもわたって観光客でにぎわってきたところもある。 そうした温泉地のすべてを支えているのが、日本の豊富な地熱エネルギーだ。実際、日本の地下には膨大な地熱エネルギーが眠っており、発電に利用されれば、国内の石炭・ガス火力発電や原子力発電に代わる重要な役割を果たす可能性がある。 だが、地熱エネルギーの普及を目指す日本の野望は何十年もの間、驚くほど強力な温泉地の抵抗に阻まれている。 福島県の山中にたたず

                                              日本で地熱発電が普及しない「本当の理由」 世界3位の地熱資源大国だが… | なぜ純国産エネルギーを利用しないのか?
                                            • タルサ虐殺から100年─「今でも殺された黒人たちの叫びが聞こえる」最後の生存者の訴え | 「民族浄化」の生々しい記憶

                                              2021年5月31日、アメリカは「タルサ虐殺」から100年を迎えた。オクラホマ州タルサで黒人が大量殺戮された歴史は長く闇に葬られてきたが、いま残りわずかとなった生存者たちが最後の声を振りしぼる。 7歳の少女が見た「民族浄化」 「私には今も黒人の男たちが銃殺されていく瞬間、道に横たわる黒人の死体が見えます。いまだ煙のにおいが鼻に残り、立ち上がる炎が見えます。私には今も彼らの叫び声が聞こえるのです」 107歳のヴィオラ・フレッチャーは5月19日、米下院の司法小委員会でそう証言した。彼女は、1921年5月31日にオクラホマ州タルサで起きた「タルサ虐殺」の最後の生存者の一人だ。 当時のフレッチャーは7歳になったばかりだった。武装した白人の暴徒たちがタルサ北部の黒人居住地区に迫ってきたその夜、寝ていた彼女は両親に起こされ、5人のきょうだいと一緒に逃げたという。 2021年5月31日、アメリカはタルサ

                                                タルサ虐殺から100年─「今でも殺された黒人たちの叫びが聞こえる」最後の生存者の訴え | 「民族浄化」の生々しい記憶
                                              • 英誌が報じる「日本の主婦が再就職しても30%は離職するワケ」 | 既婚女性の職場復帰を妨げる仕組み

                                                日本でも働く女性はますます増えているが、一度キャリアから離れて専業主婦になった場合、再就職しても離職する人が少なくない。その構造的な問題を、英誌「エコノミスト」が指摘した。 女性の生き方が変わっている 大洞静枝は大学を卒業後、保険会社で着実にキャリアを築いていた。だが、最初の子供を出産したあと、彼女は専業主婦となった。 「仕事は続けたかったですが、自分の気持ちは抑えました」と、現在40代の彼女は言う。しかし、自身より上の世代の日本人女性たちとは違い、彼女は家にとどまることを望まなかった。8年後の2015年、彼女はジャーナリストとしてまた働きはじめる。 大洞はとても大きな変化を象徴している。かつて日本の女性の労働参加率は、ほかの富裕国と比べて、ずっと低かった。長いあいだ、たいていの女性は第一子を出産したあとに仕事を辞めなければならなかったのだ。文化的慣習に加えて、旧態依然とした税制度や福祉制

                                                  英誌が報じる「日本の主婦が再就職しても30%は離職するワケ」 | 既婚女性の職場復帰を妨げる仕組み
                                                • 妥協だらけの「ヘッドセット端末」で賭けにでるアップルの内情 | 複合現実デバイスを近々、発表予定

                                                  クーリエ・ジャポンのプレミアム会員になると、「ウォール・ストリート・ジャーナル」のサイトの記事(日・英・中 3言語)もご覧いただけます。詳しくはこちら。 アップルは近く、おそらく最も実験的で、かつ従来の慣例に背く新製品を発表する。仮想世界と現実世界が交錯する「ミックスリアリティー(MR=複合現実)」と呼ばれるヘッドセット型端末で、スキーのゴーグルのような形をしており、バッテリーパックが別についてくるという。内情に詳しい関係筋が明らかにした。 アップルの新製品はこれまで業界の絶対基準となってきたが、今回の投入計画は、新製品に関するアップルの伝統やルールの多くを破るものだ。他のアップル製品とは異なり、今回のヘッドセット端末はなお実験段階に近い。 発売からすぐに消費者の心をわしづかみにしたウエアラブル端末「Apple Watch(アップルウオッチ)」やスマートフォン「iPhone(アイフォーン)

