あのあと築50年のアパートに帰宅した爺、年中出しっぱなしの炬燵の上にスーパーの袋をガサッと置く。袋の隣には小銭が散らばっている。次の年金の振り込みまであと5日。スーパーで惣菜を買いたかったが諦めて特売のカップ麺が今日の昼食だ。 流しは洗い物で溢れていて、この暑さで饐えた臭いがしている。妻が亡くなって三年、まともな料理を食べたことがない。最初の一年は呆然と過ごした。さまざまな手続きや片付けもあった。夢中で過ごした。一年経って、自分がまともな食事を取っていないのに気づいた。 特においしいとも思っていなかった妻の料理が恋しかった。とりわけ恋しかったのがポテトサラダだ。自分で作ってみたらどうだろう? 最近は男性向け料理教室などというものがある。たしか老人会でもあったはずだ。爺はずっと避けていた地域の集まりに行ってみようかと思ったが、いまさらと思ってやめた。 もともと社交的な性格でもなかった爺には、