幼保一元化を阻む縦割り行政の“供給”発想 今回は、幼稚園と保育所の施設や運営を一体化する「幼保一元化」の議論をケーススタディに、「縦割り行政とはいったい何なのか」を読み解いていく。 幼保一元化とは、幼稚園に保育所の機能を持たせること、逆に保育所で幼児教育を施せるようにすること、である。現状は、幼稚園は少子化で定員割れに悩み、保育所は足りず2万人近い待機児童の解消を迫られている。 それぞれの児童数は対照的に変化してきた。1998年を境に幼稚園と保育所の園児の数が逆転した。その後、幼稚園児の数は右肩下がりで減少。保育所入所児は増加。2005年には、幼稚園児数174万人に対して、保育所入所児数212万人と大きく差が開いた。子供の数が減少しているにもかかわらず、保育所入所児の数だけが増加しているのである。 女性の社会進出と共働きの家庭が増えたことが原因と考えていいだろう。戦後の結婚後の女性
東京都ベンチャー技術大賞〜民のアイデアを都がサポート 今回は「東京都ベンチャー技術大賞」の話をしてみたい。これは小さくても世界に通用する技術を持ったベンチャー企業が開発した革新的な製品を、東京都が表彰してその功績を讃え、ビジネスを応援する制度だ。大賞1件、優秀賞2件程度、奨励賞3件程度を選出する。それぞれに、300万円、150万円、100万円を進呈する。 2007年の表彰式は10月25日。115件の応募があり、8件が賞の候補としてノミネートされている。 いずれも「モノづくり大国日本」の名に恥じない興味深い技術。どれが大賞を受賞してもおかしくない。この機会に紹介したい。 糖尿病治療に朗報、無菌ウジが壊死した組織を食べる 僕が最も興味を惹かれたのは、バイオセラピーメディカル社が開発した『マゴットセラピーシステム』。ハエの幼虫(ウジ)が動物の壊死組織だけを摂取する性質を利用して、人体の
「政治とカネ」の報道は魔女狩りと化している 魔女狩りは、藤波孝生という有為の人材を葬り去った 話をリクルート事件に戻そう。 東京地検特捜部は、松原室長を贈賄罪で逮捕、起訴した。もちろん、最終的な狙いは江副浩正会長だ。ところが、特捜部は松原室長を落とすことができなかった。松原室長は最後まで、自分一人で考えて、自分一人で実行したという主張を貫いた。 しかしこれがリクルートをさらに追い込む形となった。 「正義の罠」には以下のような記述がある。 検察は松原事件の追及に失敗した。結局、本命である江副を立件できなかった。あきらかに敗北である。だが、検察を大屈辱の敗北に追い込んだことが、結果としてリクルート疑惑が大疑獄化することになった。検察は、敗北の屈辱から名誉を奪還するためには、疑惑を大疑獄化し、それに完勝しなければならないと決意し、それを断行することが正義だと位置づけた。検察は常に「正
社会保険庁ではリストラできるのに… ここで、中央官庁におけるキャリア組の出世システムを簡単に説明すると、30歳前後で課長補佐になるのが一般的。そして40歳ほどで課長に昇進する。ここまではいいのだが、問題はそれからである。 定年まで20年も残しているのだが、課長の上のポストというと局の審議官しかない(部長を置いてある部署もあるが)。これは、局に1人か2人である。その上は局長で、これはもちろん局に1人。 局の数は省庁内で七つか八つ程度、審議官はせいぜい20~30人である。となると、幹部に昇進できないキャリア組は、課長のうちに外に出さないと、中央官庁のピラミッド構造が維持できないわけだ。このシステムこそが、天下りの温床となっているのである。 民主党の天下り廃止案は、出世競争に破れたキャリア組も定年まで雇って、仕事をさせろというものだ。それはそれで一理あるが、かなりのコストがかかってしまう
