貧困の現場に長年携わり、その改革に力を尽くしてきた稲葉剛氏。その経験をまとめ、社会を変えることを呼びかける本『貧困の現場から社会を変える』を上梓されました。なぜ、いま貧困問題なのか。刊行の背景や現在の貧困問題に関してお伺いしました。(インタビュアー / NPO法人POSSE渡辺寛人) 渡辺 日本の貧困問題について考えたい、取り組みたいと思ったときに、入門的に学べる文献は、実は意外にもあまり多くありません。そこで、稲葉さんにそうした本を書いてもらいたいということで、堀之内出版とブラック企業対策プロジェクトから企画のご相談をさせていただいたのが、本書を出版することになったそもそものきっかけです。 そして、書くだけではもったいないから講座にしようということで、2014年7月から「稲葉剛のソーシャルワーク入門講座」として全6回の公開イベントを開催、その内容を収録することになり、2016年9月に本書
経済的に厳しい家庭の子どもたちを対象にした学習支援の動きが広がっている。親の収入が低いと塾や習い事の出費が少なくなる傾向があるといい、各地の支援団体が「教育格差」の解消を目指して工夫を凝らしている。 兵庫県西宮市の市大学交流センターの一室で9月24日夜、約20人の中学生らが教科書や問題集を広げていた。NPO法人「阪神つばめ学習会」が週2回開講している無料塾。清少納言の「枕草子」の暗唱や授業の宿題、英単語カード作りと、一人ひとりで勉強内容は違う。 「この英文にhave to(~しなければならない)を加えてみて」「2x+8xは何になる?」。大学生や元塾講師、翻訳家らのボランティアが集中を切らさないように生徒に声をかけていく。難しい問題があれば解き方のコツを教え、学習時間の2時間はあっという間に過ぎた。 阪神つばめ学習会は同会理事長で会社経営の庄司知泰(ともひろ)さん(37)が「親の収入格差が子
子どもの貧困対策法(「子どもの貧困対策の推進に関する法律」)の成立から3年が経ち、子どもの貧困問題がテレビ、新聞やネットで話題になることも増え、こども食堂といった草の根の活動も広がっているようにも見えます。その一方で、子どもの貧困問題について実感がない、という声も聞かれます。 子どもの貧困対策センター「公益財団法人あすのば」事務局長を務める村尾政樹さんは、そのような危機感からずっと地方自治体の対応を注視していました。そして、共同研究プロジェクト(首都大学東京子ども・若者貧困研究センターと日本大学、公益財団法人あすのばによる、子どもの貧困対策「見える化」プロジェクト)のメンバーとして参画し、全国的な調査を実施、2016年8月には、「都道府県の子どもの貧困対策事業調査2016」として結果が公表されました。
政府がすべての国民に最低限の生活を送るのに必要なお金を無条件で定期支給する「ベーシックインカム(BI)」。オランダやフィンランドで、将来的な導入もにらんだ社会実験が2017年から相次いで始まる見通しだ。次世代の社会福祉の"切り札"か。それとも財源の"バラマキ"か。賛否が割れ、論争を呼んできたBIの効果検証に欧州が動き出す。4つの都市が17年初めからの社会実験を目指すオランダ。主導役のユトレヒト
文部科学省は経済的に苦しい世帯の新入生に支給している学用品費の一人当たりの支給額(単価)を、ほぼ倍額に引き上げる方向で財務省と協議を始めた。生活保護世帯が直接の対象だが、国が定める単価は、自治体が独自の財源で「準要保護世帯」に支給する就学援助の事実上の目安になっており、文科省は自治体が同調することを狙っている。 「新入学児童生徒学用品費」は文房具や辞書、制服やランドセル、通学用自転車など、入学前に学校生活に必要なものを買う費用として支給され、現在の国の単価は小学生が2万470円、中学生は2万3550円。それぞれ倍額をめどに引き上げる方針だ。 保護者の間では、制服など入学前の実際の負担額に対し、支給額が少ないという声が上がっていた。このため、自民、公明両党も今春、この単価の引き上げを提言。文科省は2017年度の予算概算要求に、国が費用の2分の1を補助する生活保護世帯への増額分を盛り込んだ。
