「がんの治療を受けていることを、今日まで誰にも言わずに頑張ってきました。おかげさまで体は生きています。でも日に日に寂しさが募り、生きている実感が持てずにいます」 13年前、当院に相談部門を開設して間もない頃に出会った患者さんの言葉です。発病から数年間、がんであることを周囲に伝えるすべを知ることなく、知人や地域活動とのつながりを徐々に失いながら過ごしてきたということでした。 解決策を知らない、情報を得られないということが、時に生きる意味をも揺るがすものとなることを痛感させられました。それとともに同じつらさを抱える人がこれ以上増えてほしくない、という気持ちが強く心に刻まれた瞬間でした。
70歳までを「ほぼ現役世代」とし、この年齢まで働ける社会にすべきだ――。65歳以上の人の働き方などを議論する自民党のプロジェクトチーム(座長・片山さつき政調会長代理)が13日、こんな提言の骨子案をまとめた。超高齢化社会に備えるためで、今後、政策に反映するよう厚生労働省などに求めていく。 65歳以上とされている高齢者の定義を、日本老年学会などが「75歳以上」とすべきだとの提言をしたことなどを受けてまとめた。 骨子案では、65歳までを「完全現役」とし、定年を65歳に引き上げることを求めた。そして、定年から70歳までを「ほぼ現役世代」として、それまでの経験を生かして地域と一体となった仕事や社会活動に参加してもらうとした。 そのための環境整備として、公的年金について受給開始時期を遅らせると有利になるような具体策の検討などを求めている。詳細を詰めた上で5月上旬にも上部組織の「一億総活躍推進本部」(本
人混みの中で、白い杖をまっすぐに掲げて立ち止まる視覚障害者。「白杖(はくじょう)SOSシグナル」と呼ばれるこの独特のポーズがTwitterで話題になっています。東京新聞の記事を引用しつつ、「(このサインを)見かけたら声をかけてあげてください」「この記事をシェアするだけでだれかの『困った』を解消して助けるコトができます」と呼びかけるツイートは、現在までに5万7000回以上リツイートされています。 この「白杖SOSシグナル」はもともと福岡県盲人協会が考案したもので、視覚障害者が「今、助けてほしい」と思った時に、白杖を掲げることで周囲に助けを求めるというもの。実は40年ほど前から存在していましたが、残念ながら今のところ世間一般ではあまり知られていない、というのが実情でした。 白杖SOSシグナル(佐伯区視覚障害者の集い「白い三輪車の会」サイトより) 一方、この「白杖SOSシグナル」については以前か
Webライターの木下です。 今回から難病カフェの話題をご紹介いたします。第1回は、東京のNPO「希少難病ネットつながる」が主催するRD-Caféについてです。 難病法の施行から2年を経て 「難病患者に対する医療等に関する法律」、いわゆる難病法が施行されたのは、2015年1月1日。それから2年が過ぎました。難病対策は、同法の施行以前は、法律に基づかない予算事業でしたが、それが法律に基づく措置となり、「医療費助成制度の確立」「調査および研究の推進」「療養生活環境整備事業の実施等」が講じられることになりました。医療費助成の対象となる指定難病は、2015年に56疾病から306疾病まで増やされ、さらに2017年4月には24疾病が追加され、330疾病になります。 そのように難病対策に関する制度改革が進み、社会的な関心も高まる中で、昨年から全国で「難病カフェ」という患者の会合が開かれ、注目を集めています
東京都世田谷区は首都直下地震などの大規模災害に備えて、災害ボランティアの受け入れ体制を強化する。2017年度から、大勢のボランティアの役割分担や差配に当たる調整役の人材の養成講座を始める。区民を中心に、17年度に600人の受講を目指す。18年度以降も、同規模の人材育成を継続する。同区は区内にある日本体育大学や国士舘大学など5大学と連携し、災害時に大学の校舎を活用した「ボランティアマッチングセン
