研究会で以前、勝又が配布したレジメを参考までにここのアップしておきます。 ヴェルター・ベンヤミン「物語作家」 ニコライ・レスコフ の作品についての考察 Ⅰ[物語 の衰退と経験の貧困] 「物語作家(Erzaeler)は、わたしたちにとってすでに遠くなってしまったもの、そしていまおさら遠ざかりつつあるものだ。」レスコフを物語作家として描くことは彼との距離を大きくすることである。距離を置いたとき物語作家の特徴が彼の中でみえてくる。なぜ距離が生まれたかという、今私たちは「物語る技術がいま終焉に向かいつつある」ということを経験しているからである。以前は誰にもあった経験を交換するという能力が私たちから失われつつある。 それは経験の相場が下落してしまったからである。世界大戦において明白になったように、伝達可能な経験は豊かになるどころか乏しくなった。人々はそのちっぽけな身体を、[把握不能な]陣地戦やインフ