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ブックマーク / blog.nagao.nuie.nagoya-u.ac.jp (10)

  • 長尾のブログ2.0: 会議革命、その後(後編)

    僕は、最近になってようやく自分の間違いに気がついた。 議論のスキルが向上するために最も必要なものは、ツールを使いこなすテクニックではなく、議論への参加意欲だった。 だから、どんな支援ツールを開発して運用しても、参加意欲がわかないのならば、学生たちの議論スキルの向上には結びつかないだろう。 実は、ゼミの成績を決めるときに、彼らの発表数と発言数を用いているのだけど、それがインセンティブになって積極的に参加してくれるかと思ったら大間違いだった。 つまり、参加者の意欲を高めることにもっと注力すべきだった。 どんな会議でもそうなのかも知れないけれど、僕たちのミーティングでは、ほとんど発言しない人がいる。 成績に関係するからたくさん発言してください、と言ってもその直後くらいに、申し訳程度に一度か二度発言するだけで、後はずっと黙っている。 講義じゃないんだから、黙って聞いていればよいというものではない。

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    sassano 2009/04/05
  • 長尾のブログ2.0: 形態素を数えてみたら

    人は一生のうちにどれだけの量の文章を書くのだろう。 前回のエントリーで紹介したタイムマシンボードのテキスト入力のために、僕がこれまでに書いてきた文書を使って辞書(読みや表記の一部から単語を引くもの)を作ってみた。 それには、2冊の著書(1997年と2000年に書いたもの)とこのブログ(2005年8月から今月までのもの)といくつかの(単著の)論文から得られた形態素(文法的に分割される文の最小単位)が含まれている。 僕は、これはほぼ10年分くらいの個人的な文書量だと思っている(ただし、英語の文献や、共同執筆の論文やメールなどは含まれていない)。 延べ形態素数は約20万でその異なり数(重複を除いたもの。助詞と助動詞と記号を除く。動詞や形容詞などの活用するものはその基形の異なるもの)は約9千であった。 意外に少ないなあと思う。 確かに、僕が公開を前提に書いている文章は、専門的な内容がほとんどだけ

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    sassano 2009/02/23
  • 長尾のブログ2.0: 権威を壊し、権威を創る

    ネットが破壊したいくつかの伝統的なものの中に学術的権威がある。 マスメディアは大衆の意識を操作するために学術的成果よりもその権威をよく利用した(誤用や意図的な誘導もたくさんやった。ちょっと古いが有名な例は「あるある大事典」)。 そして、マスメディアの腐敗の陰で、ネットが人々の目を覚ますために機能した。 しかし、当然の帰結として、マスメディアが重用してきた権威を疑うことになった(ノーベル賞のみが依然として権威を維持していると思われるのは脅威的である。なぜあの賞だけ世界が一様に評価しているように見えるのか説明できます?)。 確かに、マスメディアにおもねり芸能人もどきとなった知識人(大学教授とは限らない)はたくさんいるし、そういう人たちは深い学問を単純化してみせたり(わかりやすくすることと単純化することは同じではない)、特殊な事例を拡大解釈して一般化してみせたり、結論の出ていないことを言いきって

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    sassano 2008/11/26
  • 長尾のブログ2.0: 先駆者になるために

    4年ほど前に、僕たちが研究開発している個人用知的移動体ATを、アメリカのMITのある教授に見せたときにこう言われた。 「これはアナザー・セグウェイ(要するに、セグウェイの二番煎じという意味)か」 それに対して、僕は、ATとセグウェイの違い(立ち乗り用から座り乗り用への変形機能、無線による連携協調走行機能など)を説明した後で、「これはセグウェイではない。ATという新しい乗り物だ」と言った。 確かに、セグウェイに影響を受けたことは間違いない。 しかし、僕たちはセグウェイの先にあるものを作ろうとしているのであり、アナザー・セグウェイと呼ばれるようなものを作っているのではない。 しかし、トヨタが先日発表したウィングレットという乗り物は、アナザー・セグウェイとしか言いようがない。 「自分たちはセグウェイをより小さく作れます」ということを誇示したいためにこれを作ったのだろうか。 セグウェイと違って体重

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    sassano 2008/08/10
  • 長尾のブログ2.0: トレーサビリティの恐怖

    以前に、WikiScannerというツールが話題になった。 Wikipediaの編集履歴を、編集者の使用マシンのドメインや項目ごとに検索可能にするものである。 つまり、(非ログイン)ユーザーがどのドメイン(IPアドレス)のマシンでWikipediaのどの項目のどの部分をどのように編集したのかわかるということである。 それによって、そのユーザーの編集の裏にある何らかの意図を読み取ることができる。 これを見て思ったことは、これでWikipediaが荒らされにくくなるだろうということだった。 これと同様の仕組みが、2ちゃんねるなどの匿名掲示板にも適用できるかも知れない。 誰が書き込んでいるかはわからないとしても、どんな組織に所属している者が書いたのかわかれば、内容が事実かどうかの判断材料の一つになるだろう。 しかし、このような技術の先にあるものは、ネット上の個人の活動を不特定多数が容易にトレース