「そらぷちキッズキャンプ」で乗馬体験を楽しむ子どもたち=北海道滝川市で2016年7月30日午前9時44分、谷本仁美撮影 重い病気や障害を抱える子どもとその家族を地域で支えるニーズが高まっている。こうした活動をする団体は、これまで人手や資金の問題から横の連携が難しかったが、神戸市で今月開かれた交流会では、北海道から沖縄まで30団体が参加して情報交換した。活動の継続と普及が今後の課題だ。【高野聡】 12日に神戸大病院内で開かれた交流会は「スペシャルキッズサポーターズの集い」と名付けられた。「スペシャルキッズ」は欧米で、重い病気や障害など広い意味で課題を抱える子どもを指す言葉として使われる。 呼び掛けたのは、大阪市の岡崎伸医師(小児神経内科)ら。岡崎さんらは2009年から、英国発祥の「子どものホスピス」を参考に、大阪府内でボランティアの戸別訪問による支援を続けてきた。民間からの寄付を元に小児がん
平塚市のご当地体操。港地区福祉村は「ふれあい交流」の一つとして親睦を深めている 地域の問題を住民が「我が事」と捉えるための仕掛けはさまざまだが、全国的に注目されているのは神奈川県平塚市だ。1998年度から小学校区(市内25地区)を単位とした「町内福祉村」の整備を進めている。 福祉村は公民館などの1室を事務所とし、週に4日以上は地域福祉コーディネーターが常駐する。福祉村の活動はサロンの開催など「ふれあい交流」と、ゴミ出しなど「生活支援」の二つ。利用者に費用負担はない。 コーディネーター、交流、生活支援のいずれも担い手はボランティア。福祉村の会長、会計、書記といった役員も同様だ。市は交通費などの活動経費と拠点の家賃・光熱水費を負担する。 「交流があるからお互いに顔見知りになり、『実はこんなことに困っている』などと言えます。また、ボランティアを確保する上でも交流が不可欠です」。 市内に17カ所あ
厚生労働省の調べによると、日本人女性の平均寿命は87・05歳、男性は80・79歳(2015年)。医学の進歩により、平均寿命は一昔前に比べると驚異的に伸びており、その数字は世界的に見てもトップクラスと言える。 一方、日本の各教会でも、戦後間もなく信仰を持ったクリスチャンが後期高齢者となる時代を迎え、高齢化が急速に進んでいる。信仰の継承、地域への伝道が急務とされる中、このような社会だからこそ、教会の役割が問われる時代になっているのではないだろうか。 先月、インターナショナルVIPクラブ船橋で、「最期まで自分らしく生きる」をテーマに集会が持たれた。講師を務めたのは、「NPOまな市民後見セーフティネット」の毛利陽子さんと大畠朋子さん。毛利さんは保健師として人々の健康、病気、老い、そして最期と向き合い、特に介護施設へのコンサルティングをする中で「終活」のお手伝いをするようになったという。 2人が「終
厚生労働省は7日、地域住民と社会資源がつながりを持つ「地域共生社会」の実現に向けた5年間の工程表を発表した。介護保険など公的サービスの担い手不足を背景に、住民や専門職を有効活用することが狙い。小さな圏域ごとに生活課題を発見し、解決する体制づくりを市町村に求める。その体制づくりを促すため、社会福祉法、生活困窮者自立支援法などを順次改正する。公的な福祉サービスだけに依存しない社会を2020年代初頭には実現したい考えだ。 工程表は省内幹部で構成する「我が事・丸ごと地域共生社会実現本部」(本部長=塩崎恭久・厚労大臣)が同日決めた。塩崎大臣は昨年7月の同本部発足時から、「地域共生社会は今後のさまざまな福祉改革のコンセプトだ」と強調している。 同日、国会に提出した介護保険法等改正法案には、地域共生社会関連として社会福祉法、障害者総合支援法、児童福祉法の改正事項を盛り込んだ。17年度から21年度までの5
タイの高齢化はASEAN諸国の中では群を抜いて進んでいる。タイ政府は高齢者ケアの担い手は「家族とコミュニティー」が根幹である方針を打ち出し、文化・社会の伝統に依存する姿勢だ。一方、人びとの日常では「高齢者ケア」はどのように理解され、実践されているのだろうか。現地でのフィールドワークから見えたことを2回にわたって報告する。 介護施設にマイナスイメージが持たれる理由タイで「高齢者ケア」について質問すると、答えに困られてしまう。日本では「老人ホーム」や「介護保険」といった設備や制度を思い浮かべるが、タイではどちらも一般的ではない。電車内に「優先席」はない。設備や制度が高齢者を支えるのではなく、家族やコミュニティーがその担い手だ。タイ人の多くは「高齢の両親を介護施設に入れたら、親不孝で冷酷だと周囲から非難されてしまう」という。 近年のバンコクでは、外資を含む民間企業や個人がごく一部の富裕層をターゲ
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