並び順

ブックマーク数

期間指定

  • から
  • まで

1 - 40 件 / 178件

新着順 人気順

Courrierの検索結果1 - 40 件 / 178件

  • 世界を制する「ヘンタイ」─それは消費者の内面的な矛盾の表れだ | 仏紙「ル・モンド」が分析

    「kawaii」、「emoji」、「sushi」などとともに、「hentai」も海外へ流出した日本語の一つだ。だが、日本での「変態」とは少々意味が異なり、海外での「ヘンタイ」は漫画やアニメのジャンルの一つ、「ポルノ漫画」、「ポルノアニメ」を意味する。 「ファンタスム(幻想)」はどこで生まれるのか──? ポルノ関係者にこの質問を投げかければ、「日本」という答えが返ってくる可能性が高い。数字は明白に示している。大手ポルノ共有サイト「Pornhub」で、2019年からもっとも多く検索されたワードは「ヘンタイ」(ポルノ漫画、ポルノアニメ)、そして2番目は「日本人」である。 この流行は世界的なもので、ポーランドからメキシコまで、男女問わず長く続いている。まったく驚くべきことだ。 そこで数々の疑問が浮かぶ。長らく青少年のコンテンツだった漫画が、どうして大人の隠れ場に入り込んできたのだろうか? 文化的に

      世界を制する「ヘンタイ」─それは消費者の内面的な矛盾の表れだ | 仏紙「ル・モンド」が分析
    • がんの診断と同時に即「安楽死」を勧められた─「安楽死先進国」の現状 | 「医療体制の不備」を正当化する手段に

      治療もなしに「安楽死」を勧める 2022年の感謝祭休暇のことだ。アリソン・デュクリュゾーは、腹部の痛みを感じはじめた。最初はターキーの食べすぎだろうと思っていたが、痛みは長引いた。 2週間後、彼女はかかりつけ医を受診しCTスキャンを受けたものの、原因はわからなかった。直後、痛みはさらに悪化したため、彼女のパートナーはバンクーバー島にある地方病院の救急センターに行くことを勧めた。そこの医者は、彼女が重度に進行した腹部のがんに侵されていると告げた。最も恐れていた事態だった。 当時56歳だったアリソンは結局、進行の速い腹膜がんのステージ4と診断された。2023年初頭に専門医の診察を受けると、あと数ヵ月しか生きられないだろうとのことだった。化学療法は彼女のがんには効かず、せいぜいわずかな時間稼ぎになるだけで、手術も不可能だというのだ。その代わり、家に帰って法的な書類を整理し、医療による死亡幇助(M

        がんの診断と同時に即「安楽死」を勧められた─「安楽死先進国」の現状 | 「医療体制の不備」を正当化する手段に
      • 米国で増える「大学で暮らし、大学で学ぶ高齢者たち」─新しい生涯教育の形 | 85の大学で2万人以上

        米国ではいま、2万人の高齢者たちが、大学が彼らのために用意した施設で暮らし、キャンパスで学びながら老後を満喫しているという。ベビーブーマー世代の高齢者と大学の双方にとって有意義なこのプロジェクトを、英誌「エコノミスト」が取材した。 大学内に高齢者施設 「宇宙には私たちしかいないのでしょうか? それが、ここで答えを出そうとしている核心的な問題です」と、NASAとも協働している惑星科学者、ミーナクシ・ワドワは熱心に聞き入る学生たちに語りかける。この問いに答えるためには、「火星に行き、岩石を採取する必要があります」と彼女が説明すると、ある学生はノートに書き留め、別の学生はiPhoneでスライドの写真を撮った。 アリゾナ州立大学(ASU)のこの教室は、多くの点で他と変わらない。熱心な女子学生たちが前列の席を占め、男子学生たちは後方の席に散らばっている。だが、彼らが身につけた補聴器が、この教室が普通

          米国で増える「大学で暮らし、大学で学ぶ高齢者たち」─新しい生涯教育の形 | 85の大学で2万人以上
        • 日本の「漫画」は、フランス総選挙の行方も左右するのだろうか? | 「『ONE PIECE』ファンでいながら、極右RNの支持などできない」

          国民議会選が目前に迫り、極右政党「国民連合(RN)」が存在感を強めるなか、フランスではこれに抗議する運動が各所で湧き起こっている。女性の権利を訴える団体の大規模デモ、サッカー選手キリアン・エムバペや女優のマリオン・コティヤールをはじめとする多数の有名人の反対表明……。 さらに、日本の「漫画ファン」コミュニティもRNへの反対を訴える。「『ONE PIECE』、『進撃の巨人』、『NARUTO -ナルト-』のファンでありながらRNに投票しようとするなんて、作品を理解していないか、作品の哲学をないがしろにしているかだ」。その真意とは? エマニュエル・マクロン仏大統領による国民議会解散を受け、6月30日と7月7日におこなわれるフランス総選挙。その選挙で、漫画がどのような役割を果たすというのだろうか? 間近に迫った投票を脅かす暗い危機を前に、日本の漫画など、とるに足らないようにも思えるが、選挙戦がイン

            日本の「漫画」は、フランス総選挙の行方も左右するのだろうか? | 「『ONE PIECE』ファンでいながら、極右RNの支持などできない」
          • セレブがこぞってほしがる「バーキン」のクレイジーな経済学 | 高級バッグを買う「資格」を得るために、エルメスで買い物

            クーリエ・ジャポンのプレミアム会員になると、「ウォール・ストリート・ジャーナル」のサイトの記事(日・英・中 3言語)もご覧いただけます。詳しくはこちら。 近くのエルメス店舗でハンドバッグ「バーキン」を買い、それを転売すれば、5分で価格が倍になる。だが、世界で最も入手困難なハンドバッグを手に入れるプロセスは想像以上に複雑だ。 ベーシックなブラックレザーの「バーキン25」の価格は、エルメスの店舗で税抜き1万1400ドル(約180万円)。購入者はすぐに2万3000ドルでプリヴェ・ポーターのようなハンドバッグ転売業者に売り渡すことができる。その後、プリヴェ・ポーターはインスタグラムやラスベガスのポップアップストアで最高3万2000ドルで販売する。エルメスの製造原価は約1000ドルとアナリストは推定する。 常軌を逸した「バーキン経済学」は、客と店員の力関係をひっくり返した。エルメスの店舗では、こびへ

