ブックマーク / dain.cocolog-nifty.com (21)

  • 死ぬときに思い出す傑作『イギリス人の患者』

    死ぬときに思い出す小説の一つ。 あれを読めば良かったとか、これがまだ途中だったとか、未練は必ずあるはずだ。どんなに読んでも足りることはないから。そんな後悔の中で、エピソードや描写を思い出し、読んでよかったと言える作品の一つが、『イギリス人の患者』だ。 映画が公開されたときだから、20年以上前に読んだのだが、いま再読しても美しい。詩的で情緒豊かに紡がれる、四人の男女の破壊された人生の物語だ。 あらすじはシンプルだ。 第二次世界大戦の終わり、イタリア北部の半ば廃墟となった修道院が舞台となる。そこで生活を共にするのは、看護婦のハナ、泥棒のカラヴァッジョ、インド人の工兵のキップ、そしてイギリス人の患者となる。人生のわずかな期間にすれ違う男女が、自身の半生を思い出す。 ただし、けっして読みやすい、ストレートなお話ではない。 時系列は無警告で前後するし、エピソードの粒度や解像度はバラバラだ。後になって

    死ぬときに思い出す傑作『イギリス人の患者』
  • ファンタジーの最高傑作『氷と炎の歌』

    夢中にさせて寝かせてくれず、ドキドキハラハラ手に汗握らせ、呼吸を忘れるほど爆笑させ、ページを繰るのが怖いほど緊張感MAXにさせ、いしばった歯から血の味がするぐらい怒りを煽り、思い出すたびに胸が詰まり涙を流させ、叫びながらガッツポーズのために立ち上がるほどスカッとさせ、驚きのあまり手からが転げ落ちるような傑作がこれだ。 この世でいちばん面白い小説は『モンテ・クリスト伯』で確定だが、この世でいちばん面白いファンタジーは『氷と炎の歌』になる。 書いた人は、ジョージ・R・R・マーティン。稀代のSF作家であり、売れっ子のテレビプロデューサー&脚家であり、名作アンソロジーを編む優れた編集者でもある。 短篇・長編ともに、恐ろしくリーダビリティが高く、主な文学賞だけでも、世界幻想文学大賞(1989)、ヒューゴー賞(1975、1980)、ネビュラ賞(1980、1986)、ローカス賞(1976、1978

    ファンタジーの最高傑作『氷と炎の歌』
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    s1061123 2022/11/19
  • 新訳で劇的に面白くなった名著『新版 歴史とは何か』(E.H.カー)

    歴史とは現在と過去との終わりのない対話である ・世界史とは各国史をすべて束ねたものとは別物だ ・すべての歴史は「現代史」である 名言だらけのE.H.カーの名著。 昔は「教養を身につけるため」と有難がっていた。今でも教養課程の必読書とされているかもしれない。文系理系関係なく読むべき名著といえば、『理科系の作文技術』とこれだろう。 ところが、新訳を読むと、がらりとイメージが変わった。「教養を身につける」という体裁よりも、むしろ、ユーモア満載、毒舌たっぷり、ハラを抱えて大笑いできる一流の講義になる。 論敵をあてこすり、酷評し、嘲笑する。死者を皮肉り、(歴史学も含めた)人文学を軒並み張ッ倒し、強敵は名指しで祭り上げ、しかる後にメッタ斬り。 母親の膝のうえで学んだ子どもっぽいナイーヴな学説だとか、成績が「可」ばかりの学生みたいな史観だとか、めずらしく階級的感覚の低い発言だとか、嫌味と毒舌のオンパレ

    新訳で劇的に面白くなった名著『新版 歴史とは何か』(E.H.カー)
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    s1061123 2022/09/24
  • 料理観を揺さぶり、変化させる『料理の意味とその手立て』

    自炊歴も30年になると、料理も適当になってくる。 テキトーという意味ではなく、あり合わせのものでなんかするイメージ。レシピ通りに作らないし、調味料も目分量になる。代わりに、費と洗い物の最小化を目指したり、極限までサボったり、変わった料理に挑戦したりする。 自分の中で、「料理とはこんなもの」という料理観みたいなものが出来上がっている。そのため、普通のレシピは、レパートリーを増やすためにチラ見する程度になる。 一方で、私の料理観を揺さぶり、変化させるようなもある。何気なくやってた一手間が、実は深い意味を持っていたり、伝統&科学に裏打ちされた質が見えてきたりする。 ウー・ウェン著『料理の意味とその手立て』が、まさにそんな一冊だ。 中国家庭料理を紹介しているのだが、いわゆるレシピ集というよりも、料理についての考え方をまとめたエッセイと言ったほうがしっくりくる。料理する人には見慣れたことかもし