                                                    妥協だらけの「ヘッドセット端末」で賭けにでるアップルの内情 | 複合現実デバイスを近々、発表予定
                                                  • 英紙が憂慮「孫正義の“発明家”への転身は日本経済にとって大打撃だ」 | 株主総会で語った「涙と晩年の危機」

                                                    2023年6月におこなわれたソフトバンクグループ(SBG)の株主総会に、孫正義会長兼社長が登壇。2022年11月の決算記者会見以降に公の場から遠ざかっていた間、AI関連の「発明」に没頭していたと明かした。孫の投資家から発明家への転身はSBGにとって吉と出るのか、凶と出るのか。その影響は同グループにとどまらず、日本経済全体に及ぶと英紙は指摘する。 明け方のソフトバンクグループ(SBG)の会長兼社長室──孫正義(65)の「発明ホットライン」の担当者はくつろいでいた。 夜中に電話が鳴らなかったのは、ありがたかった。朝の引き継ぎまで、もう少しだ。だが彼は、孫の頭に「最高のアイデア」が浮かぶのは、まさにいまみたいなタイミングだと経験的に知っていた。 プルルルル! 電話が鳴る。 「自己認識型AI泡立て器ですか? 天才的なアイデアですね。さっそく特許申請にとりかかります」 プルルルル! また電話が鳴る。

                                                      英紙が憂慮「孫正義の“発明家”への転身は日本経済にとって大打撃だ」 | 株主総会で語った「涙と晩年の危機」
                                                    • 塀の中から株に投資してみたら… アメリカ囚人たちの「デイトレード奮闘記」 | 刑務所で金融リテラシーを身につける

                                                      米ワシントン州の刑務所に収監されている受刑者らのあいだで投資ブームが起きている。それまで株どころか、お金に関してまったく知識のなかった男たちが、独学で金融リテラシーを身につけているのだ。そんな受刑者の一人、トマス・キーンが「塀の中の投資奮闘記」を綴る。 きっかけはコロナ給付金 月曜日の夕方、ニックが投資金融情報誌「バロンズ」の最新号を手にやってきた。新たな投資の1週間が始まる合図みたいなものだ。ニックがワクワクした様子で雑誌を開くと、我々は買い銘柄を物色しはじめた。 他のテーブルではトランプに興じる男たちもいれば、電子レンジの前でブリトーにラーメンを包む者、あるいは将来について語り合う連中もいる。 だが、我々は夢中でバロンズのページに目を走らせ、太字になっている数字(過去1年間で最低の株価をつけたという意味だ)を探した。 だんだんと周囲に人が集まりはじめ、市場動向やらアナリストの予測やらに

                                                        塀の中から株に投資してみたら… アメリカ囚人たちの「デイトレード奮闘記」 | 刑務所で金融リテラシーを身につける
                                                      • 「まるで鎖国」…トヨタや日産の「EV出遅れ」が日本経済に大打撃を与える | 英誌が加速する「日本車離れ」を危惧

                                                        かつて、世界のエコカー市場をけん引していた日本の自動車メーカーが、過熱するEV(電動自動車)開発競争では大きく後れを取っている。日本経済の中核を成す自動車産業の停滞の理由を、英経済誌が分析した。 日本の自動車部品メーカー「ジヤトコ」の富士第2工場は、静かな自信に満ちていた。 緑色の床の上できびきびと働く検査員が、車のギアとプーリー(滑車)をチェックし、同社のトランスミッション・システムを完成させる。ロボットが刻印を打った部品が、ベルトコンベアーに載せられる。 ジヤトコでは数十年にわたり、「完璧な車」が造られてきた。ジヤトコのみならず、日本の自動車産業全体がそうだ。「必要なものを、必要なときに、必要な量だけ」供給することで効率化を図る「ジャストインタイム生産方式」の先駆者で、ハイブリッドカー市場をけん引してきた日本は、自動車ビジネスの最先端を走ってきた。 だが、EV(電気自動車)へのシフトと

