72年の沖縄返還の交渉責任者だった吉野文六・元外務省アメリカ局長(91)が12日、返還協定で日本が米国に支払うと定められた3億2千万ドルのうち、核兵器撤去費とされた7千万ドルについて「どんぶり勘定だ」と述べ、日本側だけで決めた積算根拠のない額だったと明らかにした。核兵器撤去を大事業と印象づけ、撤去を求める世論に返還の意義を訴える狙いがあった。 吉野氏は12月1日、沖縄返還の「密約文書」の存否をめぐる情報公開訴訟で、証人として出廷する。これを前に、朝日新聞の取材に語った。 鳩山政権は、核兵器を積んだ米艦船の日本への寄港・通過は「核持ち込み」に当たらないなどとする日米間の密約4件の調査を進めている。吉野氏はこのうちの、米軍の用地を田畑などに戻す「原状回復補償費」を日本が肩代わりするとした沖縄返還密約の当事者。米側が本来負担するはずの補償費400万ドルは核兵器撤去費の項目に潜り込ませていたこ