もうひとつの大きな課題は劇場側だ。大作が封切られると1作でシネコンのスクリーンを占拠してしまい、ほかの作品の上映機会が失われている。コロナ禍で危機的状況に陥った劇場側による2020年の緊急措置だった『鬼滅の刃』以降、それが一般化してしまった。 たしかに経済効率を求めるビジネスとして見れば理にかなっており、スクリーンを開けたぶんだけ実際に観客は入っている。 ただ、同時に本来のシネコンの特徴である多スクリーンで多種多様な作品を上映する機能は損なわれ、さまざまな作品を上映することで1人あたりの鑑賞本数を上げる映画界の最優先課題とは逆行する動きになる。 映画とは商業でありながら、多様性が求められる文化でもある。未来への映画文化の存続のために映画ファンを育てることが疎かになってはいけない。ひいてはそれがビジネスとしての繁栄にもつながる。コロナによって顕著になった映画界最大のジレンマと言えるだろう。