景気拡大が続いている。拡大のペースは非常に緩やかではあるが、その間に雇用関係の指標も大きく改善した。 2002年1月に0.5倍と最低を記録した有効求人倍率は、2007年7月には1.05倍に上昇。有効求人倍率が1倍を超えるということは、数字の上では、すべての求職者に求人が行き渡っていることを示している。 直近で有効求人倍率が1倍を超えていたのは、バブル期の1988年から1992年までのことだから、現在の求人の盛り上がりは、数字を見る限りバブル期並みということになる。 こうした状況を指して、構造改革路線は正しかったという学者が少なくない。「改革が成功したからこそ雇用情勢が改善した」と彼らは主張する。だが、それは本当だろうか。 有効求人倍率が改善したからといって、素直に喜べないのにはわけがある。通常の有効求人倍率には、パートタイマーの求人が含まれているからだ。 正社員のみの求人倍率は、
安倍首相の辞任で再び中枢不在の「官僚主権」が台頭する 安倍晋三首相が辞任した。この出来事から官僚主権と日本独特の権力構造を分析しておきたい。 日本の権力構造には中枢が存在しない。1府12省がそれぞれ権力を持ち、13の小政府を形成している。だが統一政府は存在しない。 安倍首相は、官邸を権力の中枢とする官邸主導型の統一政府を目指した。小泉純一郎前首相が推進した官邸主導政治を引き継ぐ使命感を持っていた。小泉政権の官邸主導政治は、企業で言えば、役員会が重要事項を決定するかたちに近い。 今回の辞任で、再び中枢機能が低下するだろう。先の参院選で、民主党が参議院の第一党となった。国会で与野党の力は伯仲している。自民党だけで法案を通すことは不可能になった。これまでなら役員会で決めることができた案件も、国会という社員総会で決めることになる。 国会での話し合いがメインになると、官邸の役割はあまり重要
「政治とカネ」の報道は魔女狩りと化している 今回は、マスコミが報じる「正義」について話したいと思う。 「政治とカネ」に関する最近の新聞の論調やテレビの報道を見ていると、これはちょっと危うさを感じる。「政治家は身ぎれいでなければいけない」……これは確かに正しい。しかし、マスコミは過剰反応し、国民は、行き過ぎた潔癖症に陥っているのではないだろうか。 ビジネスにはビジネスのルール、政治には政治のルール 僕は作家を生業としている。作家としての活動は「ビジネス」とみなされるので、収入と支出は税理士にチェックしてもらい、税務署に申告をしている。経費がたとえ1円であっても、領収書を貼り付ける。「ビジネス」の場合、これがルールだからだ。 いっぽう政治資金規正法は、5万円未満の支出の場合、領収書を添付する必要はないというルールを定めている。にもかかわらず、5万円未満の支出に対する領収書を要求し、そ
景気は回復、けれど雇用者の収入は減っている 非正社員の増加と不況の長期化との間には、必ずしも関係はない。そのことは雇用に関する数字を比べてみればすぐに分かる。 例えば、完全失業率の推移は、2002年6月に史上最悪の5.5%を記録したが、2007年6月には3.7%にまで改善している。また、有効求人倍率は2002年1月に0.5倍と最悪水準となったが、これも2007年6月には1.05倍と急速に改善している。これでも分かるように、このところの景気拡大によって、雇用状況を表す数字自体は劇的に向上してきたのである。 では、その間に非正社員の数はどのように推移したのか。 総務省統計局が公表している「労働力調査」によれば、雇用者全体に占める非正社員の比率は、2002年1~3月期に28.7%だったものが、ほぼ一貫して上昇を続け、2007年1~3月期には33.7%と過去最高を記録している。 つまり、
労働ビッグバンは時間をかけてでも実現すべきだ〜八代尚宏・国際基督教大学教授インタビュー(3) (荒川 龍=ルポライター) (前回「解雇ルールを法制化した労働市場が必要」はこちら) 経済財政諮問会議民間委員である八代尚宏・国際基督教大学教授へのインタビューは今回が最終回。あまり知られていない事実がいくつか明らかになった。例えば、現在の労働基準法の下では、場合によって裁量労働制が違法行為となるリスクがあること。ホワイトカラー・エグゼンプションと休暇取得義務の不明確な関係など……。 経済財政諮問会議での議論をふまえて、6月中旬、政府が「骨太の方針2007」原案を発表した。その原案に記載されていなかったために、一部の報道機関は、「労働ビッグバン」構想は「自滅」したと報じた。だが、八代氏は「まだ消えていない。時間がかかっても実現すべきだ」と力説した。 正規・非正規社員の賃金格差の是正に「同