              セレブがこぞってほしがる「バーキン」のクレイジーな経済学 | 高級バッグを買う「資格」を得るために、エルメスで買い物
            • 米経済メディアが紹介 洗濯物の乾かし方で日本発の「第三の道」がある | 世界はまだ“それ”を知らない

              欧州と北米のあいだには大きな隔たりがある。それは洗濯に関わることだ。洗濯物を乾かすとき、欧州はおもに自然乾燥に頼り、物干しスタンドのうえに広げたり、外で吊り干ししたりする。米国やカナダの家庭はたいてい、洗濯物を乾燥機で乾かす。 その隔たりは、かなり際立っている。欧州で最も乾燥熱心なデンマーク人が洗濯物を機械乾燥する割合はたった28%である一方、米国の家庭のおよそ80%が毎週タンブル乾燥している。このギャップは何十年も存在してきたし、外国からの訪問者を大いに困惑させてもきた。 ところが日本では、大西洋の両岸からやってきた旅行者が、洗濯物を乾かす第三の道があると知って驚くことがよくある。見よ、浴室乾燥機だ。 電化製品と部屋の境界をまたいだ装備 英語に訳せば「バスルーム・ドライヤー」となるこの浴室乾燥機は、電化製品と部屋の境界をまたいだ、巧妙な装備だ。浴室の天井に埋め込まれたヒートポンプが暖かく

                米経済メディアが紹介 洗濯物の乾かし方で日本発の「第三の道」がある | 世界はまだ“それ”を知らない
              • 英誌が自民裏金問題にいち早く切り込んだ「しんぶん赤旗」を賞賛 | 日本の大手メディアの「自己検閲」を懸念

                自民党派閥の政治資金裏金パーティー問題など、これまで数々の政治スクープを他紙に先駆けて報じてきた「しんぶん赤旗」に英誌「エコノミスト」が注目。その一方で権力におもねり、政治の責任を追求しようとしない日本の大手メディアの姿勢に疑問を投げかける。 日本では2024年1月に通常国会が召集されて以来、主にあるひとつの問題が議論されつづけてきた。 政権与党たる自民党の汚職スキャンダルだ。 2023年末、政治資金を集める目的で開かれていた会費制パーティーの収入を報告書に記載せず脱税したとして、検察は複数の自民党派閥への捜査を開始した。 すでに会計士や議員などを含む自民党関係者が起訴されており、同年12月には閣僚4人、副大臣5人が更迭された。 2024年4月には岸田文雄首相が自民党の重鎮2人である塩谷立元文部科学相と、世耕弘成前参院幹事長を離党勧告するなど、39人の党員を処分した。 日本を揺るがすこの政

                  英誌が自民裏金問題にいち早く切り込んだ「しんぶん赤旗」を賞賛 | 日本の大手メディアの「自己検閲」を懸念
                • 沖縄の森で迷子になり、消防と警察に迷惑をかけたフランス人の回想録 | 我が人生、最悪のトレッキング

                  あらゆるトラブルを想定して周到な計画を立ててトレッキングに出かける人がいる一方、何の準備もせずに出かける安易な考えの人もいる。そんな準備不足は、いつ遭難につながるかもわからない。香港でワイン商を営むフランス人のマルタン(33)が沖縄のジャングルで過ごした地獄の夜を振り返る。 2017年、私は友人のヴァランタンとともにサーフィンをしに、3~4泊で沖縄に行く計画を立てた。私も彼も当時は香港在住だった。私たちは沖縄本島最大の都市に到着して早速レンタカーを利用しようとしたが、運転免許証の翻訳などが必要で手続きが複雑だったため、タクシーを使うことにした。ところが、そうやってかなり高い運賃を支払ってたどりついた最初のサーフィン・スポットには全然、波がなかった。 シーズンを完全に間違えていたのだ。私たちは沖縄本島の西岸にいた。おかしな考えが頭をよぎったのは、そのときだった。島の反対側まで歩いてみようかと

                    沖縄の森で迷子になり、消防と警察に迷惑をかけたフランス人の回想録 | 我が人生、最悪のトレッキング
                  • 二国家解決を本気で望むなら、西側はイスラエル政府に制裁を科すべきだ | トマ・ピケティ「新しい“眼”で世界を見よう」

                    イスラエル・パレスチナで二国家解決が実現する可能性はまだ残っているのだろうか。どのような条件が整えば、二国家解決は実行できるものになるのか。まずは希望を持てそうなことから書く。 それはイスラエルにもパレスチナにも、市民たちによる平和運動があり、それらの市民運動が粘り強く、想像力を働かせながら、平和的かつ民主的な解決を訴えていることだ。残念ながら、こうした市民運動は少数派なので、国外からの強力な支援なしに運動の目標を達成できる見込みは薄い。 状況を打開するためにも、そろそろEUと米国が言行不一致をやめるべきときがきているといえる。イスラエルの輸出の約7割は、米国と欧州に向かっている。だから西側諸国が二国家解決を本当に支持しているなら、イスラエル政府に制裁を科すべきなのだ。なぜならイスラエル政府は、入植活動や弾圧活動を続けたり、パレスチナの国家承認に反対したりしており、平和につながりうる可能性

                      二国家解決を本気で望むなら、西側はイスラエル政府に制裁を科すべきだ | トマ・ピケティ「新しい“眼”で世界を見よう」
                    • 「ニッサンはBYDの『EV解放運動』の新たな犠牲者」 米専門誌が分析 | だがBYDは日本で苦戦…