                                                          「まるで鎖国」…トヨタや日産の「EV出遅れ」が日本経済に大打撃を与える | 英誌が加速する「日本車離れ」を危惧
                                                        • 空音央が語る父・坂本龍一 「完璧主義ではない素顔」と「ラストエンペラー秘話」 | “最後の演奏”をとらえた話題作『Opus』

                                                          世界的な音楽家・坂本龍一(享年71)の“最後の演奏”を記録したドキュメンタリー作品『Ryuichi Sakamoto | Opus』が、第80回ベネチア国際映画祭で公式上映された。本作の監督で坂本の息子でもある空音央に、撮影秘話や巨匠の知られざる素顔を香港紙が聞いた。 「映画制作を提案したのは、僕ではなく坂本のアイデアでした」と、空音央(そら・ねお)は語る。 彼の監督作『Ryuichi Sakamoto | Opus』は偉大な日本人作曲家・坂本龍一の最後のパフォーマンスを捉えたドキュメンタリー作品だ。坂本は2023年3月に71歳で亡くなった。 『Ryuichi Sakamoto | Opus』の予告

                                                            空音央が語る父・坂本龍一 「完璧主義ではない素顔」と「ラストエンペラー秘話」 | “最後の演奏”をとらえた話題作『Opus』
                                                          • “神風”は本当に吹いた? 「水中考古学」で浮かび上がる歴史に迫る | 佐々木ランディに聞く 「日本に眠る遺産」

                                                            海や湖、河川と人の関係の歴史を探る「水中考古学」。沈没船や水中遺跡のみならず、人間が水とどのように関わってきたかを調査する学問だ。 実は、日本では多くの水中考古学的「発見」があり、海外からも注目されるほどだ。と同時に、それらの遺産を守るうえで大きな課題も抱えている。 では、水底に眠る遺跡が現代人に教えてくれることとは? 水中考古学者の佐々木ランディに話を聞いた。 日本は「水中遺跡」大国だった! ──2022年2月に出版された著書『水中考古学 地球最後のフロンティア』では、水中考古学に対する想いが綴られ、印象的でした。同書で伝えたかったことは何ですか。 一番に伝えたかったのは、水中遺跡が「実はどこにでもあるもの」だということです。同時に、世界的に見て、日本がこの分野で大きく遅れをとっている事実を知ってほしいと思いました。「このまま変化を起こさないと貴重な遺産が失われていく」と。 ですが、ただ

                                                              “神風”は本当に吹いた? 「水中考古学」で浮かび上がる歴史に迫る | 佐々木ランディに聞く 「日本に眠る遺産」
                                                            • 性暴力の訴えを握りつぶされた元自衛官の告発─五ノ井里奈が米紙に語ったこと | 「自衛隊は彼女の性被害を黙殺した。だから彼女は実名で公表した」

                                                              「自衛隊は彼女の性被害を黙殺した。だから彼女は実名で公表した」 性暴力の訴えを握りつぶされた元自衛官の告発─五ノ井里奈が米紙に語ったこと 自衛隊内で受けた性被害についてワシントン・ポストに語った元自衛官の五ノ井里奈 Photo by Shiho Fukada for The Washington Post

                                                                性暴力の訴えを握りつぶされた元自衛官の告発─五ノ井里奈が米紙に語ったこと | 「自衛隊は彼女の性被害を黙殺した。だから彼女は実名で公表した」
                                                              • 是枝監督「貧しい家庭に生まれていなかったら、今と同じ映画は撮らなかっただろう」 | スペイン紙のインタビュー

                                                                是枝裕和が孤高の戦士であることを理解するのに、彼について多くを知る必要はない。墓地のように静まり返った部屋の隅に腰かけ、泰然とした穏やかさを湛えている彼は、まるで日本の民間伝承に数多登場する僧兵のように(こんなありきたりな表現をすることを彼にお詫びしたい)、「羽織」スタイルのジャケットをまとっている。モダンな着物タイプのその服は灰色を帯びた青い色調で、パリのホテルのカーテンの色彩に紛れている。 監督はこの街に一時滞在中で、その2時間を私たちのために割いてくれた。今回の彼のミッションは、自身の2つの新プロジェクトを発表することだ──スペインで2022年12月21日に公開された映画『ベイビー・ブローカー』、そして2023年1月12日に「ネットフリックス」で配信がスタートするシリーズ『舞妓さんちのまかないさん』である。 これらの作品で是枝は、自身が好んで取り上げてきたテーマをなお掘り下げている─

