「寄り道作家」花開く 冲方丁さん、吉川英治新人賞2010年3月30日冲方丁さん 作家・冲方丁(うぶかた・とう)さん(33)が、時代小説『天地明察』(角川書店)で吉川英治文学新人賞の受賞を決め、本屋大賞にもノミネートされた。才能を開花させるまで、努力と失敗を重ねてきた姿は、作品の主人公、渋川春海の人生とも重なる。 『天地明察』は江戸時代前期が舞台。算術を愛する碁打ちの渋川が、誤謬(ごびゅう)が明らかだった従来の暦を改めるまでを語る。何度も改暦に失敗したが、あきらめずに達成した実在の人物だ。 暦への関心は、海外生活が原点だ。4〜14歳、シンガポールやネパールで過ごした。学校で「宗教は?」と尋ねられた。仕方なく「フリー」と答えてきたが、心に引っかかっていた。帰国後にカレンダーを見て気付いた。「これが日本人の信仰心なんじゃないか」と。「陰陽五行も、クリスマスもうまく取り込んでいますよね。この『無節