                      EV競争に飲まれる日本車メーカーたち 日産自動車が中国市場で苦戦を強いられている。同社は中国最大手のEVメーカー、BYDとの価格競争をうけ、中国江蘇省の工場閉鎖を発表した。今後は生産数を落とし、事業の立て直しを図っていくとみられる。 EV業界の動向を専門に報じる米メディア「エレクトレック」は、「日産はBYDがガソリン車に対して講じたEV解放戦の新たな犠牲者」だと書く。 多くの自動車メーカーと同様、日産にとって中国は重要な市場だ。2023年の販売台数実績を見ても、およそ2割は中国が占める。だが、EV化の煽りをうけ、中国での販売台数は落ち込む一方だ。 低価格のEVでガソリン車のシェアを奪うBYDの戦略は、いまのところ功を奏している。もっとも安価なコンパクトEV「シーガル」も日本円で150万円から購入可能だ。 同記事では、こうした果敢な価格競争の影響を受けているのは、日産だけではなく、「トヨタ、

                        「ニッサンはBYDの『EV解放運動』の新たな犠牲者」 米専門誌が分析 | だがBYDは日本で苦戦…
                      • 「電波少年」に出演したなすびが米紙に語る「当時の番組は見返せない」 | 辛い体験が人を笑顔にすることもある

                        英国で制作されたドキュメンタリー映画『ザ・コンテスタント』の題材となったのは、90年代後半に人気を博したバラエティー番組「進ぬ!電波少年」の企画として放映された「電波少年的懸賞生活」だ。2023年にはトロント国際映画祭で上映され、今年5月から米国のHuluで配信している。 米紙「ロサンゼルス・タイムズ」が、同作の制作の裏側を、なすび、そして監督のクレア・ティトリーへのインタビューを通じて報じている。 知らぬ間に「国中から見られている」 1998年1月、当時まだ芸人の卵だったなすび(本名は浜津智明。「なすび」という芸名は特徴的な長い顔にちなんだもの)は人気バラエティー番組「進ぬ!電波少年」への出演を決めた。 テレビプロデューサーである土屋敏男の発案で生まれた「電波少年」シリーズでは、若手タレントたちが、数々の体当たり企画に挑戦した。なすびが出演することになった企画「電波少年的懸賞生活」(以下

                          「電波少年」に出演したなすびが米紙に語る「当時の番組は見返せない」 | 辛い体験が人を笑顔にすることもある
                        • 【解説】フランス総選挙、極右躍進を支えたのは意外にも「女性票」だった | マクロンの賭けは裏目に

                          フランス国民議会(下院、定数577)選挙の1回目投票が6月30日におこなわれ、極右政党「国民連合」が躍進し、最大の得票率を得た。 国民連合は得票率33%で首位に立ち、次いで左派連合の「新人民戦線」が28%、エマニュエル・マクロン大統領率いる与党連合は21%にとどまった。 フランスの総選挙は2回投票制で実施される。7月7日の決選投票で国民連合が勝利を確実にすれば、極右の首相が誕生する可能性がある。 2回投票制とは? フランスの総選挙の仕組みは、1回目投票で過半数を獲得した候補がいれば、そのまま当選となるが、いない場合は決選投票で決める。その際、1回目投票の上位2候補は自動的に決選投票に進み、得票率が12.5%を超えた候補も進むことができる。 このため、決選投票が三つ巴の戦いになる選挙区も出てくる。 国民連合が躍進した理由 移民排斥や人種差別的な主張を掲げる極右政党がなぜこれほどまでの支持を集

                            【解説】フランス総選挙、極右躍進を支えたのは意外にも「女性票」だった | マクロンの賭けは裏目に
                          • 世界中の「出生率上昇のためのバラマキ」にはどれほど効果があるのか | 給付金は増えていく一方だが…

                            世界に広がる少子化 30年ほど前、東アジア諸国の政府には、女性が身体的に妊娠可能な年齢になったことを喜ぶ理由があった。当時、韓国では、女性がそれまでと同じように行動すれば、出生率が平均1.7人まで下がると見積もられていた。1970年には、出生率は4.5人だったにもかかわらずだ。 東アジア全体で、政治家たちは10代の妊娠を劇的に減少させることに成功した。この一世代のうちに、出生率は驚くほどうまく減少した。だが、それはあまりにもうまくいきすぎた。出生率はいまなお下がり続けているのだ。 現在、妊娠可能な年齢の韓国人女性が、上の世代と同じように行動したと仮定した場合、生涯に産む子供の数は、0.7人だと見積もられている。 2006年以降、韓国政府はGDPの1%に相当する、およそ2700億ドル(約42兆円)を少子化対策に費やしている。それは子供がいる世帯への減税やマタニティケア、さらには政府後援のお見

                              世界中の「出生率上昇のためのバラマキ」にはどれほど効果があるのか | 給付金は増えていく一方だが…
                            • 日本の研究チームが発見した「怒りを鎮める最も効果的な方法」 | 思っていることを紙に書いて破り捨てましょう!

                              もっとも効果的なアンガーマネジメント方法 太古の昔より、人類は怒りを制御する技術(アンガー・マネジメント)を考案してきた。 古代ローマのストア派哲学者セネカは「他人が犯す過ちよりも己の怒りの方が、自身に対して悪影響を与える」と信じ、それを避けるヒントを西暦45年の著作『怒りについて』に記した。 より近代的な方法として、ジムでサンドバックを殴ったり自転車を漕いだりするという手もある。だがある研究によれば、ちょっと紙を破くだけの方がより効果的に、そしてより手軽に、怒りを鎮められるかもしれないのだ。

                                日本の研究チームが発見した「怒りを鎮める最も効果的な方法」 | 思っていることを紙に書いて破り捨てましょう!
                              • 鳶職人が愛する「ニッカボッカ」スペイン紙がその歴史と魅力を徹底解説 | 「機能的であるのと同じぐらい美的」

                                建設現場の作業員たちがよく穿いているニッカボッカ。その不思議なフォルムに、世界でも関心の目が向けられているようだ。そこでスペイン「エル・パイス」紙がニッカボッカの歴史を探ってみると、単なる作業着以上の意味が見えてきた。 「日本の建設作業員は、ズボンを穿いて奮闘する必要がない」 インスタグラムに投稿された画像には、仕事着を着込んで並んだ日本の職人たちの姿が映る。脚の部分が幅広くて、くるぶしはギュッと絞ったズボンには、不思議な魅力がある。すでに1万2000人以上が、この制服に対してハートマークを贈っている(何人かは炎のマークも付けている)。 工事現場用の制服が、なぜこれほどまでに人を惹きつけることができるのだろう?