                                                                  是枝監督「貧しい家庭に生まれていなかったら、今と同じ映画は撮らなかっただろう」 | スペイン紙のインタビュー
                                                                • フランス人哲学者アレクサンドル・ラクロワが説く「完璧なセックスに到達する方法」 | 愛を交わすときは哲学的にクリエイティブに

                                                                  「セックスをするのは自転車に乗るようなものだ」といわれるが、むしろ実際は運転免許を取るのに似ている。誰もがすぐ実践に飛びつきたがり、運が良ければ残りの人生ずっとそれをし続けるだろう。その一方で、理論的な部分にはたいして注意を払わないのだ。 フランスの哲学者アレクサンドル・ラクロワ(47)は、これを大きな間違いだと考えている。彼は、こうした問題を解決すべく『愛を交わすことを学ぶ』(未邦訳)を発表した。本書はセックスをめぐるエッセイで、「完璧なセックス」に到達するための手がかりを示している。ラクロワは古典などから知識を取り入れ、彼自身が「フロイトポルノ」と呼ぶものにセックスが染まっている現代に、そうした教えをもたらそうとしている。 フロイトポルノとは、精神分析の父が確立し、ポルノ産業が強化した、単調で頑なな台本(前戯、挿入、オーガズム)のことだ。これは、主にヘテロセクシュアルの恋人たちが無意識

                                                                    フランス人哲学者アレクサンドル・ラクロワが説く「完璧なセックスに到達する方法」 | 愛を交わすときは哲学的にクリエイティブに
                                                                  • ジャズピアニスト海野雅威「NYで負った痛みより、もらった愛のほうが大きい」 | 音楽は常に国境や肌の色、性別を越えてきた

                                                                    2020年9月27日、ニューヨークでジャズピアニストとして活躍していた海野雅威(うんの・ただたか)が8人の暴漢に襲われたという衝撃的なニュースが飛び込んできた。鎖骨を骨折するなどの重傷を負い、再びピアノを弾ける日はいつになるのかまだ分からない。 自宅で少しずつリハビリを始め復帰を目指す海野に、事件の背景、人種差別、音楽とニューヨークへの変わらぬ思いを聞いた。 「こんなところで死ねない」と思ったとき… ──クーリエ・ジャポンは2016年にニューヨークで海野さんにインタビューさせていただきました。あれから4年、どんな変化がありましたか。 前回インタビューを受けたときは、ちょうど私がロイ・ハーグローヴのバンドに参加し始めたばかりの頃だったと記憶しています。それから正式に彼のバンドのレギュラーピアニストとなり、ツアーで世界中を回っていました。彼が2018年に49歳で亡くなってしまうまでの2年間です

                                                                      ジャズピアニスト海野雅威「NYで負った痛みより、もらった愛のほうが大きい」 | 音楽は常に国境や肌の色、性別を越えてきた
                                                                    • 外国人観光客に“おもてなしできない”北海道ニセコが人手不足で悲鳴 | 米紙が報じるニセコリゾートの危機

                                                                      スキーの聖地は求人広告だらけ 豊富な降雪量と柔らかく軽い雪質に恵まれた北海道ニセコのスキーリゾートは、1泊2000ドル以上もするラグジュアリーホテルのほか、モンクレールやボグナーのウエアを販売する高級店で知られるようになった。 だが、今シーズンはアートギャラリーやインスタ映えするカフェの風景のなかに、あるものが必然的に目に入る。まだ続くコロナ禍の経済的混乱を示すもの、「求人広告」だ。 天井から空の酒瓶が何十本と吊るされているダイニングバー「魂」は、調理補助や皿洗い、レジ係の仕事を最低賃金の約7割増しで募集するチラシを掲示している。 アンヌプリ山に広がる4大スキーリゾートのひとつ「ニセコHANAZONOリゾート」は、スキーインストラクターやシャトルバス運転手、リフトの運行担当者、レンタルショップのスタッフを募集中。採用者にはシーズンパスや光熱費無料の従業員寮と、「最高のパウダースノーを思う存

