「市ケ谷台へ帰ると前庭に火焔(かえん)ともうもうたる煙が立ち上がっているではないか」。終戦時、陸軍省人事局に勤務していた軍人の回想である。8月14日から始まった「機密書類焼却」は16日まで続いたという▲先の軍人は自分の部屋に駆け込んで驚いた。「自分の机を見ると、引き出しの中は完全に空っぽで何も残っていない。同期生会関係書類も勿論(もちろん)である。怒鳴ってみたが後の祭り。私の留守中に勝手に火中に放り込んでしまったのだ」▲「機密」であろうとなかろうと、一切合財(いっさいがっさい)灰にしたのだ。当時、陸軍省や参謀本部は東京・市谷本村町にあって市ケ谷台と呼ばれたが、こちらはその跡地に建つ現代の「市ケ谷台」--防衛省の記録文書をめぐるすったもんだである▲国会で「ない」と説明されていた陸自のイラク派遣時の日報が出てきたと突然、防衛相が発表した。そう聞けば、元防衛相の辞任をもたらした南スーダンの国連平