                                  鳶職人が愛する「ニッカボッカ」スペイン紙がその歴史と魅力を徹底解説 | 「機能的であるのと同じぐらい美的」
                                • アマゾン奥地の先住民族が、突然インターネットを使えるようになったら | スターリンクが変えた「僻地の日常」

                                  演説が長引くにつれ、人々の視線はスマホ画面へと逸れていった。インスタをスクロールする10代の若者たち。ガールフレンドにメールを送信する男性。そして、グループ初の女性リーダーが演説中だというのに、スマホに群がりサッカー中継を観戦する男性たち。 どこにでもあるような、ありふれた光景だ。だが、これが起きているのは、地球上で最も隔絶された地域の一つにある、先住民族の集落なのだ。 マルボ族は長年、アマゾンの熱帯雨林の奥地を流れるイトゥイ川沿いに、何百キロにもわたって点在する共同小屋で暮らしてきた。彼らは独自の言語を話し、森の精霊とつながるために幻覚剤のアヤワスカを飲み、クモザルを捕まえてスープの材料にしたりペットにしたりする。

                                    アマゾン奥地の先住民族が、突然インターネットを使えるようになったら | スターリンクが変えた「僻地の日常」
                                  • パープレキシティは「インターネット検索」を根本から覆すかもしれない | グーグルを脅かすAIスタートアップ

                                    ChatGPTほどまだ浸透してはいないかもしれない。だが、ソフトバンクも提携を発表し、じわじわとその勢力を拡大するスタートアップ企業「Perplexity(パープレキシティ)」。彼らが生み出した「回答エンジン」は、インターネットの検索システム自体を変えてしまうのだろうか。 ある日突然、グーグルの検索エンジンに取って代わるアプリケーションが出現したら──。これまでなら突飛な仮説でしかなかっただろう。だが、生成AIの新時代において、こうした仮説はますます現実味を帯びてきている。 もちろん、この技術を実質的に発明したと言える巨大企業グーグルは、まだ始まったばかりのAI戦争において、反撃するための資本と頭脳のリソースを充分有している。しかし、OpenAI(オープンAI)による「ChatGPT」のような対話エージェントの普及は、グーグルの主要な糧である「グーグル検索」を揺るがしつつある。何千ものスタ

                                      パープレキシティは「インターネット検索」を根本から覆すかもしれない | グーグルを脅かすAIスタートアップ
                                    • ひとたび導入されると、安楽死の基準はますます「緩く」なっていく | 「勧められる」人の多くは社会的弱者

                                      医療制度の改善が先 前編で紹介したアリソンの事例は、医療・社会福祉制度が破綻し、恥ずかしいほど長い治療の待機者リストと、他国と比べて低いがんの生存率という背景がありながらも、安楽死導入へとまっしぐらに向かおうとする英国などの国に疑問を投げかける。 アリソンは、こうした改革に向かう人々に何を伝えたいだろうか? 「まず、医療システムを改善してから安楽死導入を検討せよと言いたいです。さもなければ、それはとても危険な一歩となります。私たちには、死を選ぶ前に適切でタイムリーなケアを受ける資格があるのですから」 世界に先駆けて安楽死を導入したベルギーやオランダを取材すると、すでに医療差別や社会的疎外を受けている弱者集団への影響が大きいとわかる。 たとえば、2023年のある研究では、学習障害や自閉症を抱えて生きるのが苦しいというだけの理由で、8人のオランダ人が安楽死したことが明らかになった。ほかにも、そ

                                        ひとたび導入されると、安楽死の基準はますます「緩く」なっていく | 「勧められる」人の多くは社会的弱者
                                      • 追加関税、上等! それでもBYDが欧州製EVを凌駕するこれだけの理由 | 「中国のテスラ」がEU市場へ進撃する

                                        EUは域内の自動車産業を守るため、中国製のEVに追加関税を課すことを決めた。だが「中国のテスラ」とも呼ばれるBYDにとって、この規制強化は痛くもかゆくもないようだ。BYDの強みと戦略に英紙が迫った。 「EUは私たちを恐れている」 サッカー欧州選手権が開幕した6月14日、開催国ドイツはミュンヘンで開幕戦を飾った。ミュンヘンはサッカーの街として有名だが、それだけではない。ここは、ドイツを代表する自動車メーカー、BMWの本拠地なのだ。 しかし、開幕戦がおこなわれたスタジアムやテレビ中継にBMWやフォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツといったドイツメーカーのロゴが現れることはない。このヨーロッパ最高峰の国際大会のスポンサーを務める唯一の自動車メーカーが、中国の比亜迪(BYD)なのだ。 自動車売買サイト「オートトレーダー」によると、この広告キャンペーンの結果、大会最初の週末の6月14〜16日に、BY

                                          追加関税、上等! それでもBYDが欧州製EVを凌駕するこれだけの理由 | 「中国のテスラ」がEU市場へ進撃する
                                        • チップ・コンリー「中年の危機を乗り越えるには“さなぎ”の心構えが必要だ」 | 『モダンエルダー』の著者が語るミッドライフの楽しみ方

                                          中年期は大きな転換が必要だ。人生の後半に栄光と輝きを夢見る人はほとんどいないが、ベストセラー作家でホスピタリティー起業家のチップ・コンリー(63)の考え方は違う。 著書『ミッドライフを楽しむには:年を重ねるごとに人生が良くなる12の理由』(未邦訳)のなかで、コンリーはこう問いかけている。 「中年期の自然な移行を、危機としてではなく、“さなぎ”の時期と考えてはどうか。脱皮して、羽を広げ、知恵を世界に授粉しながら、私たちのなかにある深遠なものが目覚める時期だ」 米国の人口が急速に高齢化するなか、中年期を前向きな変化が起きる有望な時期として捉え直すことが新たな課題となっている。それを実現する方法についてコンリーに聞いた。 ──中年期の変化のロールモデルは誰でしたか? 父親です。彼は会社員として無難な道を歩んでいたのですが、40代後半で起業を決意しました。スタンフォード大学に子供2人を通わせ、もう