解雇ルールを法制化した労働市場が必要〜八代尚宏・国際基督教大学教授インタビュー(2) 2007年9月5日 (荒川 龍=ルポライター) (前回「非正規社員の増加は正規社員の雇用を守るため」はこちら) 今回は、「整理解雇ルールの法制化」と「欧州型の職種別労働市場への移行」について、八代尚宏・国際基督教大学教授に話をうかがう。「整理解雇ルールの法制化」においては、労働者を職場復帰させずに金銭を支払うことで解雇を有効とする「金銭賠償の必要性」が議論の俎上に乗っている。「欧州型の職種別労働市場」は、決まった職種におけるスペシャリストとして労働者を雇用し、企業規模の大小にかかわらず「同一労働・同一賃金制」を実現すること。労働者の転職が容易になるという。 企業の枠を超えて、円滑に転職できる労働市場の創設が必要 Q2)の1 「高度経済成長期につくられた日本型終身雇用や年功制度は、現在のような低成長期には
整理解雇は認めるべきか (荒川 龍=ルポライター) (前回「格差は是正できるか」はこちら) 「労働ビッグバン」構想は、停滞した産業から堅調もしくは好調な産業へ、労働者の転職を円滑にする仕組みづくりや、整理解雇ルールの法制化を目指すことを柱の一つにしている。今回はその部分に焦点を当ててみたい。 3人の専門家からは、「好不況に応じて、労働者とくに熟練労働者を安易に他の産業へ転職させることは、机上の空論であるだけでなく、日本の国際競争力をも失わせる」(高梨昌・信州大学名誉教授)、「整理解雇ルールの法制化は、労働者保護の観点から定められた『整理解雇の4要件』(くわしくは後述)を骨抜きにする」(中野麻美・NPO法人派遣労働ネットワーク理事長)、そして「整理解雇ルールの法制化は、一部の経営者だけの利益を図ろうとするもので見過ごせない」(後藤田正純・衆議院議員)などの意見を聞くことができた。
格差は是正できるか (荒川 龍=ルポライター) 7月5日に閉会した通常国会は、ビジネスパーソンの働き方にかかわる多くの問題が議論される国会だった。政府は、雇用ルールを見直す6つの法案を提出。そのうち、正社員とパートの平等な処遇を図るパートタイム労働法改正案などが成立。しかし、焦点となった3法案……最低賃金法改正案、残業代の割増率を引き上げる労働基準法改正案、新法となるはずだった労働契約法制定(解説はこちら)……は成立しなかった。今秋に審議がずれこむことになる。 ビジネスパーソンの大きな注目を集めたがゆえに、 政府が法案化を見送った制度もあった。一定条件を満たす会社員を労働時間規制から外す「日本版ホワイトカラー・エグゼンプション」だ(関連記事「ホワイトカラー・エグゼンプションは『残業代ゼロ』ではない」。「残業代ゼロ制度になる」との危惧がビジネス界に広がった。 先の国会で成立しなかった
第96回 「求人募集の年齢制限」禁止、中高年が活躍する社会へ 経済アナリスト 森永 卓郎氏 2007年8月27日 先の通常国会で改正雇用対策法が成立し、10月から施行されることになった。今回の法改正の目玉は、求人における年齢差別の禁止である。これにより、求人の際に年齢を明示することが、ごく一部の例外を除いて禁止されることになった。「35歳未満」「50歳未満」といった、今までごく普通に行われてきた求人の年齢指定が、これからはできなくなるのだ。 これは、年長のフリーターや高齢者の再就職対策の一環であると同時に、年齢差別禁止という世界的な流れに従うという意味も含まれている。 既に年齢差別禁止法のある米国では、面接の際に、年齢を尋ねることさえ禁止されているという。年齢ではなく、仕事をする能力で選ばなければならないというわけだ。 日本でこれが実施に移されると、求人の現場では当初、大きな混乱が
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