    料理観を揺さぶり、変化させる『料理の意味とその手立て』
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    s1061123 2022/08/13
  • プロが教える「伝わる動画」の技法『動画の文法』

    問題:以下の3つのカットを並べ替えて、次の文章を動画にしなさい。 「太郎くんは、花子さんを、愛している」 最初に出てくるカットに映っている存在が、動作の主(主語)になる。そして、その次のカットが動作そのものになる。そして、その動作の対象(目的語)になる。 止め絵なので脳内で再生してみてほしい。 すると、確かに太郎くんが目に入って、次にハートがドキドキしていたら、太郎くんの心象だと感じるだろう。そして、次に映ったものが、ドキドキの対象だと想像がつくはずだ。 問題2:上のカットを並べ替えて、次の文章を動画にしなさい。 「太郎くんと、花子は、愛し合っている」 解答はこの記事の末尾に載せておくが、テレビを見て育ち、日常的に動画を見ている皆さんにとっては楽勝だろう。それくらい、動画を見ることは、ごく当たり前のことになっている。 動画には文法がある 動画は、言葉と同じコミュニケーションツールなのだから

    プロが教える「伝わる動画」の技法『動画の文法』
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    s1061123 2022/08/01
  • 75歳以上は死を選べる制度『PLAN75』

    75歳以上の高齢者に死ぬ権利を認める法案が可決され、通称「PLAN75」という制度が施行された日。 75歳以上であれば、誰でも利用できる。住民票は不要で、支度金として10万円が出る(使い途は自由)。国が責任をもって安らかな最期を迎えるように手厚くサポートする制度だ。 この映画で最もクるのが、その生々しさ。 役所での手続き、コールセンターでのやり取り、いかにも「ありそう」な社会だ。劇中、制度への加入を促進するコマーシャルが流れるが、思わず信じ込んでしまえる。 あなたの最期をお手伝い もちろん反対の声もあるだろうが、それを押し切って導入され、諾々と従ってしまうだろうなぁという肌感だ。 主人公は、78歳の角谷ミチ(倍賞千恵子)。夫と死別して以来、ずっと独りで暮らしてきた。つつましい暮らしを続けてきたが、あることがきっかけとなり、PLAN75を考えるようになる。 貧乏な老人は死ねというのか? こ

    75歳以上は死を選べる制度『PLAN75』
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    s1061123 2022/06/27
  • 受験英語【だけ】頑張った私に足りないのは語彙力『英語の読み方』

    単語の意味、分かるだろうか? (私はほぼ全滅)。 1. US China Trade Deal - BBC News より ceasefire reciprocal subsidize thorny truce 2. China warned to show Taiwan respect - BBC News より decent reckless predecessor infurate 3. Coronavirus whistleblower doctor is online hero in China - CNN より epidemiologist death toll detain quarantine whistleblower 受験英語よりは少しレベルが高いけれど、BBCやCNNのニュースによく出てくる単語ばかりだという。 ceasefire は映画ゲームで「撃ち方止め!」と知

    受験英語【だけ】頑張った私に足りないのは語彙力『英語の読み方』
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    s1061123 2021/06/06
  • オデュッセイアを読むと何が起きるのか具体的に述べる

    100年前、米国で刊行された世界文学全集で、「モテるための古典」「1日15分であなたも教養人に!」と謳っている(※1)。 「人生を豊かにする教養」とか「必読の名著」といった教養を売り物にするがあるが、びっくりすほど何にもない。 書店でパラ見してみるがいい。どこからか引き写した簡単なまとめだけで、その名著とやらを読んで、人の何がどう変わったのか、ほとんど書いていないから。せいぜい、アイスブレイクのネタになったとか、「多面的な視点」みたいなふわっとした言い回しが関の山だ。 『オデュッセイア』を読んで起きたこと ここでは、反例として、わたしが古典を読んで、何がどう変わったかを述べる。できるだけ具体的に、ホメロス『オデュッセイア』を読んで起きたことを書く。 英雄オデュッセウスが故郷に帰る冒険譚で、行く手を阻む怪物や魔法使いを、知恵と勇気と女神様で乗り切る。ラストの、ライバルたちとの対決は、虐殺

    オデュッセイアを読むと何が起きるのか具体的に述べる
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    s1061123 2020/11/15
  • オンライン読書会で何が怖いか募ったら、1位が人間、2位が自然だった