                                            チップ・コンリー「中年の危機を乗り越えるには“さなぎ”の心構えが必要だ」 | 『モダンエルダー』の著者が語るミッドライフの楽しみ方
                                          • 性急すぎるインターネット導入で、「アマゾン先住民族の日常」は一変した | ネットの使いすぎ、ポルノ視聴…

                                            マルボ族の近代化を推進した「一家」 ジャバリ・バレー先住民区域は、地球上で最も隔絶された場所の一つだ。ポルトガルに匹敵する広さの熱帯雨林が鬱蒼と広がり、道路はなく、迷路のように入り組んだ水路が張り巡らされている。ジャバリ・バレーに住む26部族のうち、19部族が完全な孤立状態で暮らしている。 その一つであるマルボ族も、かつては外界との接触がなく、何百年もの間、森の中を移動しながら生活していた。19世紀末に天然ゴムの違法伐採業者がやってきたことで、長年にわたる暴力と疫病に見舞われたが、同時に新たな習慣や技術がもたらされもした。 マルボ族は服を着るようになり、なかにはポルトガル語を学ぶ者も出てきた。イノシシ狩りに使う弓矢は銃に、キャッサバ畑を開墾するための鉈(なた)はチェーンソーに持ち替えられた。 この変化をとくに推進した一家があった。セバスチャン・マルボは、1960年代に森の外で暮らしはじめた

                                              性急すぎるインターネット導入で、「アマゾン先住民族の日常」は一変した | ネットの使いすぎ、ポルノ視聴…
                                            • オードリー・タンが都知事選候補で注目している「天才AIエンジニア」 | 「彼の考えるデジタル民主主義がすごく好きだ」

                                              9歳で独学でプログラミングを学ぶ 6月20日に告示日を迎える東京都知事選。そこで、ひとりの天才エンジニアの出馬が注目を集めている。 名前は安野貴博。6月6日の記者会見で立候補の意を表明すると、各界から反響が続出し、一躍注目候補に躍り出た。 なかでも熱いメッセージを寄せたのが、台湾の元デジタル担当大臣、オードリー・タンだ。 タンは2016年、35歳の若さで入閣したエンジニア出身の天才閣僚。タンのデジタル政策と強いリーダーシップで、台湾は見事なコロナ対応をおこない、「日本にオードリー・タンがいればなあ」と嘆く声が多く挙がったことは記憶に新しい。 タンは出馬の構想を語る安野に「彼の考えるデジタル民主主義がすごく好きだ。安野氏は『私たちは良い方向に変われる』と言っている」と大きな期待を寄せた。 デジタル民主主義とは、政治や行政をデジタル技術の力でより身近な存在にするとともに、多様でより良い社会を目

                                                オードリー・タンが都知事選候補で注目している「天才AIエンジニア」 | 「彼の考えるデジタル民主主義がすごく好きだ」
                                              • なぜ宗教を信仰する10代の若者は世俗的な若者よりも幸せなのか? | メンタルヘルスに顕著な差

                                                宗教を信仰する10代の若者は、世俗的な若者よりも幸せであることを示す研究が注目を集めている。 近年、米国では若者のメンタルヘルスの危機が度々報じられている。だが、信仰心の篤い10代の精神状態は、この社会的傾向とは異なり、安定しているという。 一体なぜか? 米紙「ボストン・グローブ」が掲載した、米国の高校生を対象とした「モニタリング・ザ・フューチャー」のデータ(1979〜2019年)によると、「信仰心の篤い10代」と「世俗的な10代」のメンタルヘルスに顕著な差がみられ始めたのは2010年以降だ。 同調査では、対象者を「世俗的な進歩派(リベラル)」「信仰心に篤い進歩派(リベラル)」「世俗的な保守派」「信仰心に篤い保守派」の4つのグループに分けており、そのデータは2010年以降、ほぼどのグループも孤独や不安、無価値感、憂鬱をより強く感じるようになったことを示している。

                                                  なぜ宗教を信仰する10代の若者は世俗的な若者よりも幸せなのか? | メンタルヘルスに顕著な差
                                                • 日本古来の「あの植物」が、英国の民家に多大な損害を引き起こしている | 敷地を越え、無限に広がる地下茎

                                                  自宅の床を突き破った「竹」 2022年夏、旅行先から帰宅した英国のスティーブン・ネビル(73)は、自宅のキッチンの中で「笹」が成長しているのを見つけたと、英紙「デイリー・テレグラフ」が報じた。床上に備え付けていたオーブンの扉から葉っぱが出ていたので、オーブンを取り外すと、なんとその奥に長く伸びた竹があったのだ。 Bamboo is the new Japanese knotweed: Homeowner faces £6,000 bill after he returned from holiday to find invasive plant had taken control of his home and was 'coming out of the oven' https://t.co/wtMqbnF6tC pic.twitter.com/s3G4Tadr3i — The Big

                                                    日本古来の「あの植物」が、英国の民家に多大な損害を引き起こしている | 敷地を越え、無限に広がる地下茎
                                                  • 「気力のスイッチは、切らないと入れることはできません」 | 岸見一郎 25歳からの哲学入門

                                                    【今回のお悩み】 「人生に疲れてしまって気力が出ません」 これまで仕事に熱心に取り組んできたのに、突然やる気を失ってしまった。モチベーションを保てなくなってしまったとき、どうしたらいいのでしょうか。哲学者の岸見一郎先生に聞いてみました。 仕事がたくさんあって忙しい毎日を送っていると疲れないわけはなく、もう何もしたくなくなることがあります。それでも、「人生」に疲れるのではありません。「仕事」に疲れるのです。 仕事を辞めれば、疲れは取れるでしょう。しかし、仕事を辞めたら生活していけなくなるので、それは現実的な選択肢にはなりませんが、ひとまず立ち止まるしかありません。気力のスイッチは、切らないと入れることはできません。 「疲れて気力が出ない、どうしたらいいか」と相談したら、誰もが仕事を休んだらいいと助言するでしょう。そんなことはいわれるまでもなく、わかっていると感じるかもしれません。何のためらい

                                                      「気力のスイッチは、切らないと入れることはできません」 | 岸見一郎 25歳からの哲学入門
                                                    • 分離手術を拒んだ結合双生児が、人生をかけて問いつづけた「正常」とは? | ジョージとロリ・シャペルの選択

