SFだった“量子コンピュータ”は、もう実現している。アルゴリズムで勝負する気鋭の研究者の現在地。基礎工学研究科・教授・藤井啓祐 現代のコンピュータは多くの人の目に「万能」と映っているかもしれない。「人工知能=AI」は人間より正確で安全な車の自動運転を近い将来に実現し、将棋や囲碁、チェスなどゲームの世界では、既に人間より強いソフトが登場している。人間が一生かかっても不可能な計算も、ノートパソコンなら瞬時に終わる。しかし宇宙的スケールで考えた時、今のコンピュータがどこまで進化しても手の届かない謎は際限なく残るだろう。近未来の「超コンピュータ」として、量子コンピュータへの期待が高まっている。この分野で世界の最前線を走る研究者の一人、大阪大学大学院基礎工学研究科の藤井啓祐教授の目に映る量子コンピュータの現在地と未来について聞いた。 量子物理が登場する以前の「古典物理」の世界において、物質は「ある」