飲み屋街に、ぽつりぽつりとネオンが灯り始める夕暮れどき。新宮通りから人1人がやっと通れるくらいの細い路地、裏銀座に入り込むと、赤い提灯が目にとまった。「香凜」と書かれたのれんをくぐると、あたたかい眼差しの女性店主が迎えてくれた。 「『ママさん』だと、私のことを呼ばれている気がしないの。みんな『リンちゃん』って呼んでくれるわ」中国の東北地方出身のリンさんは、18年前に留学生として日本に来て以来、別府で暮らしている。 中国では「香」という漢字を「料理がおいしそう」という意味で使うのだそう。それにリンさんの名前から音をとって「香凜」。店をオープンしたのは2014年。日本人にも覚えやすくて、音も、漢字も気に入っているのだとか。 子どもの頃はおばあちゃんと暮らしていたというリンさん。お手伝いをするうちに、中国の家庭料理である餃子のレシピを自然と覚えたのだそう。中国の餃子の特徴は、何と言っても餡となる