                                                      2024年4月、「世界最高齢の結合双生児」として知られた米国のジョージとロリ・シャペルきょうだいが62歳で亡くなった。彼らが分離手術を望まなかった理由、結合双生児をめぐる医学的・倫理的論争の変遷に米誌が迫る。 知的障がい児の施設に入れられて ジョージ・シャペルは2007年、トランスジェンダーであることを公表し、医学的・倫理的論争の渦中にいる人々に加わった。シャペルにとっては一度通ってきた道だ。 1961年にペンシルベニア州ウェストレディングで生まれた彼は、生まれつき顔の左側と頭蓋骨の一部、脳の一部が双子のロリと結合していた。両親は医師の助言に従い、2人を知的障がい児施設に入れた。 当時、「先天性異常」の子供たちは、活動家のハリエット・マクブライド・ジョンソンが「障がい者強制収容所」と呼んだ施設に預けられるのが一般的だった。施設の目的の一つはそうした子供たちを世話すること、もう一つは世間の目

                                                        分離手術を拒んだ結合双生児が、人生をかけて問いつづけた「正常」とは? | ジョージとロリ・シャペルの選択
                                                      • 子供のスマホ制限派の専門家に反論「人類はスマホに適応できるのでは?」 | 経済学者タイラー・コーエン x 社会心理学者ジョナサン・ハイトが激論

                                                        名声経済に飲まれるZ世代 ジョナサン・ハイト(以下ハイト): 私の学生と話していると、Z世代の人たちはオンライン上の人間関係を維持するために毎日何時間も費やしています。これが彼らの生活の大部分を占めており、ほかのことに注意を向ける余裕がほとんどありません。 30歳未満で多大なインパクトをもたらしたインターネット界の人物がいないことはOpenAIのCEOサム・アルトマンも指摘しています。 しかし、あなたはZ世代がもっとも創造的で生産的な世代だと語っていましたよね。誰かZ世代で世界に大きな影響を与えた人たちを挙げられますか?

                                                          子供のスマホ制限派の専門家に反論「人類はスマホに適応できるのでは?」 | 経済学者タイラー・コーエン x 社会心理学者ジョナサン・ハイトが激論
                                                        • 愛か洗脳か─ボコ・ハラム“誘拐少女”が語る過激派との「幸福な結婚生活」 | 私は自ら彼らと暮らすことを選んだ

                                                          2014年、アフリカ西部のナイジェリアでイスラム系武装組織ボコ・ハラムが数百人の少女たちを誘拐したニュースは世界を震撼させた。被害者のなかには囚われの身から抜け出した後も、過激派に洗脳されたと疑われ、コミュニティから拒絶されるといった新たなリスクにさらされている人もいる。 米紙「ニューヨーク・タイムズ」が16歳のときに拉致された女性に取材し、9年に及ぶ戦闘員との波乱に満ちた結婚生活と脱出後の暮らしについて聞いた。 彼女は10年前、275人の少女たちと共に誘拐された。その彼女が、ついに脱出した。 サラトゥ・ダウダが連れ去られたのは、2014年、16歳のときだ。 ナイジェリア北東部の都市チボックにある寄宿学校に通っていたダウダは事件当日、クライスメイトたちと共に行き先も告げられないまま、トラックに乗せられた。ハンドルを握るのは、地元のイスラム系武装組織ボコ・ハラムのメンバーだ。 振り返ると、火

                                                            愛か洗脳か─ボコ・ハラム“誘拐少女”が語る過激派との「幸福な結婚生活」 | 私は自ら彼らと暮らすことを選んだ
                                                          • 5社の生成AIを競わせてみた結果、最も役に立ったのは? | 現時点の最先端はチャットGPTではなかった

                                                            家族計画を立てる際に人工知能(AI)搭載のチャットボット(自動会話プログラム)を頼りにできるだろうか。100万ドル(約1億5700万円)の投資や結婚式の誓いの言葉を作成する場合はどうだろうか。 人間のように会話するボットは2年前にはほとんど存在していなかったが、今や至る所にある。生成AIブームの火付け役となった「ChatGPT(チャットGPT)」やグーグルとマイクロソフトの製品に加え、無数の中小プレーヤーが自然な会話が可能な独自のアシスタントを開発している。 われわれは主要ボット5つを使用して一連のブラインドテストを実施し、どのくらい役に立つかを判定した。能力が抜きんでたチャットボットが見つかることを期待していたが、そうはならなかった。それぞれ得意・不得意な分野があった。その上、進化のペースも速い。われわれのテスト中に、オープンAIはスピードと時事知識が向上したチャットGPTのアップグレー

                                                              5社の生成AIを競わせてみた結果、最も役に立ったのは? | 現時点の最先端はチャットGPTではなかった
                                                            • ロシアの“偽詩人”が証明「プーチン体制はナチと同質だ」 | 丸パクリの「愛国詩」に絶大な支持

                                                              「敵」であるはずのナチ賛美の詩にロシアで人気が集まったことは、ナチもプーチン体制も同質だと示している Photo: Trifonov_Evgeniy / Getty Images 愛国詩の「新星」 ロシアでは、反戦や体制批判のメッセージを作品に盛り込む芸術家が国内で活動できなくなっている。その代わりに、体制によって推奨され、体制を支持する文化人らによって高い評価を受けるようになっているのが、いまウクライナでおこなわれている戦争やウラジーミル・プーチン大統領を賛美する「愛国的」な芸術だ。 そのような状況のなか、2023年夏から「愛国詩」(プーチンのプロパガンダに使われるZの文字から「Z詩」と通称される)の分野でにわかに頭角を現しはじめた人物がいた。 ゲンナジー・ラキーチンと名乗るその「詩人」は、モスクワのしがない学校教員で、それまで文学活動をしていなかったという。だが2023年7月から、ロシ

                                                                ロシアの“偽詩人”が証明「プーチン体制はナチと同質だ」 | 丸パクリの「愛国詩」に絶大な支持
                                                              • 「母親になるとキャリアに打撃」は本当か 最新研究で意外な結果が明らかに | 長期的に見れば有利な点も