    お薦めを持ち寄って、まったり熱く語り合う読書会、それが [スゴオフ] 。 いつもは皆で集まるのだが、世情が世情なだけに難しいので、Zoomでオフ会することになる。「オンラインでするオフ会」とは奇妙だが、主流になりつつある。 とはいってもノリは同じで、テーマを聞いてピンときたお薦めの作品への愛を語る。でも映画でも、音楽ゲームなんでもあり、展覧会や舞台を紹介して頂いたこともあった。 で、今回のテーマはホラー。夏には少し早いけれど、現実がホラーに侵されつつあるいま、リアルに呼応したところに反応してしまう。『呪術廻戦』から『The Last Of Us』まで、様々なホラーが集まる。 人間が一番こわい いくつかの作品に共通するのが、「生きてる人間が一番怖い」という思いだ。ゾンビや妖怪、ウイルスや獣といった類は、だいたい何をするか分かる。やってることは殺人や破壊でも、当人にしてみれば事だっ

    オンライン読書会で何が怖いか募ったら、1位が人間、2位が自然だった
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    s1061123 2020/05/24
  • すべての歴史は現代史である『日本近現代史講義』

    これは面白かった! 第一線の歴史学者による14講義。 「歴史」というと、教養マウンティングのWikipediaコピペか、イデオロギーまみれのチェリーピッキングが多いように見える。そんな中、歴史学者による実証的な手ほどきはありがたい。 過去を振り返るとき、わたしがよくやる誤りは、いま分かっている情報で判定しようとする姿勢だ。 たとえば、1941年のアメリカに対し、開戦を踏み切ったことについて。原油の依存先であり、圧倒的な国力差であるにもかかわらず、なぜ戦いを挑んだのか? 認知バイアスから見た対米開戦の理由 敗戦という事実から、それを「愚かな行為」と判断するのはたやすい。また「軍部の独走」など分かりやすい悪者を吊るし上げて思考停止するのもたやすい。しかし、そうした予断で向かってしまうと、貴重な歴史の証言から得られるものは少ないだろう。 そんなわたしの予断を、書の第8章「南進と対米開戦」(

    すべての歴史は現代史である『日本近現代史講義』
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    s1061123 2020/02/18
  • この本がスゴい!2019

    人生は短く、読むは多い。 毎年この時期、自分のリストを振り返るのだが、読みたいが尽きることはない。読むほどに、知るほどに、知識と理解と表現の不足を痛感する。 それでも読むし、ここに書く。読むことで豊かになり、書くことで確かになるというのは当で、読んでいるときに何を知りどう考えていたかは、書くことでハッキリする。 つまり、自分で分かるために書いているのだ。フランシス・ベーコンは、話すことで機敏になるとも言ったが、わたしの場合、話すことで世界が変わった。[スゴオフ]や読書会、[冬木さんとのSF対談]や、読書猿さんとの知をめぐる対談[1][2][3]で、世界の見え方が変わった。 読書会や対談は今後もしていくが、そこで紹介されたや、2019年に出会ったの中から、わたしにとってのベストを選んだ。これが、あなたにとってのスゴとなれば嬉しい。そして、このリストを目にしたあなたが、「それがス

    この本がスゴい!2019
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    s1061123 2019/12/01
  • まとめ「中高生の進路選びに役立つ話」

    学校の先生は、大学と偏差値の話しかしない。 そのくせ、個性だ適職だと言ってくる。 だいたい、未来がどうなるかも分からないのに、 いま決められるわけがない! どの時代の若者も、進路について悩んできた。 そんな悩める中高生のために、進路と生き方について、[スゴオフ]で、人生の先輩と話す会を企画した。様々なキャリアの人をお招きし、やって良かったこと、こうすれば良かったと後悔していること、あの頃に戻れるなら、どんな選択をするか等、いろいろ話してもらったので、ここにまとめる。 人を探せ・英語をやれ 最初はわたし。 やって良かったことは、「人」で進路を選んだこと。高校時代にハマった人に師事したく大学を選んだのだが、正解だった。この姿勢はいまにも通じる。興味のある方向の先にいる「人」を探し、私淑・親炙する(この方法は読書猿『アイデア大全』の「ルビッチならどうする?」に詳しい)。 しかし、「人」が分から

    まとめ「中高生の進路選びに役立つ話」
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    s1061123 2019/07/24
  • 「古典は本当に必要なのか」討論会へ行ってきた

