喜びから畏敬の念まで、芸術作品の鑑賞はあらゆる感情を呼び起こす。ときには怒りや落胆など、ネガティブな感情が引き起こされることもある。さらに、芸術の街といわれるような都市を訪れたときには、まれに気分が悪くなったり、精神的に圧倒されたりすることがある。 旅先で経験するそうした状態は、「スタンダール症候群」と呼ばれる。心拍数が増えたり、めまいや失神を起こしたり、不安や意識障害、幻覚に襲われたりすることさえある。 欧州精神医学会(EPA)が2021年、ジャーナル「European Psychiatry」に発表した研究結果はこうした症状について、「奇妙で耽美的なこの病は間違いなく、ルネサンス美術の特別な力を証明している」と述べている。 以下、そのスタンダール症候群の歴史と一般的な症状、発症しやすい人などについて、紹介する。 スタンダール症候群とは? スタンダール症候群は、圧倒的な数の芸術作品や文化的