                                                                子供を持つことで、女性のキャリアに支障が出るということはよく言われてきた。だが、長期的に見たとしても、女性たちが失われたキャリアを回復することはできないのだろうか? 私は前週までの育児休暇から復帰して、書く気満々だ。「子持ちになった途端、築いてきたキャリアが損なわれる恐れがある」とする研究も枚挙にいとまがないではないか。次は我が身、という恐れは早急に振り払うに越したことはない。しかし、ここで思い出す──自分は父親だった。それで、ほっとしてコーヒーを飲みに行く。 子供を持つことで被るキャリアの打撃、経済学者がいう「チャイルド・ペナルティ」で割りを食うと考えられているのは、母親だけだ(マザーフッド・ペナルティと呼ばれる)。 実は、子供の出産後に職場復帰する母親も、ひと息入れることはできるかもしれない。母となった自分の当面の手取りは減りそうで、父となった男の収入は変わりがないと知れば腹も立つだろ

                                                                  「母親になるとキャリアに打撃」は本当か 最新研究で意外な結果が明らかに | 長期的に見れば有利な点も
                                                                • 「金価格の高騰」は“世界秩序の変化”を信じる人が増えていることの証左だ | ドルが基軸通貨ではなくなる可能性

                                                                  金価格が急騰し、ドル建てでも円建てでも史上最高価格の更新が続いている。その価格はまだ上がるとの指摘もあるが、なぜこれほどまでに追い風が吹いているのだろうか。 米国の経済史学者ハロルド・ジェイムズが、金の歴史的な意味を振り返りながら、現在の金価格上昇の理由を解き明かす。 「安定」のための金 最近、金価格が高騰している。これが象徴するのは、世界秩序の変化と、紛争と不確実性の新時代の到来だ。各国政府と中央銀行は長い間、この貴金属を通貨の安定と経済の安全保障のための潜在的な源泉と見なしてきたが、今回も例外ではない。国際通貨システムのなかで金が再び脚光を浴びているのだ。 いまから50年以上前、リチャード・ニクソン米大統領が金ドル本位制を廃止し、金ドル交換を停止した。そうして貴金属との引き換えが約束されない不換紙幣の新時代が始まった。 しかしいま、分散型台帳技術やブロックチェーンなどの新しいテクノロジ

                                                                    「金価格の高騰」は“世界秩序の変化”を信じる人が増えていることの証左だ | ドルが基軸通貨ではなくなる可能性
                                                                  • 高齢化を食い止められるか? 「女漁師」が日本の漁業を変える日 | 「女は陸、男は海」の時代は終わった

                                                                    著しく高齢化が進む日本の水産業。人手不足が深刻な状況のなか、漁師を目指す女性の姿も見られるが、古くからの男社会が彼女たちの参入を難しくしているという。英「ガーディアン」紙が岩手県で取材した。 岡田真由美(49)は最後にひと振りして、水をたっぷり吸った重いロープを太平洋へ繰り出した。午後の強風で海面に白波が立つなか、夫の薫省(くにあき・54)が船室を出て船べり越しに目を凝らす。そして、最後に投入した幼生カキの稚貝が所定の位置まで下りたことを確認した。このカキが成長すると、東北地方の太平洋岸一帯の代名詞といえる大振りな身の高級食材となる。 3年前、岡田薫省は勤務していた旅行会社を辞め、妻の真由美とともに東京から500キロ北の岩手県大船渡市三陸町の小規模集落、泊(とまり)へ移住した。彼は以前から、漁師として一本立ちすることを夢見ていた。真由美は夫の夢を応援したが、彼女自身も海への憧れがあった。

                                                                      高齢化を食い止められるか? 「女漁師」が日本の漁業を変える日 | 「女は陸、男は海」の時代は終わった
                                                                    • 【解説】“悲惨な討論会”を見た海外の同盟国はトランプ再選に備えはじめた | 世界の各紙がバイデンを非難

                                                                      11月の米大統領選に向け27日開かれたテレビ討論会で民主党の現職バイデン大統領が苦戦したことを受け、米国の同盟国の一角では、共和党のトランプ前大統領の返り咲きに備える動きが強まっている Photo: Kenzo Tribouillard / Reuters 11月の米大統領選に向けて27日に開かれたテレビ討論会で民主党の現職バイデン大統領が苦戦したことを受け、米国の同盟国の一角では、共和党のトランプ前大統領の返り咲きに備える動きが強まっている。 討論会では、バイデン大統領は序盤から時折声がかすれ、言葉に詰まる場面もあった。バイデン氏が討論会で「高齢懸念」を払拭するという期待も高まっていたが、同氏の精彩を欠く姿を受けて民主党内でも動揺が広がり、一部の民主党員からは、候補者の交代という異例の措置が必要かもしれないとの見方も出ている。 海外の新聞各紙の紙面も、バイデン氏に対する非難が目立った。仏

                                                                        【解説】“悲惨な討論会”を見た海外の同盟国はトランプ再選に備えはじめた | 世界の各紙がバイデンを非難
                                                                      • 米紙が報じる、多すぎる外国人観光客に対する「日本人の本音」 | 「日本社会の忍耐力が試されている」

                                                                        多くの外国人観光客が押し寄せるなか、日本各地の観光地のみならず、以前はそうでなかった場所までもが彼らの振る舞いに悩まされている。米紙「ニューヨーク・タイムズ」が、住民たちの複雑な心境を聞いた。 最近では2回、マツモト・ショウジの理髪店に、散髪を希望する外国人観光客が入ってきた。正面のドアは半分以上開けると大きな音で軋む、そんな店だ。 1人目はイタリア人、2人目は英国人だった。75歳で、どちらの言語も話さないマツモトは、どうコミュニケーションをとればいいのかわからなかった。彼はハサミを手にとり、散髪を始めた。長年の経験だけを頼りに、この気まずいめぐり合わせを切り抜けることができますように、と願いながら。 2022年に新型コロナウイルス関連の入国制限が撤廃されて以降、円安の後押しを受け、旅行者が日本に押し寄せている。岸田文雄首相をはじめとする政府関係者のなかには、オーバーツーリズムを懸念する声