    古典不要派と必要派がガチで議論するシンポジウム「古典は当に必要なのか」を見てきた。パネリストの紹介は[「古典は当に必要なのか」シンポジウム]で、youtube や twitterまとめ([第一部]、[第二部])で見ることができる。 3行でまとめる+問題の質 長いので3行でまとめる。「高校の古典(古文・漢文)は必要か?」という議題に対し、 不要派:古典は選択科目にして論理国語に注力すべき。あと現代語訳でおk 必要派:幸せに生きるための古典は原文も一緒でないと 会場の声:必要派が優勢だが、現場では現代語で教えてるのが実情 そして、この問題の質は次の通り。「古典は必要か?」と問われれば、必要に決まっている。問題なのは、どれくらい必要なのか? と問われていることに気づいていないことである。 そして、もっと厄介なのは、「これくらい必要」の「これくらい」は何を根拠にそう言えるのかを、示せていな

    「古典は本当に必要なのか」討論会へ行ってきた
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    s1061123 2019/01/20
  • 読書猿さんと飲んできた: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる

    楽しすぎる&もったいなすぎる会だった。ボイレコ録って文字に起こしたら、それだけでお金もらえるじゃね? というぐらい。 まず「読書猿さんって誰?」という人は、今すぐ[読書猿]に行って帰ってこなくてもよろしい。知らないなら人生損していると断言できるブログだ。どれか一つでもいいので実践したら、それだけで財産になる。 昨今、ハリボテの知の巨人や偽物の教養人が跋扈し、「教養」を人質にコンプレックスを煽って小金を稼いでいる。そのせいで「教養」という言葉が棄損されており、彼を何て呼べばいいか悩む。「哲人」が最適かな(鉄人にも通じるし)と思うが、人は[フィロロギスト]だという。 そんな読書猿さんから、一を投げると十ぐらい返ってくる(1)博覧強記のライトニングトークと、(2)ネットで言えない/聞けないこと、そして、わたしの課題である(3)英語力向上へのアドバイスをもらった。 5時間ぶっつづけでお話したが、

    読書猿さんと飲んできた: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる
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    s1061123 2018/11/11
  • 他人と比較するバカ親にならないために

    比べるのは、「昨日のわが子」。これを忘れないために。 「Appleになれない日のメーカーはダメ」とか、「北欧並の社会保障がない日はクソ」といった主張を耳にするたび、苦笑しながら自戒する。同じ愚を犯していないだろうかと自問する。近所で/クラスで/学年で、一番デキる子と比べ、「○○ちゃんを見習って…」と子どもを責める馬鹿親にならないために。 転職の自由はアメリカと比較され、 仕事を休む自由はドイツと比較される。 社会保障の充実はスウェーデンと比較され、 バカンスの充実(と長さ)はフランスと比較される。 国内総生産は中国と比較され、 国民総幸福はブータンと比較される。 イイとこと見たらアラも目立つ。 にもかかわらず、己が主張をオっ立てて、 「○○と比べて日はダメだ」を連呼する。 日のスーパーのトマトは、「桃太郎」と「プチトマト」しかないという。イタリアは何十種類もトマトがある。だから日

    他人と比較するバカ親にならないために
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    s1061123 2018/10/08
  • 日本一簡単なオーブン料理『村井さんちのぎゅうぎゅう焼き』

    まず結論。オーブン料理はこの3ステップに尽きる。 1. 切れ 2. 予熱しろ 3. 焼け これだけ? そう、これだけ。 切るといっても「火が均一に通るよう、材の大きさをそろえて切る」とか、焼くといっても「200度で30分、ようすを見て追加で焼く」など、いろいろアドバイスがあるでしょう。そもそも、材は何? 味付けはしないの? オリーブオイルとか……確かにそうだ。 そうなんだけど、細かいことはいいんだよ。べたいのを、切って焼くだけ。下ごしらえしたら、後はオーブンに任せておけばいい。味付けは適当でおいしい。 ただし、一点だけポイントがあって、それは「予熱をする」なんだ。狙った時間で出来上がりにするために押さえておきたい。さもないと、時間になっても中まで火が通っておらず、外は焦げている代物ができあがる。そこさえ気をつければ、なんとかなる。 まずはオーブン機能を使ってみるのが大事。これ読むと、

    日本一簡単なオーブン料理『村井さんちのぎゅうぎゅう焼き』
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    s1061123 2016/12/11
  • わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる: 東大、京大、北大、広大の教師が新入生にオススメする100冊