                                                                        外国人観光客に“おもてなしできない”北海道ニセコが人手不足で悲鳴 | 米紙が報じるニセコリゾートの危機
                                                                      • ユヴァル・ノア・ハラリ「ナショナリズムは外国人を憎むことではない。だから、グローバルな協働と両立可能」 | 『漫画 サピエンス全史』刊行記念インタビュー

                                                                        絵にすることで細部が明確に ──今回、『サピエンス全史』をドキュメンタリーやテレビ番組ではなく、漫画にしようと思ったのはなぜですか? ユヴァル・ノア・ハラリ:いつかテレビ番組を作れればいいですね。しかし、漫画にしたのは、人文科学の本や記事をあまり読まない人たちにも読んでもらいたかったからです。科学や歴史を視覚的に語る方法を、脚本を書いたダヴィド・ファンデルミューレン、漫画を担当したダニエル・カサナヴェと一緒に考えましたが、とても楽しかったです。 アカデミックな習慣を打破する必要がありました。たとえば、ある章は推理小説の形をとって、何が地球上の巨大哺乳類の大部分を殺したのか、謎解きにしました。その答えは、『サピエンス全史』の中の、およそ50000年前に最初の人類がオーストラリアに到達したところに出ています。

                                                                          ユヴァル・ノア・ハラリ「ナショナリズムは外国人を憎むことではない。だから、グローバルな協働と両立可能」 | 『漫画 サピエンス全史』刊行記念インタビュー
                                                                        • プーチン専用「秘密の装甲列車」を撮影した“鉄オタ”の悲しい末路 | 鉄道を愛しすぎた男のいま

                                                                          ロシアのプーチン大統領が移動に使う極秘列車を追いかけ続けた鉄道オタクがいる。彼は純粋な鉄道愛からその珍しい列車を撮影して楽しんでいたが、写真をネットに投稿したときに悲劇は始まった──。 不気味な「幽霊列車」 筋金入りの「鉄道オタク」であるミハイル・コロトコフ(31)は、ロシアの鉄道を走る珍しい列車のとりこになった。それはまるで内気な珍獣をストーキングするかのような執着ぶりだった。 その列車とは、ウラジーミル・プーチン大統領が極秘で利用する特別装甲仕様の列車だ。流線形で赤とグレーの塗装が施され、複数の箱型機関車にけん引されることが多い。コロトコフはそれを何年もかけて追跡し、写真に収めた。 そして2018年、コロトコフはプーチンの極秘列車の写真を初めてネットに投稿した鉄道オタクになった。「普通の人間はこんな列車に乗らない」とコメントを付けている。 この特別列車を見つけて撮影することは、恐ろしく

                                                                            プーチン専用「秘密の装甲列車」を撮影した“鉄オタ”の悲しい末路 | 鉄道を愛しすぎた男のいま
                                                                          • 「AIは文明を根幹からハックするだろう」 ユヴァル・ノア・ハラリら専門家が米紙に警告 | 過去の「AIとの最初の遭遇」から私たちが学ぶべきこと

                                                                            米紙「ニューヨーク・タイムズ」にユヴァル・ノア・ハラリ、トリスタン・ハリス、エイザ・ラスキンの3人が連名でオピニオン記事を寄稿した。記事中で彼らは、ChatGPTをはじめとする大規模言語モデルは「人類とAIの二度目の接触」であり、今回こそはAIに屈してはならないと説いている。 ハラリは『サピエンス全史』『ホモ・デウス』などの書籍で知られる歴史学者。ハリスとラスキンは、人類のための倫理的なテクノロジー開発を訴える米非営利団体「センター・フォー・ヒューメイン・テクノロジー」の設立者だ。 彼らが警鐘を鳴らすディストピア的な未来、そしてその回避の方法について、全文ノーカットで掲載する。 想像してみてほしい。あなたは飛行機に搭乗しようとしている。その飛行機を製造したエンジニアの半数が、その飛行機が墜落してあなたと搭乗者全員が死ぬ確率は10%だと言っている──あなたはそのまま搭乗するだろうか? 202

