ムスカの悪役として優秀なのは、若僧であるところである。物語における悪役は、強大でありながら、主人公たちに打ち倒されうる隙を備えていなければならない。狡猾でありながら間抜けであり、チェックメイトをかけながら説得力ある負け方をしなければならない。これは矛盾しやすく、難しい問題である。水も漏らさぬはずの一大犯罪計画に小学生でも気付く穴があって小学生たちに崩壊させられたり、悪辣非道の残虐帝王がヒーローの馬鹿丸出しテレフォンパンチにノーガードな接待プレイをして負けたりする。 ムスカはこの問題を動的に解決している。 つまり序中盤、「ムスカが主人公たちを抑えつける→突発事態が生じてアクションシーンに→ムスカが事態に臨機冷静に対処し立場を強める」という展開が繰り返される。ここではムスカは狡猾で、アクションシーンが一段落したとき、つねに得点を増やしている。得点が増え立場が強大になっていき、倒されるべき悪役と