道徳という名の少年 作者: 桜庭一樹出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2010/05/11メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 28回この商品を含むブログ (41件) を見る 桜庭一樹の短編集だ。いままだ読んでいる最中だから、評価も、裁断も、下しようがないのだが、しかしこれはやはり、何とも桜庭一樹らしい本である。新進作家として注目を集めはじめてから数年、桜庭一樹は日々、年々、桜庭一樹らしくなっていくかのようだ。 では、その桜庭一樹らしさとは何か、といえば、これはむずかしい。それはたとえるなら薔薇の刺を差した指から流れる落ちる血の紅、あるいはその濃密な芳香、そのようなものである。 桜庭の世界は何とも甘く、妖しく、うつくしく、それでいて、そう、あまりに生々しい。この、何とも形容しがたい生々しさ、生と性、即ち肉の感触こそが桜庭の作品群を特別なものにしている