  • 長尾のブログ2.0: 人工知能の未来を考えるブレインストーミング

    僕は、今月の20日から宮崎シーガイアで行われる人工知能学会第21回全国大会のプログラム委員長をしています。 全国大会というのは、学会の会員向けサービスの一つで、会員なら誰でも(一応、内容が適切かどうかのチェックがありますが)研究発表の機会が与えられ、優れた研究は学会の名によって表彰されるという、学会にとって最も重要なイベントなのです。 今回の大会では、有名なプログラミング言語Rubyの開発者まつもとゆきひろさんの招待講演もあります。 といっても、例年特に盛り上がりもなく、ただ淡々と「集まって、発表して、発表が終わったら適当に観光して帰る」という普通の会議になってしまうことも多いのです。 それで、今年はちょっと目新しいことをやってみようと思いました(ちなみに、昨年は「研究者の人生ゲーム」というイベントが行われて、そこそこ盛り上がったそうです)。 全国大会は300人以上が集まる会議ですが、そこ

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    sassano 2007/06/04
  • 長尾のブログ2.0: 未来の話ができますか(前編)

    連休中にやろうと思っていたことの半分もできなくて残念です。 ワードローグのコーディングも途中で投げ出したままだし、の原稿も完成してないし。。。やれやれです。 つくづく未来の予測はむずかしいと思う。 PDF(Portable Document Format)やドローツールのIllustratorで有名なAdobe(アドビシステムズ社)が、SVGScalable Vector Graphics)のサポートを停止する(正確には、SVG表示ソフトのSVG Viewerに関して、2007年末にサポートを、2008年末に配布を終了する)、という発表をしたのを聞いて、「しまった、読みを間違えた」と思ったのである。 SVGは、PDFとほぼ同じ表現能力を持つ、Webブラウザ向けのベクターグラフィック言語のことである。 実は、SVGが発表され、Adobeがそのビューア(Webブラウザのプラグイン)を公開し

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    sassano 2007/05/07
  • 長尾のブログ2.0: 次の3年間に向けて

    2002年4月に大学で研究室を設立して、ちょうど5年がたった。 5年間の確かな成果と言えるのは、博士号取得者をようやく一人出すことができたことぐらいだろうか。 研究に関しては、結局、満足のいく成果を出すことができなかった。 もちろん、学生が学位を取るためには研究成果を出して論文を書かなければならないのであるが、僕にとっては、学生たちがどんなに論文を書いても、実装されたものがちゃんと研究室で引き継げる形で共有可能になっていないものは、研究室の成果として認めることができない。 僕のいる研究室では、主に次の4つの研究を行ってきた。 1.コンテンツへのアノテーションの枠組みに関する主に基礎的な研究 2.特にビデオを対象としたアノテーションとその応用の研究 3.特に対面式の会議を対象とした実世界コンテンツの制作と利用の研究 4.個人用の知的な乗り物とその応用、またそれを取り巻くインフラに関する研究

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    sassano 2007/03/28
  • 長尾のブログ2.0: 集合知 VS 集合愚

    最近、月刊アスキーという雑誌の取材を受けた。 実際は取材というより、僕がアスキーの社に行って、雑談とデモをしてきただけなのであるが。 月刊アスキーという雑誌は、ついこの間、かなり大規模な路線変更を行って、僕を含む多くの読者を驚かせている。 僕も最初、新装丁となったこの雑誌を見て、思わず目を疑ってしまった。 なんだか、日経トレンディとかDIMEみたいな、大衆に迎合しまくりなハイテク情報誌に成り下がってしまったという印象を受けた(ワイアード日語版とかbitとか、好きな雑誌がなくなってしまって、数少ない楽しみな雑誌の一つだったのに)。 あまりにひどい変わりようなので、大学での定期購読を中止してしまった。 でも、知り合いの清水さんに頼まれたこともあって取材を受けることにした。 この清水さんというのは、ドワンゴという会社の元社員で、現在は独立してユビキタスエンターテインメントという会社の社長であ

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    sassano 2007/03/04
  • 長尾のブログ2.0: Google、名大に来る

    今週の金曜日に名古屋大学で以下の講演会を行います。 僕は前座なので僕の話はあまり重要ではありませんが、その次のグーグルの高林さんの講演は聞く価値が大いにあると思います。 彼はすごくセンスのいい技術者で、テキスト検索のNamazuやソースコード検索のGonzuiなど、僕には絶対に思いつかない名前のシステムを続々と作り出し、その筋の人には一目置かれている人物です。 彼は、僕が以前に所属していたソニーコンピュータサイエンス研究所というところの研究員をしていたこともあります。 この研究所は少なくとも僕が入社した頃はとても活気があって、わくわくする場所でした。 研究所の一般公開では「ついさっきプロトタイプができました。実はまだデバッグ中です」なんていうシステムをデモしたりしていました。 僕なんか、直前に何日も徹夜してぎりぎりで人に見せられる状態にした、なんてことがよくありました。 研究員のみんなが「

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