                                                                              「AIは文明を根幹からハックするだろう」 ユヴァル・ノア・ハラリら専門家が米紙に警告 | 過去の「AIとの最初の遭遇」から私たちが学ぶべきこと
                                                                            • ロシア人歴史学者「プーチンはベラルーシから核兵器を撃つだろう」(クーリエ・ジャポン) - Yahoo!ニュース

                                                                              プーチンの「レガシー」 とも言えるクリミア大橋で、10月8日に大爆発が発生したPhoto by Vera Katkova/Anadolu Agency via Getty Images 終わりの見えないウクライナでの戦争だが、プーチン大統領が予備兵の動員を発令したことは、ロシア衰退の兆しなのだろうか。同国が降伏することは、あるいはプーチンが失墜させられることはあり得るのだろうか? ロシア出身の歴史学者ユーリー・フェリシチンスキーに、スペイン紙「エル・パイス」が取材した。 【動画】プーチンが「小型核」を撃ったら、世界はどのようにして核戦争に突入するのか クリミア侵攻は「誤りを正す計画の始まり」だったユーリー・フェリシチンスキー(1956年、モスクワ生まれ)は、1978年からアメリカに拠点を置く歴史学者だ。ロシアの秘密情報活動の研究を専門としている。 2002年には、アレクサンドル・リトビネン

                                                                                ロシア人歴史学者「プーチンはベラルーシから核兵器を撃つだろう」(クーリエ・ジャポン) - Yahoo!ニュース
                                                                              • ビル・ゲイツが語る「次のパンデミックへの備え」そして「“あの”陰謀論について思うこと」 | 200日で世界全体のワクチンを生産できるような工場を

                                                                                「預言者郷里に容れられず」とはよく言ったものだ。IT業界の“帝王”ビル・ゲイツ(65)は古き良き携帯電話で取材に応じ、自らが創設したマイクロソフト社のウェブ会議ツール「Teams(チームズ)」を使わないというのだ。 取材時の通信環境は完璧とは言えず、通話は雑音混じりだったが、幸いなことにシアトル在住のこのビリオネアの思考は明晰そのものだった。 ゲイツがインタビューで語ったのは、新型コロナウイルスがいまも人命を奪い続けていること、貧しい国への援助がスピード感に欠けていること、妊産婦死亡率の低下が想定よりも遅れてしまっていること、ジフテリア、破傷風、ポリオといった基礎的なワクチンを接種したがらない人が増えている……といったことだ。 もちろん、「ビル・ゲイツがワクチンを使って人々の身体にチップを埋め込もうとしている」という突拍子もない陰謀論が出回っていることについても、どう思っているのか本人に尋

                                                                                  ビル・ゲイツが語る「次のパンデミックへの備え」そして「“あの”陰謀論について思うこと」 | 200日で世界全体のワクチンを生産できるような工場を
                                                                                • ワインの世界を変えた『神の雫』が本場フランスで高い支持を得た理由 | 国際ドラマ『神の雫 Drops of God』の世界配信が開始

                                                                                  世界中で支持された漫画『神の雫』が、国際ドラマ『神の雫 Drops of God』として実写化された。一足早く配信されたフランスの日刊紙「ル・モンド」は『神の雫』がワインの本場で支持された理由を分析している。 雫は止めどなく流れ、やがて大河となる。『神の雫』は20年ほど前、普段飲んでいたワインを題材にしようと考えた姉と弟によって生み出された日本の漫画であり、44巻の一大絵巻となって世界的な評価を得ている。そして、この漫画に取り上げられたことで、多くのワイン生産地の運命が変わった。いま新たな実写ドラマ版『神の雫 Drops of God』がフランスでは4月21日からApple TV+で配信されている。 この作品は、真のワイン頌歌である。たとえば、ミシェル・コラン=ドレジェ醸造所の2000年のシュヴァリエ・モンラッシュについては、第18巻で次のように述べられている。 「このワインには、不用意に

                                                                                    ワインの世界を変えた『神の雫』が本場フランスで高い支持を得た理由 | 国際ドラマ『神の雫 Drops of God』の世界配信が開始