                                                                          米紙が報じる、多すぎる外国人観光客に対する「日本人の本音」 | 「日本社会の忍耐力が試されている」
                                                                        • 白人と付き合うアジア系女性を攻撃 新ネットスラングが危険すぎる! | 「オックスフォード研究」というコメントには要注意

                                                                          コメント欄に「オックスフォード研究」と書かれたら要注意 「オックスフォード研究」というフレーズが、TikTokなどのソーシャルメディア上で、アジア系女性、特に白人男性とデートをしたり恋愛関係にある女性たちを揶揄するために使われている。 英紙「ガーディアン」によれば、白人男性とのデートや恋愛について投稿するアジア系女性の投稿のコメント欄に「オックスフォード研究」という奇妙な書き込みが出てくるようになったのは「2023年の春頃から」。 通常「オックスフォード研究」というフレーズは、英国のオックスフォード大学での学術研究を指す。

                                                                            白人と付き合うアジア系女性を攻撃 新ネットスラングが危険すぎる! | 「オックスフォード研究」というコメントには要注意
                                                                          • 少子化の改善は「若年層」と「貧困層」にしか期待できない? | 的を絞った補助金だけでうまくいくのか

                                                                            子供の数が減っている層 しかしながら、出生率の問題はもっと複雑なものだ。大部分の原因は、ベッカーの理論が示唆するような、働く人の習慣の変化によるものではなく、若い女性があまり子供を産まなくなったということにある。 1960年代、米国の女性は平均3.6人の子供を産んでいたが、2023年には1.6人だった。驚くべきことに、30歳以上の女性のほうがより多くの子供を産んでいる。産む子供の数が減っているのは若い女性だけなのだ。 さらに、出生率の低下は若い世代のなかでも10代に特徴的である。米国全体の出生率の低下は、半分以上が19歳以下の女性がほとんど出産しなくなったことによって説明できる。だが、そうした出産のうち3分の1は無計画な出産であり、大部分は低所得の女性によるものだ。 プリンストン大学の社会学者であるキャサリン・エディンは、1990年代から貧困層の女性へのインタビューをおこなっている。彼女は

                                                                              少子化の改善は「若年層」と「貧困層」にしか期待できない? | 的を絞った補助金だけでうまくいくのか
                                                                            • ジョナサン・ハイト「スマホに支配された子供時代を終わらせるべきだ」 | 米国を揺るがした社会心理学者がいま訴えること

                                                                              ジョナサン・ハイトはニューヨーク大学教授で社会心理学を研究する。2022年、同氏が米誌「アトランティック」に寄稿した記事「アメリカ社会がこの10年で桁外れにバカになった理由」は米国内で大きな反響を呼び、バラク・オバマやジェフ・ベゾスは人々に一読を促した。 本稿はジョナサン・ハイトの『The Anxious Generation(不安な世代)』からの抜粋(全5編)である。 遊びと自立の衰退 脳に「爆発的な成長期」がある理由 ヒトの脳は、ほかの霊長類のそれに比べて格段に大きく、ヒトの子供時代もまた、極端に長い。大きな脳が特定の文化のなかで順応するには、充分な時間が必要だからだ。 ヒトの子供の脳の大きさは6歳くらいまでにすでに大人の脳の90%くらいに達する。そして、続く10~15年間で、規範やさまざまな社会的スキルを習得していく。 脳の発達はときに「経験期待型」だといわれる。特定の経験をすると期

                                                                                ジョナサン・ハイト「スマホに支配された子供時代を終わらせるべきだ」 | 米国を揺るがした社会心理学者がいま訴えること
                                                                              • 中東のAIをめぐる覇権争いの最前線 UAEとサウジアラビアの戦略 | 競うように砂漠にデータセンターを建設している

                                                                                砂漠に無機質な建物 ペルシア湾岸諸国を舞台にした人工知能(AI)覇権争いを自分の目で確認したいなら、ドバイ近郊のゴルフ場近くの工業団地内にある、看板も社名もない建物に行ってみるのもひとつの手だ。窓がなくて無機質で、驚くほど清潔な施設である。 内部に足を踏み入れると、床に粘着性のある青いフロアマットが敷かれており、外から砂粒が持ち込まれないようになっている。 肌を焼くような屋外の熱と同様、ごく小さな砂漠の砂塵ひと粒であっても、そこに格納されている数百万ドルもの機器に害を及ぼしかねない。 この巨大な施設は面積が2万3648平方フィート(2197平方メートル)で、稼働を開始したのは着工から18ヵ月後の2023年9月。データセンター企業エクイニクス(Equinix)がUAEで運用する4つ目のデータセンターだ。米国カリフォルニア州レッドウッドシティに本社を置く同社は、UAEの隣国サウジアラビアへの進

                                                                                  中東のAIをめぐる覇権争いの最前線 UAEとサウジアラビアの戦略 | 競うように砂漠にデータセンターを建設している
                                                                                • 世界中に550人以上の子供を持つ「シリアル精子ドナー」がいま語ること | 「5万時間を精子提供に費やした」

                                                                                  2023年、ジョナサン・マイヤーはオランダの裁判所から、新たな家族への「精子提供禁止」の判決を受けた。世界中で自らの精子を提供し、生まれた子供は550人以上だとされている。仏誌「ル・ポワン」の記者が、いまは木彫職人として静かに暮らしているというマイヤー本人を訪ねた。 オランダ、ハウダの小学校に勤めるナタリー・ダイクドレンスは、似通った顔の生徒たちを見るたびに、ある疑問が頭をよぎる。彼女の息子に似た子もいる。「この子もジョナサン・マイヤーの血を引いているのではないだろうか」 同国第二の都市ロッテルダムから20kmほど離れたこの街は、緑豊かで、新しい家々の前にはハイクラスのテスラ車が並ぶ。39歳のナタリーと、パートナーのスザンヌ・ダニエルズ(43)は、景観と静けさを求めて数ヵ月前にこの街に越してきた。彼らは二人の子供をここで育てている。15歳のエリザは初婚の時の子供で、プラチナブロンドの髪を持

                                                                                    世界中に550人以上の子供を持つ「シリアル精子ドナー」がいま語ること | 「5万時間を精子提供に費やした」