今年は時間的な問題で例年ほどたくさんの小説を読めませんでしたけど、それでもいくつかの"凄い"小説に触れることができました。それは『北方水滸伝』であり、『笑傲江湖』であり、『闇の公子』であったと思います。いずれの作品も、私の頭の中にある「読書」という概念のありかたを、また少し変質させてくれました。 ただ、今年読んだこれらの作品の中でベストとなるものをあえて一冊を選ぶなら、およそ30年も前にマイクル・コーニイによって著され今年日本で復刊された『ハローサマー、グッドバイ 』を私は挙げます。 ある意味では不幸なことに、本作はそのすばらしさを具体的に説明できる種の作品ではありません。なぜなら本作は描写力や表現力といったものを何よりの武器としていて、何かぱっと聞いて分かりやすい掴みや売りを持っているわけではないからです。たとえば本作を青春小説、SF小説と呼ぶことは可能でしょう。でも、そういった言葉は結
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