    毎年この時期になると、「東大教師が新入生にオススメするベスト100」という企画で紹介してきたが、飽きた。 ほとんど変わり映えしないリストにも飽きたし、毎年「ベスト1はカラマーゾフ!」とハヤすのも飽きた。カラ兄が最高であることはさんざん宣伝してきたから、皆さんご承知だろう(異論・反論大歓迎、これを超えるものがあるならね)。 だから、今回はスコープを広げてみる。 ■ この企画の趣旨 東京大学に限らず、新入生を迎えるにあたって、センセイたちは思うところがある(はずだ)。ゼミにくる前に、せめてこれぐらいは読んでおいてもらいたいと望んだり、若かりしころハマったで自分語りをしてみたり。そうした願望を吸い上げているところもいくつか見つけた。以下のとおり。 リスト1 「北海道大学教員による新入生への推薦図書」 リスト2 「京都大学新入生に勧める50冊の」 リスト3 「広島大学新入生に薦める101冊」

    わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる: 東大、京大、北大、広大の教師が新入生にオススメする100冊
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    s1061123 2015/09/28
  • 『なぜエラーが医療事故を減らすのか』はスゴ本

    「バグを排除しようと圧力をかけると、バグが報告されないプロジェクトになる」 この寸言は、よく忘れられる。シックス・シグマや日経ナントカに染まった管理者が、バグを目の敵にし、バグゼロの号令をかける。不具合が表面化すると、たまたまそこに詳しいだけの担当を犯人扱いし、なぜなぜ分析を強要し、ccメールや全体会議で晒し者にする。 なぜなぜ分析とは、「なぜそれが起きたのか?」「その原因の原因は?」と、原因を幾重にも掘り下げる手法のこと。5段階も遡及すると、たいてい「私の不注意でした」となり、対策は「意識を入れ替える」という小学校の学級目標になる。反面、もっと深刻な「仕様変更が電話口で伝えられていた」とか「アジャイルの名のもとにテストが省略されていた」などは放置される(なぜなら、「人」を原因にしたいから)。 こんな冗談みたいな施策を続けていくと、スケープゴートになった人はどんどん心をすり減らし、不具合の

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    s1061123 2015/06/20
  • 『ゲーデル、エッシャー、バッハ』はスゴ本

    一生モノの一冊。 「スゴ=すごい」の何が凄いのかというと、読んだ目が変わってしまうところ。つまり、読前と読後で世界が変わってしまうほどのこそが、スゴになる。もちろん世界は変わっちゃいない、それを眺めるわたしが、まるで異なる自分になっていることに気づかされるのだ。 『GEB(Godel, Escher, Bach)』は、天才が知を徹底的に遊んだスゴ。不完全性定理のゲーデル、騙し絵のエッシャー、音楽の父バッハの業績を"自己言及"のキーワードとメタファーで縫い合わせ、数学、アート、音楽、禅、人工知能、認知科学、言語学、分子生物学を横断しつつ、科学と哲学と芸術のエンターテイメントに昇華させている。 ざっくりまとめてしまうと、書のエッセンスは、エッシャーの『描く手』に現れる。右手が左手を、左手が右手を描いている絵だ。「手」の次元で見たとき、どちらが描く方で、どちらが描かれている方なのか、

    『ゲーデル、エッシャー、バッハ』はスゴ本
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    s1061123 2014/05/11
  • キッチン・サイエンスの定番『料理の科学』

    キッチンで起きるマジックの根原理を、誰でも分かるように噛み砕いたエッセイ。章末には嬉しいレシピのおまけつきで、試したくなる。 ふだん料理をする人は、材や調理道具の背景にある科学をどこまで理解しているだろうか。「おばあちゃんの知恵」だったり、レシピの受け売りばかりで、「なぜそうなのか」を説明できない場合が多いのではないか……といより、わたしがまさにそう。書は、「ふだん料理をする人」が、料理の素朴な疑問に対し、科学の視点から答えている。 たとえば、パスタを茹でるとき塩を加える当の理由は?なぜ「塩する」と長持ちするのか?「冷凍焼け」とは?アルコールを飛ばしても残っているのでは?炭火とガス火の違いは?圧力鍋の原理は?電子レンジの原理は?品照射は"安全"か?などなど(全ての疑問は、一巻目次と二巻目次に載っている)。 わたしの場合、料理漫画やウロ覚え知識で、「炭火とガス火」と「圧力鍋の原理

    キッチン・サイエンスの定番『料理の科学』
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    s1061123 2013/07/10