経済的に困っている人を自治体などが支援する生活困窮者自立支援制度で、全国の自治体が受け付けた昨年度の相談件数は当初の目安のおよそ7割にとどまっていたことがわかり、厚生労働省は相談や支援につなげる態勢作りを検討しています。 厚生労働省で開かれた制度の検討会では、昨年度の1年間に全国の自治体が受け付けた相談は22万6000件余りで、人口10万人当たりに換算すると14.7件と当初の目安のおよそ7割にとどまっていたことが報告されました。 また、個別に支援計画を作成したケースは全国平均で年間3.6件だったほか、就労支援につながったケースも年間1.8件と、いずれも目安を大幅に下回っていました。 検討会では、「自治体ごとに相談支援の態勢にばらつきがある」とか、「職員不足で相談につながっていないのではないか」といった指摘が出されました。厚生労働省は相談や支援につなげる態勢作りを検討しています。
大阪市は4日、天王寺公園(大阪市天王寺区)で終日開放していた通路の夜間閉鎖を始めた。昨秋、園内の一角をリニューアルして公園の人気が高まり、さらに利用しやすくする改修を始めた影響という。一方、通路で夜を過ごすホームレスの退去につながると、支援者から批判の声も出ている。 天王寺公園内には、天王寺動物園や市立美術館などがある。2015年10月にリニューアルされ、カフェやレストランがある「てんしば」には1年間で約420万人が来園。1年前の約4倍に増えた。 人気の高まりを受け、市は来園者が園内を歩きやすくしようと、今月から美術館エリアとてんしばを分断する通路わきの長さ約370メートルの柵(高さ約2・5メートル)などの撤去を始めた。 しかし夜の園内は暗く、市は、柵を撤去した後も夜間に通路に出入りできるようにしておくと防犯上の問題があると判断。通路の3カ所の出入り口にセンサー付きの門扉を設置し、4日から
『下流老人』などのベストセラーで知られる藤田孝典さん(NPO法人ほっとプラス代表理事)をゲストに、貧困問題について考える講演会(主催・NPO法人ヒューマンライツ・ナウ)が9月29日、東京・文京区で開かれた。藤田さんは『下流老人』出版後、ほかの支援団体の関係者から言われたある言葉を引き合いに、「分断」されずに社会問題に取り組むためには何が必要かを語った。 「下流老人」は高齢者の貧困問題を捉えた藤田さんの造語で、具体的には「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびそのおそれがある高齢者」を指す。下流老人は700万人ほどいるとみられ、今後も増えると予想されている。 貧困にあえいでいるのは高齢者だけではない。藤田さんは2016年3月、今度は若者の貧困を描いた『貧困世代』を出版。NPOでの支援事例をあげながら、ブラックバイトや奨学金の返済などの問題を改めて提起した。 藤田さんは「貧困の問題は全世代に広が
保護を受けていない貧困層とのバランスを考え、生活保護の受給者に配るお金を減らす――。そんな施策がここ数年続いていますが、貧困層全体の暮らしを押し下げる心配があります。 「保護基準の引き下げは、生存権を保障する憲法に反します」。7月、さいたま市内で生活保護受給者らが通行人に呼びかけた。2013年度から、食費などにあてる「生活扶助」の基準額が引き下げられた。物価下落などが理由で、13~15年度に3段階で計6・5%という大幅減だ。 心の病を患い4年前から保護を受ける30代女性は、7万6千円の扶助が約5千円減った。病気で過食と嘔吐(おうと)をくり返し、食費に3万円かかる月もある。築30年超の木造アパートに一人暮らしだが、真夏も「クーラーは2時間に20分」と決め、風呂は使わず1日おきのシャワーでしのぐ。「お金が尽きることを本気で心配します」。全国27地裁で基準引き下げの取り消しを求める集団訴訟が起こ
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